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次世代睡眠薬オレキシン拮抗薬

Cox CD, Breslin MJ, Whitman DB, et al. Discovery of the Dual Orexin Receptor Antagonist [(7 R )-4-(5-Chloro-1,3-benzoxazol-2-yl)-7-methyl-1,4-diazepan-1-yl][5-methyl-2-(2 H -1,2,3-triazol-2-yl)phenyl]methanone (MK-4305) for the Treatment of Insomnia. Journal of Medicinal Chemistry. 2010:100621114835021. Available at: http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/jm100541c.

以前にも紹介したメルクのオレキシン拮抗薬続報で、開発化合物MK-4305に至る経緯。


http://medicinalchemistry.blog120.fc2.com/blog-entry-62.html



既存のGABA(A)受容体系睡眠薬は昼間の睡眠作用、痙攣、記憶障害、薬物依存症といった副作用がつきまとう。次世代睡眠薬には安全性に優れ強力な作用の期待できる新規作用機序が求められる。その最もプロミッシングなターゲットの一つがオレキシン拮抗薬である。メルクではノックアウトのデータから最も強力な作用の期待できるデュアル拮抗薬を研究展開してきた。既報のジアゼパム系化合物4は代謝安定性が低く経口吸収性に課題がある(Fig. 2, Table 1)。in vitro代謝物予測からトリル基のベンジル酸化、セミカルバジドトラップ実験からジアゼパムの窒素隣接炭素の酸化、続く開環が代謝経路と推定された(Scheme 1)。よって、代謝安定性を改善する合理的アプローチは、ベンジルの変換もしくはホモピペラジンの変換となる。ホモピペラジン上の置換基導入の結果、3位と5位は許容されず2位6位7位の置換基導入は活性向上に寄与する(FIg. 3)。7メチルージアゼパンは合成例がほとんどなく、Scheme 2に示す1,2-アミノアジドをメチルビニルケトンに付加させ、Aza-Wittigで環化させるルートが知られているが、アルキルアジドを経由する為にスケールアップ合成には向いていない。そこで改良法としてエチレンジアミンBoc保護体をアジドの代替基に利用するルートを設定した(Scheme 3)。7位のメチル基は活性を向上させ、イヌでのクリアランスを低下させたが経口吸収性には反映しない(化合物8)(Table 2)。トリルのメチル基を外すとOX1Rの活性が減弱(9)、キナゾリンにフッ素を導入した10で活性を回復し、クリアランスは低く、経口吸収性は向上した。見いだされた化合物10はビボでも経口投与で作用を確認できる点で魅力的であったが、バイオアクティベーションのリスクが懸念された為にそれ以上の検討を進める事が出来なかった。グルタチオントラップ実験からフルオロキナゾリンが主たる原因と考え、ジフルオロキノキサリンに変換したがリスクは低減できず。6ー6縮環の脱却を指向し、環の一つを飽和環にした12で大幅改善、さらに6?5縮環のベンゾオキサゾールでは活性が減弱、ベンゾチアゾールのような脂溶性基が活性向上に寄与しており、ベンゾオキサゾールにクロロ基を導入すると活性は向上、経口吸収性に優れ、バイオアクティベーションリスクを大幅に低減、脂溶性が向上しタンパク結合率は高い、ビボの作用、トランスジェニックラットでex vivo結合を確認、オフターゲット選択性高く、安全性に優れている事よりMK-4305として選択した。現在、フェーズ3で長期安全性試験を実施中である。

睡眠薬といえば既存薬で十分と思いがちであるが、一過性の不眠ならともかく、ホントの不眠症の人は毎日眠れず、そして毎日安心して飲める睡眠薬は現時点ではない。また、既存薬には副作用もあり、睡眠薬といえど未だに副作用の懸念が低く毎日安心して飲める薬剤はないのが現状である。このような背景から睡眠市場のSWOT解析をしっかりした上で、セロトニンやヒスタミン、メラトニンといった睡眠薬のターゲットがある中で、オレキシン拮抗薬に選択と集中したメルク、リードジェネレーションでは問題点を一つずつ洗い出しながら、基礎研究的な活性コンフォメーションを明らかにし、そして最後は臨床後期で顕在化し、命取りになるとさえ言われる免疫系由来の毒性、構造起因のバイオアクティベーションのリスクを解決して開発化合物を見いだした研究方針は、まさにメルクの「勝てる戦略」を具現化したテーマの一つといえる。

テーマ : 科学・医療・心理
ジャンル : 学問・文化・芸術

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Author:Janus
趣味で読んだ創薬化学論文を綴った日記。

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