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BACEからSBDDのScope&Limitation

Nowak P, Cole DC, Aulabaugh A, et al. Discovery and initial optimization of 5,5ʼ-disubstituted aminohydantoins as potent beta-secretase (BACE1) inhibitors. Bioorganic & medicinal chemistry letters. 2010;20(2):632-5.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19959359

Zhou P, Li Y, Fan Y, et al. Pyridinyl aminohydantoins as small molecule BACE1 inhibitors. Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters. 2010.
Available at: http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0960894X10001587

Malamas MS, Erdei J, Gunawan I, et al. Design and Synthesis of 5,5ʼ-Disubstituted Aminohydantoins as Potent and Selective Human beta-Secretase (BACE1) Inhibitors. Journal of medicinal chemistry. 2010;53(3):1146-58.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19968289


一連の報告は、Wyethの2座配位型アミノヒダントイン系BACE阻害薬で、BACE阻害薬におけるSBDDの代表作のような報告である。

第1報:ヒットで見いだされたアミジンアナログ1のテトラヒドロピリミジン環は溶媒方向を向いているので除去可能と考えて低分子化、ジフェニルヒダントイン系化合物2をデザインした。ジフェニル部分は非対称置換基もデザイン。その為に、合成法としては、対称系化合物はアミジンをジケトンと縮合させる方法、非対称体は、オキソ酢酸クロリドにグリニヤールから調整した銅試薬を作用させて得たジケトン、もしくはソノガシラ反応後に酸化して得たジケトンを利用して合成した。活性測定時には、細胞タンパク異化で重要な役割を果たすカテプシンDをカウンターにおいた。カテプシンDはアスパラギン酸プロテアーゼでもBACEとはホモロジーが低いので、アスパラギン酸プロテアーゼに対する選択性の指標になる。驚くべき事にテトラヒドロピリミジンの除去は活性が1桁向上し、分子量の低下、脂溶性の低下を達成、結果として、LE、LELP、LipEを改善した。さらに、物性パラメーターである溶解度、膜透過性は改善、脳内濃度も向上した。活性と脳内移行性に対するベンゼン環、シクロヘキサンの置換効果は興味深い(Table 1)。結晶情報を活かして、S3方向へとアミドを介して置換基を伸張、化合物20bは40 nMの良好な活性、しかし細胞系では180 nMとそれほど改善されない。膜透過性の低下がその要因と考えられた。しかしながら、LE, LELP, LipEのドラッガブルパラメーターは維持。最後にS1'方向にあるアルギニンを目指して極性官能基を伸ばしていったが相互作用獲得ならず。カテプシンDに対する選択性獲得は十分だが、もう一つの問題点として作用不明のBACE2に対する選択性が得られておらず、課題を残した。なお、ワイスは、mTORの報告でも示していたが、LELP, LipEといったドラッガブルパラメーターを躊躇なく取り入れているのも留意できる。


第2報:この報告までに、2環性のヒット1からS1ポケットを指向して単純化した2で活性向上、S2’ポケット方向のトリプトファンと相互作用するピリジンを導入した3で活性向上した事を報告してきた。ここではS3ポケット方向を指向した化合物4の最適化を報告。合成は前報同様にソノガシラ反応でトランとした後に酸化してジケトン、これをメチルアミジンで閉環してアミノヒダントインとする。S3ポケットのSARは非常に切れ味良く活性は80倍まで改善。相変わらずカテプシンDに対する選択性は良いが、BACE2に対する選択性は概ね悪い。ただ、例外として化合物4mのみ選択性は33倍と良好で、結晶もとれている。


第3報:これまでの報告で、アミジンアナログ構造2のヒットを結晶情報を活かしてイミダゾロン3に低分子化すると活性が向上する事を報告してきた。活性向上の理由は、pKa値が5.7から7.6と高くなって活性中心との水素結合能が向上した為と説明している。イミダゾロンのメチル基はエチル基にすると活性は激減(酵素側の障壁のため)、一方でメチル基がないとやはり活性が激減(ケト・エノール互異性によるエノールの寄与が大きくなり水素結合能が低下した為と推定。一方でメチル化されていると相互作用するに相応しいケト構造を保持)。S2'方向のフェニル基に電子吸引性・供与性置換基を入れても活性に大きな変化はない(Table 1)。一方でS1ポケットが球状であるのに着目してフェニルをアダマンチルにすると、20倍活性が向上(Table 2)。改めてS2'ポケット側を最適化、トリフルオロメトキシ基のような電子吸引性基では活性は減弱、一方でメチル、メトキシ基を入れると思いがけず選択性が改善した(活性はやや減弱)。選択性改善の理由を結晶情報に求めると、置換様式の違いはフラップ領域のTyr71がオープンかクローズかの違いで、これが選択性に寄与する理由は、先報のPro70とLys70の違いで説明がつく(明日紹介)。メトキシ基はTrp76と水素結合により活性に寄与。次にS3方向のSAR探索(Fig.4)。アダマンタンからの伸張は合成的に難解な為に、S1ポケット部分はフェニル基で最適化。S3ポケットはヒンジ領域のGly11、Gly230、Ser229の極性領域があるのでピリジンを導入すると活性向上、Fig.5のように多点水素結合でがっちりBACEをロックしている。ピリジンは水分子を介した水素結合形成。ピリジンはピリミジンに変換可能で、S3ポケットはBACE-2とで残基が異なる部分がある為か、BACE-2に対する選択性は改善した。S1ポケットのフェニル基で相互作用に邪魔にならないところからフッ素やメチルを入れると活性は向上。Fig.6の(R)-61の結晶情報からIle110とフッ素が相互作用している。一方でS2'部分はトリフルオロメトキシ基が多点相互作用、FLAPクローズであった。最終的に見いだされた(S)-55,すなわちWAY-258131はアスパラギン酸プロテアーゼ選択性は80倍以上、Tg2576マウス100 mg / kgで血中のAβ40を69%低下させたが、脳内移行性は低い為に脳内での作用はほとんど見られなかった。

FBDD, SBDDは、フラグメントのような分子量が小さく活性の弱いリガンドからでも、活性、選択性を合理的に向上させる道筋を示しうる。しかしながら、ADMEToxまでは担保してくれない。LE, LLEはドラッグライクネスの指標になるが、保証するものではない。ここでは、BACE阻害薬の最重要課題である脳内移行性は結果的に獲得できなかった。また、2座配位型ウォーヘッドは、むき出しのアリールアミン構造であり、包合や安全性のリスクが懸念される部分構造でもある。実際には、2座配位型ウォーヘッドは、論文報告されていないだけで、特許ベースでは脳内移行性を獲得しているも存在するが、激化するこのケモタイプで、それらを達成したのは、SBDDというよりも、特許的なホワイトスペースを獲得するドラッグデザインと合成力によるものかもしれない。BACEの時代の寵児たるリガンドを成長させたSBDDも決して万能ではない、そのScope&limitation、Pros&Consを理解しておく必要がある。

テーマ : 科学・医療・心理
ジャンル : 学問・文化・芸術

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Author:Janus
趣味で読んだ創薬化学論文を綴った日記。

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