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安全性を組み込むドラッグデザインの重要性

Guengerich FP, MacDonald JS. Applying mechanisms of chemical toxicity to predict drug safety. Chemical research in toxicology. 2007;20(3):344–69.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17302443


20年前の臨床開発といえば、失敗の主たる原因は、ヒトでの予想外の薬物動態であった。しかし、イン・ビトロ、イン・ビボ試験を通したヒトでの動態予測が進展し、現在では薬物動態によって開発が中止する確率は8%にまで改善された(Fig. 3)。一方で、臨床での薬効(25%)、副作用(31%)が原因でドロップする確率を合わせると、56%に達する(Fig. 3)。ヒトでの薬効の切れ味が悪い場合は投与量を上げざるを得ず、その場合もマージンの確保、高い安全性を獲得する事が重要となる。医薬品の歴史を見ても、抗炎症薬インドメタシンが発売された1960年代当時は、薬効対副作用(毒性)の点でかなりの問題があることはわかっていたものの、なかなかその当時では効果の切れ味が良いために、マイナス面が表面化されず、まだまだ、薬は効けば毒性・副作用は許された。ところが、最近のバイオックスの事例からも分かるように、リスク/ベネフィットバランスの考え方は大きく転換し、9999人の治験者で安全でも、1万人目で副作用が見られ、それが重篤ともなると、一挙に開発中止に追い込まれる。よって現在のメディシナル・ケミストには、化合物に安全性を組み込むドラッグデザイン力が求められる。この分野での大きな進展は、毒性発現のメカニズムが分子レベルで明らかにされつつあり、これを理解し、毒性の原因となる化学構造を理解する事はメディシナルケミストにとって強力な武器になる。実際のところ、臨床開発での成功確率は以前に比べて上がっている訳ではなく、PhaseII, IIIでの開発費は以前に比べて増大している。臨床後期で副作用が顕在化した場合、その打撃は致命的なものになる(Fig. 1, 2, 5)。ヒトでの臨床試験では肝毒性でドロップする可能性が高いが、チーマーマンはこれを3つのステージに分類して説明している(Fig. 4)。化合物に内在する毒性は動物モデルの毒性試験で予測可能であるが、代謝物由来のバイオアクティベーション、免疫系由来の毒性は、宿主感受性に依存しており、その予測は困難である(Table 7, Fig. 4)。チーマーマンは、ヒトでの肝毒のバイオマーカーにALT, ASTを設定している(Table 6)。スイスの医学者パラケルススが500年以上も前に言ったように、どんな薬効量でも安全な薬は存在しない。リスク/ベネフィットのバランスを考慮し、出来る限りの高い安全性を化合物に組み込む事がメディシナルケミストの使命である。バイオアクティベーションの原因となる化学構造として、ヒドラジド、アリール酢酸、アリールプロピオン酸、チオフェン、フラン、ピロール、αβ不飽和カルボニル(マイケルアクセプター)などが紹介されている(Fig. 8, 9, Table 14)。このようなトキシコフォアを外して代替基をデザインする事で安全性を高める事ができる。メルクでは、バイオアクティベーションの指標の一つとして、50 pmol(adduct) / mg proteinを設定している。この数値は、go / no-goのデシジョンを決定するものではなく、目標値である。CB1拮抗薬では、電子供与性基を含むメトキシフェニルでは4000 pmolであるが、ベンゼン環をピリジンに変換し、さらトリフルオロメトキシ基にする事で88 p molまで改善させている(タラナバント)。電子供与性基を一つ有するだけで、芳香環を電子欠損性のピリジンに変換、さらにトリフルオロメチル基のような強力な電子吸引基を導入している所に安全性に非常にシビアにデザインしている事が見て取れる。
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