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自動置換基変換提案ツール

Keefer CE, Chang G, Kauffman GW. Extraction of tacit knowledge from large ADME data sets via pairwise analysis. Bioorganic & medicinal chemistry. 2011;19(12):3739–49.
Available at: http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0968089611003488


本報では、ファイザーで開発した自動置換基変換提案ツールの構築法を紹介している。
1)無秩序で膨大に存在するADMEの”データ”(what)を、
2)ペアワイズ(マッチドペア)という切り口で解析し5つの変換カテゴリーに分類する事で”情報”(know-what)として抽出し、
3)それらを利用して化合物最適化の”ナレッジ”(know-how)としている。

この際に、ペアファインダーという解析ツールと、ペアトランスフォーマーという提案ツールを利用する事で、大規模データを自動的に処理できるようにした事が成功の秘訣になっている事は言うまでもない。

まずファイザーのADMEデータベースからペアワイズ(マッチドペア)を解析し、効果的変換の抽出を行った。大規模データを効率的にマイニングする為に、伝統的手法は利用せず、ペアファインダーと呼ばれるアルゴリズムを応用したソフトを利用して、単純変換及び複合変換のデータ抽出を自動化、高速処理化(2000 cpds / sec)を果たした。

ここで検証するADMEデータは、

ヒト代謝安定性(HLM):226,348化合物
MDR膜透過性:102,933化合物
MDRのP-gp排出比:74,624化合物
脂溶性(SFLogD):29,998化合物

たとえば、HLMの場合、22万化合物の理論的に可能な組み合わせは250億通り存在し、実際に見出されたのが1200万通り、ユニークな変換が780万通り、側鎖の変換は全体の25%であった(Table 1)。

頻出置換基変換トップ20はある程度予想の範囲内の変換(Fig. 4)。多くの変換が統計的に有意であるにも関わらず標準偏差は大きい。たとえば、プロトンをメトキシ基にすると、代謝安定性の平均的変化は10.2、標準偏差は65.4、すなわち35%は増加、22%は減少、42%は変化なし。平均としてはメトキシ基は肝代謝は増加するが、多くの場合で例外が存在する。

標準偏差が大きいとはいえ、Table 3のように、置換基変換に相加性があるのは特筆すべき点である。たとえば、代謝安定性の例で、オルトからパラの変換(18)はオルトからメタ(6)、メタからパラ(16)への変換の足し合わせが成立する。Fig. 1でカテゴライズした等価体変換や付加的変換はこれに相当するが、他にも最初の活性から比例関数的に活性が変化するパターン、すなわち相乗(乗法)効果があるものも存在する。

主活性を残して他の活性を減弱もしくはADME改善を目的にする等価体変換は、ペアワイズ解析によっても評価できる。たとえば、フェニルをm-メトキシフェニルに変換する場合、変換の前後で脂溶性にほとんど変化はないので、脂溶性の等価体変換とみなせる(Fig. 5a)。この事実はハンシュのπ値が-0.02である事によっても確かめられる。3-ピリジンから4-ピリジンの変換の変換は、MDR排出値の等価体変換とみなせる(Fig. 5b)。

フェニル基をクロロフェニル基に変換するのは脂溶性がほぼ一律に0.60向上するので相加的変換とみなせる(Fig. 6(a))。これはπ値が+0.71とも一致する。ピラゾールからイソオキサゾールへの変換は膜透過性は向上の相加的変換であるが、その標準偏差はやや大きい(Fig. 6b)。

Fig. 7aからエチルピリミジンから直結ピリミジンへの変換は代謝安定性に関して相乗的(乗法)変換とみなせる。これはパラメーターの対数をとると相加的変換同様のグラフを得られる(Fig. 7b)。アザビシクロヘプタンからメチルピペリジンへの変換も代謝安定性に関して相乗的(乗法)変換である(Fig. 7c,d)。

ペアワイズ解析で最も魅力的な成果は、スイッチイング変換を浮き彫りにできる点である。電気スイッチをオン・オフするように、活性値をオン・オフできる魅力的変換である。たとえば、エステルからカルボン酸の変換は代謝安定性のスイッチングオフ変換である(Fig. 8(a))。これは代謝安定性の測定条件pH7.4ではカルボン酸がイオン化している事を考慮すると当然の結果といえる。特筆すべき結果の一つがピリジンからピロリジノンの変換が代謝安定性のスイッチングオフ変換であり、水素結合アクセプターを残したまま代謝安定性を劇的に改善できる(Fig. 8(b))。プロトンからピペリジンの変換も代謝安定性のスイッチングオフ変換である(Fig. 8(c))。MDR排出のスイッチングオフ変換として、3-ピリジンからフェニルへの変換(Fig. 8(d))、スルホンからエーテルへの変換(Fig. 8(e))がある。膜透過性のスイッチングオフ変換として、フェニルからイミダゾールの変換がある(Fig. 8(f))。

スイッチング変換で注意すべきは、スイッチングオン変換の逆が必ずしもスイッチングオフ変換になるわけではない事。Fig. 8(d)では、フェニルのMDRは2−5のレンジにあり、ピリジンは2−45のレンジにあるが、ピリジンもまた2−5のレンジに集中して存在する。よってフェニルをピリジンに変えてもMDR基質にならない事の方が多い。

Fig. 1の1)等価体変換、2)相加的変換、3)相乗(乗法)的変換、4)スイッチオン変換、5)スイッチオフ変換を、パラメーターでカットオフして定義し、その存在比をまとめたのがTable 4。圧倒的に等価体変換が多く、脂溶性のみ付加的変換が多い。MDR排出比と代謝安定性でスイッチングオフ変換が多いのは、CYP酵素、トランスポーターの分子認識に関わる置換基の存在を示唆している。

無限の置換基組み合わせの可能性から効果的な変換を提案する事で開発化合物を効率的に創出しうる、その為にペアワイズ解析をドラッグデザインに提示する実践的インターフェイスとしてペアトランスフォーマーを開発した。これはファイザーのインハウス化合物解析ツールPCATのモジュールとして利用できる。

ケーススタディ1(JAK阻害薬):代謝安定性改善の為にシクロプロピルメチルの代替基探索。5つの変換が提示され、シアノ基に変換された化合物がCP-690550のラセミ体である(Fig. 9)。

ケーススタディ2(ADME改善):すべてのADMEパラメーター改善を指向して、2-ピリジンの代替基を探索し、イミダゾールを候補に見出す事に成功している(Fig. 10)。
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テーマ : 科学・医療・心理
ジャンル : 学問・文化・芸術

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