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目の眩んだパトロンたちは、共同研究で見極めよ

Huggett B. The blinded buyer. Nature Biotechnology. 2012;30(2):139-140.
Available at: http://www.nature.com/doifinder/10.1038/nbt.2094



 中古車であれバイオテック企業であれ、購入する時に過払いしてしまうのは、買い手と売り手の間に知識の乖離があるからだ。

 アメリカの理論経済学者ジョージ・アカロフは、2001年に提唱した「レモン市場」論でノーベル賞を受賞した。レモン市場とは、財やサービスの品質が買い手にとって未知であるために、不良品ばかりが出回ってしまう市場のことである。レモンとは、アメリカの俗語で質の悪い中古車を意味しており、中古車のように実際に購入してみなければ、真の品質を知ることができない財が取引されている市場を、レモン市場と呼んでいる。ハーバード大学のギャリー・ピサノは、この理論がとりわけバイオテック企業に当てはまる事を示した。合併、買収において、バイオテックの購入価格は、競争買い付けや、類似技術の入手可能価格、購入側の特異で緊急な必要性といったいくつかの影響を受ける事もあって、買い手と売り手の間に情報価値判断の乖離が起こる。こういった問題に対する防衛法としてデュー・デリジェンスは有効であるが、プラットフォームやパイプラインの価値判断をする最も効果的な方法は、買収前に共同研究をして見極める事である。

 メルクが2006年に11億ドルで買収したシルナは、RNAiで先駆的研究をしており、知財のポートフォリオも盤石であった。シルナの構造的に化学修飾されたRNAi化合物は、結果的には失敗した。化合物はヌクレアーゼで分解され、薬物動態の予測が困難であった。最適化合成された最初のRNAiの臨床化合物Sirna-027は眼に直接投薬する加齢性黄斑変性症治療薬として開発されたが、フェーズ2で薬効不足の為に頓挫した。他にも存在したRNAiの開発化合物も、臨床が進んだ形跡はない。RNAiの技術が創薬の探索研究に応用できるとしても、11億ドルでは高すぎる買い物となった。
 GSKでは、最初に抗体のドマンティス、次にサーチュインの研究でサートリスに資金を投じる事となった。ドマンティスは、種々の側鎖を抗体に結合させ、ヒトでの薬物動態を制御する技術を有していた。GSKはドマンティスとの共同研究の経験がなかったが、4.54億ドルで吸収した。当時のドマンティスの時価総額は83億ドルだったので、投資家にとっては5.5倍のリターンがあった。GSKが得たものは何か?GSKは12個の前臨床化合物を入手したが、現在までに何一つ臨床に入ったものが存在しない。また、GSKはサートリス社に7.2億ドルを投じてSRT501の臨床開発を4つの疾患で行ったが全てサスペンドしている。

 これらの買収の価値が如何なるものかは歴史が明白にしている。これらバイオテックの買収は、高くつき、採算のあわないものだったのだ。2006年にトップ10の製薬企業は9つのバイオテックを買収したが、そのうちの5つは共同研究抜きでいきなりの買収であった。残念な買収事例の一例はTable 1に示される。一方で、共同研究をした4つのうちの3つ、ノバルティスのカイロン買収、アストラゼネカのケンブリッジ抗体技術、メルクの買収したグリコフィは、適正価格で購入し、実りある成果につながっている。

 研究開発の成功確率の低さと化合物の摩耗率を考えると、バイオテックの買収は、店のショーウィンドウから直接買うようなものになりがちだが、事前に共同研究をしておけば、少なくともそのショーウィンドウのガラスの曇りも晴らす事ができる。

テーマ : 科学・医療・心理
ジャンル : 学問・文化・芸術

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Author:Janus
趣味で読んだ創薬化学論文を綴った日記。

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