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攻撃的薬物設計MK-0489

Ujjainwalla F. Design and syntheses of melanocortin subtype-4 receptor agonists: evolution of the pyridazinone archetype. Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters. 2003;13(24):4431-4435.
Available at: http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0960894X03009806.

Ujjainwalla F, Warner D, Snedden C, et al. Design and syntheses of melanocortin subtype-4 receptor agonists. Part 2: discovery of the dihydropyridazinone motif. Bioorganic & medicinal chemistry letters. 2005;15(18):4023-8.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16005624.

Guo L, Ye Z, Ujjainwalla F, et al. Synthesis and SAR of potent and orally bioavailable tert-butylpyrrolidine archetype derived melanocortin subtype-4 receptor modulators. Bioorganic & medicinal chemistry letters. 2008;18(11):3242-7.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18479920.

He S, Ye Z, Dobbelaar PH, et al. Discovery of a Spiroindane Based Compound as a Potent, Selective, Orally Bioavailable Melanocortin Subtype 4 Receptor Agonist. Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters. 2010.
Available at: http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0960894X10002581.


メルクではペプチドリガンド情報を活かしたセンセーショナルなドラッグデザインによって低分子メラノコルチン受容体(MC4)作動薬を見いだす事に成功した。一方で、スクリーニングからのリガンド探索も検討した。当時からメラノコルチン受容体はアンタゴニスト・プローン、すなわち拮抗薬探索は容易であるが、作動薬は低分子ではとれないとさえ考えられていた。そのような背景にあって、メルクのスクリーニング化合物で最初に見いだされたのは、芳香環4枚とフレキシブルなアルキルリンカーを含む分子量の大きな化合物で、その結合活性は6μMと弱く、cAMP上昇に至っては20μMの高濃度でわずか15%しか上昇しないものであった。通常であれば、このようにドラッガビリティの低い(高分子、低活性)リード化合物から最適化するというのは無謀以外の何物でもない。このような全く未知の大海原の海図なき航路に漕ぎ出す為の羅針盤は何か?それは研究者としての自信であり、このテーマに賭ける決意に他ならない。メルクはMC4作動薬の魅力度を理解した上で、挑戦的ではあるがうまくいった時にそこで享受できる感動は他には得られないものであるとの確信の元、この前人未到の海図なき航海へと討って出たのである。

論文未報告であるが、まずは初期SARを取得し、見いだした化合物2で3μM34%の部分作動活性を示した(Table 1)。ベンゾラクタム部分のフェニル基除去で活性は減弱する。また、このリードには先に見いだした化合物1で活性に重要なアミン置換基がない。これらを考慮し、アミンとフェニル基を有するピペラジン、ピロリジンタイプをデザインした(Table 2)。ここのデザインは大きなホッピングであるが、この部分構造はメルクのNK1受容体拮抗薬で利用されていた部分構造である事を考慮すると、ここでもGPCRのナレッジをうまく取り入れている事が予想される。さらにフレキシブルなプロピルリンカーの自由度を固定化する為にメチル基を導入し、結合活性で7?8乗、作用様式でアゴニスト活性を示す化合物12や25を見いだした。メチル基はβ位、γ位とシフトさせると活性は激減(Table 3)。次にピロリジン、ピペラジン、メチルの立体配置と活性についてのSARを取得した(Table 4)。

次の第2報では、ピリダジノンをジヒドロピリダジノンに変換し、得られた化合物67は結合活性、ファンクショナル活性ともに8乗でまずまずのサブタイプ選択性を有する化合物を見いだす事に成功した。

第3報では、アミド側鎖を第1のケモタイプのスピロピペリジン部分に相当する置換基とであるフェニルピペリジンとハイブリッドされ、ピロリジン環上にはtBu基が導入された化合物1もしくは2Bから出発する。合成は桂皮酸エステルとビスTMSメチルアミンとの環化反応によって構築し、光学活性体はエバンス不斉補助基で分離しており、1,2,4置換ピロリジン合成法を設定している。ここで興味深い知見は、芳香環上の置換基とピロリジンの立体化学でアゴニスト、パーシャルアゴニスト、アンタゴニストが決定し、R,Sは拮抗薬、部分作動薬になる傾向があり、S,Rは作動薬になる傾向があるという点である。GPCRの受容体結合サイトにはアゴニストのトリガーとなる部分、すなわち7回膜を回転させるサイトがあると考えられている。仮にこのような立体によって作用様式が変化するポイントを理解し、合理的にドラッグデザインする事が可能となれば、作用様式を思いどおりに制御できる夢のドラッグデザインが可能となるだけに、こういったナレッジは非常に重要になると期待できる。また、ここで得られた3つのタイプで高活性、高選択性、良好な薬物動態を示す化合物を見いだしている。

第4報ではさらなるPK改善へとデザインは集中する。第2のケモタイプとして検討したてきた化合物5のフェニルピペリジン部分を、第1のケモタイプの最初に利用されていたスピロピペリジンを取込み固定化するという方針をとった(化合物6)。この理由は、この変換が、グレリン作動薬でPK改善したナレッジであるとしている。さらに、取得済みSARからジメチル基を挿入した化合物1?4をデザインしている。鍵となる合成は1)スピロインダノン構築、2)ケトンから修飾アミドへと導く2段階に分けられる。1)スピロインダンは、ピペラジノンからクノーバナーゲルで7、有機銅試薬でフェニルを付加、二重結合をマグネシウムで還元、脱炭酸、シアノ基をカルボン酸まで加水分解してフリーデルクラフツで環化。2)ケトンをホーナーエモンズで増炭、メチル化、シアノ基の加水分解とカルボン酸のクルチウス転位でアミンとている。期待どおりに活性の強い化合物1が得られ、このテーマでは大きな課題であった経口吸収性に優れていた。DIOマウスで抗肥満作用を確認し、iv投与で非常に強力な性機能改善作用を確認した。このようにして、非常に難易度の高い低分子MC4作動薬の研究において、候補化合物MK-0489を見いだしたのである。

MC4作動薬は当初は抗肥満に注目されたが、その後ペプチドによって男性での勃起不全治療薬としてPOCがとられており、性別を問わず性機能障害となる事が示唆されている。最近はペプチド製剤の魅力が高まっているが、MC4ペプチドではMC1に対する選択性が低くこれが皮膚が褐色に変色する副作用の原因となると推定される。選択性に優れ経口投与可能なMC4作動薬はプロミッシングな抗肥満作用、性機能障害改善薬となる事が期待されるのである。

メルクのGPCR研究過程を顧みると、古くは1980年代から多くの受容体研究を横断的に展開しており、その中でペプチドや受容体のナレッジ、勘所を活かし、そして研究者の自信を羅針盤に数々のブレイクスルーによって創薬イノベーションを起こしてきた事が理解できる。普通であれば誰もが無理と思うような難題にも挑戦する姿勢、そしてそれを越えるだけの強力なドラッグデザイン力に裏打ちされた自信が開拓的研究となって、多くの研究者に感動を与えるである。時代を経っても色褪せない作品、すなわち創薬化学の「クラシックス」を堪能して欲しい。
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テーマ : 科学・医療・心理
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