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分子形状は異端児を救う

Chen H, Yang Y, Engkvist O. Molecular Topology Analysis of the Differences between Drugs, Clinical Candidate Compounds, and Bioactive Molecules. Journal of chemical information and modeling. 2010.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21077637.

アストラゼネカ社は、最近、分子の脂溶性とドラッグライクネスについて非常によくまとまったレビューを報告し、clogP:3がカットオフとして優れている事を示した。一方で、この報告は、分子のトポロジーがドラッグライクネスに強く相関している事を示した最初の例である。これによると、リングとリンカーは少ないほどドラッグライクネスは高く、リンカーを含むトポロジーではリジッドで重原子が少なくコンパクトである事が理解できる。一方で、重原子が増えるとリングもリンカーも増えフレームワークが大きくなりがちである。

分子のトポロジーは誰もがドラッグライクネスと結びつけたいと考えるコンセプトだが、通常の物性パラメーターでは定義が困難でなかなか手が出ない。そのような状況にあって、適切で理解しやすい定義付けを行い、数々の切り口で解析してプロファイリングし、その傾向と特徴を掴んでしまう、切れ味鋭い見事な構造物性相関のアプローチである。トポロジーの特徴は脂溶性をパラメーターに内在しない。よって、ドラッグライクネスの指標としてコンセンサスが得られつつあるclogP<3というカットオフによって切り捨てられかねない、ポテンシャルの高い「アウトライヤー」をレスキューできる可能性ある点で非常に有益である。

ドラッグライクネスの歴史的背景は、まずリピンスキールールが提唱、その後、分子量、脂溶性(clogP)、PSA、sp3炭素や芳香環枚数といったパラメーターを用いた指標が提案されてきた。一方で、これまで分子トポロジーでドラッグライクネスを議論した報告例はない。ここでは、医薬品、開発化合物、生物活性化合物に分類し、これらとトポロジーとの相関を解析する。トポロジーである分子フレームワークは、べミスとマルコによって1990年代に提唱されておりこれに基づき化合物を分類するが、さらにここでは前報での定義に従い

分子のトポロジーはを大きく4つ、
1)1TR(リング一つ)
2)2TR(リング二つが直結)
3)2TR+B(二つのリングがリンカーで連結)
4)3TR+B(3つのリングがリンカーで連結)

に分類して解析した(トポロジーレイヤーの定義はFig. 1, 事例はFig. 2)。
また、2TR+Bに関しては、リンカーに存在する環の個数に応じて、
2TR+B_0, 2TR+B_1, 2TR+B_2
と定義した。

Fig. 3より、医薬品、開発化合物、生物活性化合物はいづれもほぼ完全に分子フレームワークの範疇に入るが(赤バー)、リンカーの有無は各カテゴリーによって異なる(青バー)。すなわち、リンカーを有する化合物は、医薬品では50.2%であるのに対して、開発化合物で71.3%、生物活性化合物で86.7%である。これをさらにトポロジーで分類して解析してみると(Fig. 4)、1TRおよび2TR+B_0では医薬品>開発化合物>生物活性化合物、の比率になり、一方で2TR+B_1, 2もしくは3TR+Bよりリング個数が多いリンカーを有するタイプでは、医薬品<開発化合物<生物活性化合物と存在比が逆転する。Fig. 3はこの結果を反映している。このようにリングの個数が少ないトポロジーほどドラッグライクネスが高いと見なせる。

次に、医薬品、開発化合物、生物活性化合物のカテゴリーを化合物の重原子数16?36の範囲で、それぞれの重原子数に関して解析した(Fig. 5)。その結果、重原子数が大きくなるにつれて、どのカテゴリーでもリングの個数は増える傾向が読み取れる。また、どの重原子数でもリングの個数は、医薬品で少なく、生物活性化合物で多い。重原子16?36の化合物全体をトポロジー毎に比率で示したのはFig. 6(a)であり、Fig. 4同様の傾向が読み取れる。また各カテゴリーの各重原子数に対して、どの程度のターゲットクラスのリガンドがあるかを解析すると、Fig. 7のように大きな差があった。医薬品は一部のターゲットクラスにのみ結合していてバイアスがかかっている可能性があるので、式(1)(2)によって補正したが、その結果Fig. 6(b)から多少カテゴリー毎の差が縮まったが、概ね傾向は一致した。この傾向はclogPについても同様の結果が得られている(Fig. 8, Fig. 6c, d)。また、単一ターゲットに限定しても確認された(Fig. 9(a), SSRI, (b)β1アドレナリン受容体拮抗薬)。

トポロジー毎に重原子に応じて各カテゴリーの割合をプロットしたのがFig. 10。いづれのトポロジーでも医薬品の重原子数は他の二つに比べて少ない事が理解できる。一方で、リングの数が増えるほどその乖離は大きく、3TR+Bでは医薬品は11重原子も小さい(Fig. 10d)。このように、トポロジーのフレイムワークが大きくなる(リングとリンカーが多い)ほど、医薬品はサイズが小さくなるのである。一方で、clogPでプロットした場合も同様の傾向が見てとれるが、医薬品と他の二つとの乖離は重原子の場合ほど大きくはない(Fig. 11)。

リンカーのあるトポロジーに限定すると、医薬品は重原子と回転結合数が小さいものが突出している(Fig. 12)。

生物活性化合物や臨床開発化合物が2TR+Bのようなトポロジーが多いのは、アミドカップリングのような多くの反応がこのトポロジーを形成させてしまうからと考えられる。トポロジーがADMEや物性パラメーターにどのように影響しているかは今後の課題である。

ドラッグデザイン、ライブラリーデザインではclogPが意識されがちであるが、トポロジーが切り口として有益である事がわかる。何よりも、脂溶性で切り捨てられがちなアウトライヤーを拾い上げるところにその魅力がある。

テーマ : 科学・医療・心理
ジャンル : 学問・文化・芸術

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趣味で読んだ創薬化学論文を綴った日記。

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