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分子内水素結合をデザインに活かす

Kuhn B, Mohr P, Stahl M. Intramolecular Hydrogen Bonding in Medicinal Chemistry. Journal of medicinal chemistry. 2010.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20175530.

5員環から8員環までの分子内水素結合相互作用を体系的に検証し、メディシナルケミストリーにフィードバッグできる一般的ガイドラインを示す報告。分子内水素結合は溶解度、膜透過性、脂溶性といった性質に大きく影響する。これらの性質は分子内水素結合の強度や結合長、分子の形状、水素結合形成前と後のコンフォメーション変化、極性の環境といった微妙な変化が影響する。分子内水素結合はタンパクとの相互作用でも重要な役割を果たす事があり、水素結合を切断すると活性が消失するケースもある。ファイザーのNK1受容体拮抗薬では分子内水素結合によって見た目よりも脂溶性は高く、膜透過性が十分で脳内移行性が獲得でき、強力な薬理作用を発揮した、という事例がある。タケダのLHRH受容体拮抗薬では分子内水素結合を利用して優れたPKプロファイルを実現する事に成功した。環状ペプチドでは分子内水素結合が膜透過性改善に機能した事例がある。系統的に研究する為に、まずケンブリッジ構造データベース(CSD)から5?8員環分子内水素結合化合物の情報を取得、さらに検証用化合物1a-1d, 2a-2d, 3a, 3b, 4a, 4bを合成。

<結晶情報解析>
1)分子内水素結合の形成しうる可能性は圧倒的に6員環が高い(Fig. 3)。
2)6員環の分子内水素結合形成は水素結合能に一致 (C=O > ヘテロ環 N > S=O > アルコキシ基)。
3)Fig. 4→アクセプターがカルボニル、もしくはヘテロ環Nの時の水素結合角度と距離の関係。
 ☆分子間水素結合(グレイプロット)と分子内水素結合ではジオメトリーは異なる。
 ☆環サイズに応じて角度と距離には逆比例の相関。
 ☆分子間水素結合は角度は150°以上。(グレイプロット)
 ☆7員環水素結合の角度は分子間水素結合に近い(赤色プロット)
 ☆6員環水素結合の角度は130°?140°(緑色プロット)。ただし、距離は分子間水素結合と変わらず。
 ☆5員環水素結合の角度はより小さく、距離は長い(マゼンダプロット)。よって、5員環水素結合はクラシカルな水素結合と同じと見なすべきではない。ただ、静電的相互作をするのに良好な構造である。
4)Table 1→各環サイズでドナー、アクセプターのペアで分子内水素結合発生頻度。
 ☆ドナーのNHとOHで大差なし。
 ☆5員環では例外的にアクセプターNとドナーNHで46%の高頻度。アミドとヘテロ環の5員環分子内水素結合は平面性の高い分子内水素結合を強固に形成と推定。
5)6員環について
 ☆Fig. 5→トポロジー解析。リンカーにsp2炭素があると水素結合形成頻度高。sp3含むと頻度低。
 ☆sp2炭素リンカーは高い平面性の獲得とπ共役系の非局在化で安定化。
 ☆sp3炭素はフレキシブルで分子内水素結合に不利。
 ☆アクセプターはC=OとNで大差なし。
 ☆PDBではsp2炭素リンカータイプの水素結合頻度はCSDに比べて低い。一方で非平面化合物では水素結合頻度は変わらず。CSDでは結晶化の際のパッキングも関与していると推定。
 ☆アルコキシ基では水素結合能は弱く共鳴効果小さい。
 ☆結晶では分子内水素結合を形成するが、タンパクとの相互作用時には乖離する事もある。PDE5阻害薬バイアグラがその一例(Fig. 6)。
 ☆水素結合アクセプター能に応じて安定した水素結合を形成。たとえば、エステルの場合はメトキシ基で相互作用するanti体よりsyn体で安定化(Fig. 7)。
 ☆キナーゼ阻害薬で分子内水素結合を利用したホッピングの数々が報告(Fig. 8)。
6)7員環について
 ☆立体反発の効果もあってその存在は稀。
 ☆ヘテロ(5員環)で固定化された化合物で確認(Fig. 9a)。
 ☆フェニル(6員環)固定化では水素結合不可(Fig. 9b)。
 ☆Fig. 10→トポロジー解析。最上段はシクロヘプタジエンホモロジーと見なす事が可能。
 ☆Fig. 10最下段→γターンミミックと記載。実際にこのような相互作用を低分子で確認する事は出来ず、γターンはタンパク内でのホールディングの過程で形成してると推定。
7)8員環について
 ☆発生頻度はさらに低い。
 ☆例外的にS=OとNでの分子内水素結合の比率が高い。C=Oに比べて水素結合形成に有利(Fig. 11a)。
8)5員環について
 ☆水素結合を形成すると平面性が高まる。たとえば、2面角を比較すると水素結合能のあるタイプ(ブラック)とないタイプ(グレイ)で全く異なる(Fig. 12)。

<物性解析>
分子内水素結合は、水素結合ドナーアクセプターを一つずつ外す事になるので、結果的に脂溶性は向上し、膜透過性は向上、溶解度は低下するはずである。これを実験的に検証(Fig. 13)。脂溶性はclogPが予測値、logDが実測値でそのギャップが分子内水素結合の効果と見積もる。
 ☆1a→1cが一般的水素結合ドナー導入の効果(膜透過性低下、溶解度若干改善、脂溶性低下)。1b→1dでは分子内水素結合形成の効果(膜透過性向上、溶解度低下、脂溶性向上)。
 ☆ベンズイミダゾール3a,3bでも同様の傾向。ただし、logDは0.7も上昇。この構造では、分子内水素結合がトートマーの回転を固定化してると推定。
 ☆分子内水素結合はclogPは平均して0.4向上する。PSAも同様の理由で過大評価している。
 ☆水素結合形成で溶解度が向上するのが2d, 4bのタイプ。これは分子内水素結合の非極性ホールドタイプとオープンタイプの平衡状態の比率が変化する為と計算より結論づけた(Fig. 14)。このタイプはベネフィットが非常に大きい。

溶解度はオープンフォームとクローズフォーム(水素結合形成)の比率で決まるので、弱い相互作用を利用する事で制御可能ではないか、と提案している。この為に、たとえば6員環タイプを7員環タイプにするのも一つの手法と提案する。Fig. 9aの7員環ではピラゾールをイミダゾールにする事で分子内水素結合形成しているが、その角度は30°と70°でドラスティックに溶解度を改善する事に成功した、とも述べられている。分子内水素結合はもはや無視できない相互作用であり、これを制御する事でより応用可能なドラッグデザインが展開できる。

なお、本文中、7員環水素結合を狙ったデザインは見た事がないとの記述があるが、AbbottのPARP阻害薬で狙い撃ちしたデザインがあるので、こちらも参考。

DOI: 10.1016/j.bmcl.2009.12.042

Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters
Volume 20, Issue 3, 1 February 2010, Pages 1023-1026
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テーマ : 科学・医療・心理
ジャンル : 学問・文化・芸術

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