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カテプシンK阻害薬のナレッジをHCVに取り込み、新たな発見から研究を展開

Harper S, Ferrara M, Crescenzi B, et al. Inhibitors of the hepatitis C virus NS3 protease with basic amine functionality at the P3-amino acid N-terminus: discovery and optimization of a new series of P2-P4 macrocycles. Journal of medicinal chemistry. 2009;52(15):4820–37.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19624135


C型肝炎治療薬HCVNS3阻害薬として、第1世代の鎖状で共有結合モディフィアタイプ、第2世代に非共有結合性でP1ーP3でマクロサイクルを形成した大環状タイプが報告されているが、メルクでは独自にP2−P4でマクロサイクルを形成するタイプを合成展開しており、MK-7009、MK-5172が開発に進んだ。次のデザインは化合物3のウレタン結合の変換で、アミド部分をアイソスターのトリフルオロエチルアミンに変換できる事がタンパクとのドッキングで支持された。実際に合成した化合物12aは活性が減弱したが、細胞系での活性はウレタンと同等であった。同じ変換でブレイクスルーを呼び込んだカテプシンK阻害薬との大きな違いは、ここでのアミンの塩基性はpKaが6.3とカテプシンK阻害薬より3も高い事である。また、この塩基性であれば一般的にアッセイを行う生理的条件では非プロトン化しているが、HCVのアッセイ条件ではほとんどがプロトン化しており、アミンが有効に機能している事が示唆された。この事実をさらに検証すべく、トリフルオロメチル基を単なるメチル基にした13aで活性は0.27nMと改善し、驚くべき事に細胞系ではウレタン3より1桁強い1nMの強力な活性を示した。さらにヒト血清存在下での活性は3nMでセラムシフト値は極めて小さく、塩基性アミンの存在が大きく貢献している。酵素とのドッキングからアミンがD168と静電的相互作用していると考えられた。メチル基を除去して不斉炭素を減らした14で活性は保持した。また、トリフルオロメチルをシャッフルした16で活性は減弱、一方でジェミナルジフルオロ体15で活性は保持したが、アミンの塩基性が低いとセラムシフトも大きくなった。ここまでで見いだした化合物は経口吸収性、標的臓器の肝臓濃度は低い。アクティブ・トランスポーターにのるにはP3の置換基が鍵になるとして、ここを変換して60pMの結合活性と2 nMの細胞系活性を持ち、まずまずの肝臓濃度を示す18aを見いだしたが、血中濃度は不十分であった。血中濃度を改善する為に、4種のP2ヘテロ環に対して、血中と肝臓のAUCをプロットしたところ、イソキノリンが良好と判断し、これに絞って最終的な最適化を行い十分な活性と経口吸収性、組織移行性を示す化合物25、26を見いだした。参照化合物として合成した38、39からマクロサイクルでなくてもアミンを導入する事は有効に機能する事が示されており、HCVのデザインの新たな展開が示された。

アミンを入れれば細胞系活性がついてくる事はキナーゼの研究では一般的に知られている。しかし、ここでは別テーマのカテプシンKを利用したアミドのアイソスターであるトリフルオロエチルアミンをHCVに引き込み、それがカテプシンKとはpKaが異なっていてD168と相互作用できるアミンで活性が出ている事を見落とさずに作業仮説を見直し、そのベネフィットを有効活用して一挙に裾野を広げて研究を展開したところにブレイクスルーがあった。最初に立てた作業仮説を基に得られた結果の中から思いがけない事実、新たな発見に柔軟に作業仮説を見直してブレイクスルーを切り開いていくメルクらしい研究が見受けられる。合成面ではトリフルオロエチルアミンをオキサゾリジンをアルキル化して開環させるメルクで独自に開発した手法を利用している。また、アルデヒドにN-フルオロベンゼンスルホンアミドを作用させればα位をジフルオロ化できる。元文献ではモノフルオロ化を光学活性体で合成可能。アルデヒドが有用な合成シントンなので、このα位に代謝ブロックや電子密度の制御に利用できるフッ素を入れる事のできる点は利用価値が高い。プロリンとαアミノ酸アナログのアミドカップリングではHATUもしくはTBTUを縮合剤に利用するが、αアミノ酸のアミンを保護していなくてもプロリンと反応するようで、無駄な保護、脱保護が必要ない。1級アミンとアルデヒドの還元的アミノ化には酢酸ではなくルイス酸のZnCl2を使ってNaBH3CNで還元しており、3級アミンの生成を抑制できている。このテーマの合成での最大の山場はRCMの収率にかかっているが、アミンの存在する本基質でも、TFA塩にしておく事でグラッブス触媒Zhan-Iの反応性を損なう事なく高収率で目的物を得る事ができる。
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