スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

腸管代謝、意外に重要?構造が代謝に与える効果

Varma MV, Obach RS, Rotter C, et al. Physicochemical Space for Optimum Oral Bioavailability: Contribution of Human Intestinal Absorption and First-Pass Elimination. Journal of medicinal chemistry. 2010.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20070106.

ヒトでの経口吸収性を吸収(Fa)、腸管排泄回避留分(Fg)、肝排泄回避留分(Fh)に分解し、これらを309個の医薬品に対して解析、物理化学的パラメーターとの相関をとった。この報告が非常に有益な情報を提供してくれているのは、ラットなどの動物種のデータで外挿しているわけではなく、ヒトでのデータを使っている点である。実際のところ、ヒトでの各留分に対するPK情報は侵襲的サンプリング技術(たとえば、肝移植での肝外性段階での患者における門脈からのサンプリング)を必要とする為に、その情報が極めてレアである。こういった情報をとってきて解析するのはなかなか出来る事ではないので、得られた情報はPKのメカニズムの理解を深める上で参考にできる。ただ、選出された医薬品の各パラメーターの平均値は良く知っているドラッガブル値に相当するが、そのレンジは非常に大きい点は留意すべき(たとえば分子量:76?1449、clogP :-8.6-14.4、PSAは3.2-530など)。その上で、得られた傾向としては、

1)分子量、イオン化状態、脂溶性、極性、回転結合は経口吸収性に大きく影響する傾向がある。
2)この傾向は吸収の影響(Fa)と初回通過(Fg, Fh)の掛け合わせで説明できる。
3)分子量は吸収(Fa)に非常に影響し、脂溶性が高いとFg, Ghが低下する。
4)極性は経口吸収性に放射線のカーブを描く。
5)回転結合はFa, Fg, Fh全てに悪影響。
6)実は代謝律速の化合物では、腸管代謝は考えられている以上に重要な役割を果たす。



本文内容:
まず、静注の670個の医薬品情報から、クリアランスを腎臓とそれ以外に分離。腎クリアランスは全AUCに対する尿中AUC比とする。データ取得できた524化合物から、肝血流(23 mL / min / kg)に対する非腎クリアランスの割合から肝排泄回避留分(Fh)を定義。肝血流値が23 mL/ min / kg以上の35化合物を除外。残った489化合物から経口吸収性の情報が得られる441化合物に絞った。吸収(Fa)は放射性ラベル体のiv, po腎排泄分、投与量、もしくは検便の結果から3つの方法で見積もった。以上のF, Fa, FhからFgを定義し、絞った324化合物からFgが1.05を越える化合物15個を除外して、得られた309化合物を解析した。

Fig. 2: 経口吸収性を疾患毎にプロファイリング。中枢薬は初回通過(Fg, Fh)が律速になっている、癌や感染症は吸収(Fa)が律速、といった疾患毎に特徴が把握可能。
Fig. 3A: 吸収の良い化合物(Fa>0.9)は肝クリアランス速度と非常に良く相関(白抜きデータ)。
Fig. 3B: 肝Fhと腸管Fgには高い相関があるが、溶解度もしくは腸管膜透過の低い(Fa<0.9)化合物は腸管代謝の影響大。
Table 1: 経口吸収性(F)に対する各種データと物性パラメーターを比較。全体像が把握できる。
Fig. 4A: 塩基性化合物は経口吸収性(F)が低いが、その要因は初回通過(Fg, Fh)の影響が大きい。
Fig. 4B:分子量が500以上は経口吸収性(F)がガクっと下がるが、初回通過(Fg, Fh)の影響ではなく、主に吸収(Fa)の影響。
Fig. 5: 脂溶性と経口吸収性(F)には放射状の相関がある。脂溶性が高いと腸管吸収が律速となる。例外として脂溶性が高すぎる化合物に関しては経口吸収性(F)が良い。
Fig. 6: 極性パラメータが高まると経口吸収性は低くなるが、その要因は吸収(Fa)律速になるため。
Fig. 7A: 回転結合が増えると経口吸収性が悪化。
Fig. 7B: 分子に占める回転結合の割合(rel. RB)では吸収性に大きな影響がないので、回転結合の増加は分子量増大と相俟って吸収性悪化に寄与と考えるべき。
Fig. 8: 吸収律速化合物(黒塗りデータ)と代謝律速化合物(白抜きデータ)は物性パラメータが全く異なる。すなわち、
Fig. 8B, C, D, E: 吸収律速化合物は脂溶性が低くPSAが高く、水素結合の数が多い。代謝律速化合物は脂溶性が高くPSAは低く、水素結合数は少ない。
Fig. 9: リピンスキールール違反数とF, Fa, Fg, Fhを比較すると、F, Faにのみ相関がある。すなわち、リピンスキールールは吸収過程(Fa)を反映している。

以上の結果は、データセット自体は少ないとはいえ、不適切物性パラメーターのケミカルスペースにある化合物は開発が困難になる傾向にある、という従来の仮説を支持する。脂溶性と膜透過性にベルシェイプ相関がありLogPが1?3が良いとする見解があるが、今回の結果は、必ずしも高い脂溶性がないと吸収過程(Fa)に致命的影響があるわけでもない、と結論する。一方で水素結合数とPSAは膜透過性に大きく影響しており、脱溶媒和ペナルティの大きさが膜透過性悪化につながりうる。また、この解析は、従来あまり調べられてなかった腸管での初回通過の影響について重要な情報を提供していくれている。すなわち、腸管のCYP3Aは70 nmol程度で肝臓の5000 nmolよりずっと少ないが、代謝律速の化合物に関しては、肝臓以上に腸管での代謝が重要な役割を果たしているのかもしれない。これは、いくつかのPgp基質となる化合物は腸管対流時間が律速となり、腸管でのCYP3A4に曝されている時間が長くなる事が影響しているのかもしれない。実際のところ、30%の化合物はFgが0.8以下である事から、これまでの研究では腸管での代謝を過小評価してきた、という点は注目すべき結論である。ここで得られた結論はケミストがデザインする上で適切な経口吸収性を獲得する上で必要な物性パラメーターの指標を提示している。しかし、これが一般的傾向である事も忘れてはならない。物性パラメーターは一つでは説明できないし、化合物固有の問題点は、その状況に応じて解決策を模索すべき。このような大前提を踏まえた上で、ここで示された解析は大いに指標として役立てる事が出来る。
スポンサーサイト

テーマ : 科学・医療・心理
ジャンル : 学問・文化・芸術

コメント

Secret

プロフィール

Janus

Author:Janus
趣味で読んだ創薬化学論文を綴った日記。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。