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思い込みの「ドグマ」から脱却せよ

Stanton MG, Hubbs J, Sloman D, et al. Fluorinated piperidine acetic acids as gamma-secretase modulators. Bioorganic & medicinal chemistry letters. 2010;20(2):755-8.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20005099.


ここで注目すべきは中枢薬であるにも関わらずカルボン酸を有している点、そしてもう一つは昨日も紹介したシリル基を置換基として導入している点である。一般に受け入れられている事として、カルボン酸系化合物は脳内には移行しにくいと考えられており、それでも脳内に入る化合物はアミノ酸ミミックでトランスポーターにのる、もしくは分子内水素結合の可能性を想定するが、この報告はそのような考えが根拠のない「ドグマ」である事を証明する。そもそもカルボン酸だからどうのこうのではなく、適度の脂溶性と膜透過性を有し、Pgp基質にならなければ中枢にいくのは不思議ではないのである。また、シリルを有するTMS基に関しても、「なんだか気持ち悪い」という前に、それならば何が問題なのか、実地検証的に示してナレッジを蓄積すべきであろう。ここでは特にメリットはないが、シリル基由来の問題もないようである。

本題のγセクレターゼ阻害薬であるが、これはノッチ切断による腸管での毒性が懸念される。このようなリスク回避の手段の一つとしてノッチを切断しないNSAIDs系化合物のAβ42選択的阻害薬が知られている。本化合物もカルボン酸を有する点でNSAIDs系だが、この構造を見いだす経緯は示されておらず、SARとPKの最適化を報告している。ピペリジン環に電子吸引性のカルボン酸やジフルオロ基を導入する事でアミンの塩基性が制御され、これらが活性や動態に影響を及ぼす。合成面で鍵になっているのは、アミンとアルデヒド、アセチレンの3成分を臭化金存在下でマンニッヒ反応させる事で、分岐アルカン部分を構築する点である。もう一つは、ピペリジンβ位のジフルオロ化で、ピペリジンをセレクトフルオロで処理する事でジフルオロヘミアミナール(12)を得、続いて3級アルコールをボラン還元で飛ばす事で得られる。このメカニズムはFig. 2で説明されている。セレクトフルオロでピペリジンを処理するとフルオロアンモニウム塩(13)となり、脱HF化して異性化しエナミン(14)となり、ここへ2等量のセレクトフルオロが反応してジフルオロ化が進行する。このイミニウムカチオン(15)を水で処理するとヘミアミナール(12)が得られる。こういう反応をどういういきさつで見いだしたのか興味がもたれるが、このジフルオロ化は他の局面でも使えるかもしれない。二つのケモタイプからそれぞれ600 nM及び230 nMの活性を持つ化合物を見いだしている。先に述べた注目すべき置換基変換は、tBu基と並列でトリメチルシリル基を導入している点である。以前のTRPVの報告といい、tBu基に対するこの変換には代謝安定性などでメリットがある場合があるのだろうか?本報では特に大きなメリットはないようである。選択した化合物の経口吸収性は良好で、脳内濃度は0.58μMで血中に比べて半分程度はある。前述の通り、中枢移行性は獲得できないと言われていたカルボン酸のこの結果は注目に値する。この程度の活性でもマウス10 mg / kgで7時間後にAβ42を84%低下させている。ラットでのED50は5 mg / kg。Aβ42セレクティブでAβ40は低下させず、ノッチは10μM以下であった。安全性を確かめる為にラット250 mg / kgで(血中濃度は2100μM)7日間連投したが、ノッチ由来の毒性は確認されなかった、としている。

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