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有言実行:平面世界脱出

Mehlmann JF, Crawley ML, Lundquist JT, et al. Pyrrole[2,3-d]azepino compounds as agonists of the farnesoid X receptor (FXR). Bioorganic & medicinal chemistry letters. 2009;19(18):5289-92.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19683924.


過去に下記サイトに紹介したように、ワイスの研究者は分子の平面性が高いほど溶解度が悪くなる事を示した。

http://medicinalchemistry.blog120.fc2.com/blog-entry-5.html


その仮説の通り、ここでは溶解度を改善する為に、分子の平面性を崩すアプローチをとっている。ここでの溶解度改善とデザインのポイントは1)芳香環を減らし、2)脂溶性を低下させ、3)(分子内水素結合切断と2重結合還元で)平面制を崩し、4)SBDDによって合理的なデザインをしている点にある。

リード化合物である5nMの活性を持つWAY-362450は、X線結晶構造解析から平面性が高く、cLogP = 5.30と脂溶性が高い為に、結晶性が高くその融点は174-175℃で溶解度は低かった。まず、この課題を解決する為に、脂溶性を低下させ、平面性を崩すアプローチをとった。脂溶性を低下させる為に、母核のアゼピノインドールの縮合ベンゼン環を除去して芳香環を1枚減らし、さらに極性の電子吸引基であるシアノ基におきかえたシアノピロールに変換した。実際に化合物10aはclogPが1.5程度低下しており、活性も改善した。しかし、溶解度は平面性の高さの為かまだ低い。この化合物を受容体の結晶構造とのドッキングで考察した結果、ジアゼピンは捩れイス型構造をとって、側鎖のベンゾイルのカルボニル基はチロシン373との水素結合が示唆され、エステルのカルボニルはピロールと水素結合を形成していると推定された。二重結合を還元すれば分子の平面性は崩されて溶解度の改善が見込まれる。さらに分子内水素結合は切断され、それによって側鎖のイソプロピル基がイソロイシン339方向にある小さな疎水ポケットにフィットさせる事ができ、さらなる活性の向上が期待される。ところが、実際に合成した化合物は、平面性を崩した効果によって溶解度こそ劇的に改善するものの、活性は減弱した。改めてドッキングで検証した結果、2重結合が還元された為に受容体との結合には回転障壁に大きなエネルギー的ペナルティを払ってしまう事が予測され、これが活性減弱の要因になったと考えられた。気になるのは、最初にこの計算結果が出ていなかったのか、という事。実際のところは、溶解度の改善のベネフィットは確かめる価値があるとして、最初の作業仮説による活性向上は少ない可能性かもしれないがこういうチャンスもあるだろうと考えたのかもしれない。結果的に、活性と物性の両立を果たす事はできなかったが、この4段階のアプローチは合理的で評価できる。

合成面では、ピロールアゼピンを巻いていくところがポイントになっている。ピロールエステルのヴィルスマイヤーで3位をアルデヒドにし、還元アミノ化でジメチルアミンとし、さらにメチル化して4級化、これが脱離基となるのでシアノで置換し、アルキル化、シアノをラネー還元、これをピクテットシュペングラーによって閉環して構築できる。

テーマ : 科学・医療・心理
ジャンル : 学問・文化・芸術

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Author:Janus
趣味で読んだ創薬化学論文を綴った日記。

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