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脂溶性ー代謝安定性相関

Lewis ML, Cucurull-Sanchez L. Structural pairwise comparisons of HLM stability of phenyl derivatives: Introduction of the Pfizer metabolism index (PMI) and metabolism-lipophilicity efficiency (MLE). Journal of computer-aided molecular design. 2009;23(2):97-103.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18802667.

ファイザーの研究者は、インハウス15万検体の膨大なインビトロ代謝安定性試験の結果から、フェニル基上の置換基が代謝安定性に及ぼす影響をマッピングしその傾向を解析する事で、一般的なドラッグデザインに適用できる特徴を導き出した。構造代謝相関(SMR)は1ケモタイプに限定しても汎用性はないので、膨大なケモタイプを横断的に解析する事でその効果の一般性を獲得するのがこのデータマッピング手法の特徴である。Table 1にその結果が示される。データセットの数にはバラツキがあるので、セット数の小さなものは信憑性も落ちるので注意が必要、との事。置換基に対して、代謝安定性が2倍以上改善したもの、改悪したもの、その中間に分類し、改善した比率から改悪した比率を差し引いた数値をPMI (ファイザー代謝指数)と定義する。この数値が高い程代謝安定性は改善している。数値を見ると、メタンスルホニルやスルホンアミド、カルボキサミドはテキメンに改善するが、置換基効果を脂溶性に対してプロットすると完全なる逆相関上に乗っており、これらの効果はその延長上に位置している事が理解できる。代謝で考慮すべきは、代謝部位をブロックした効果と、代謝部位が変化する事である。脂溶性が高いほどCYPの疎水ポケットにはまりやすくなるので、脂溶性が高いと一つの代謝部位をブロックしたところで、別の部位が代謝されてしまう。脂溶性が低下すれば、ポケットにハマりにくくなって代謝を受けなくなる。脂溶性と代謝安定性の逆相関は、この事実を説明しているに過ぎない。とりわけ目新しい発見がなかったのは、15万検体のデータを平均化して捉えている為であり、むしろリーズナブルな結果といえる。よく代謝部位をおさえるのに利用しているフッ素は、むしろ、それによる物理化学的性質の変化を最小限にとどめる事にメリットがあり、これが元の物性を大きく損なうスルホンアミドとの違いになっている。この相関から大きく外れるメトキシ基、メチル基は、それ自体が代謝される為と考えられる。ヒドロキシル基は酸化的代謝の改善には良い効果があるが、包合を受けるリスクを考慮する必要がある。興味深い知見は、2置換体として、ハロゲンではメリットが小さいものの、3,4-ジメトキシ基は明らかに1置換より効果的である。これら置換基のコンフォメーション変化が利いていると推定され、利用価値はある。活性は脂溶性に相関する傾向にあるので、脂溶性を落として代謝安定性を良くしても、活性も落ちてしまうので、実際のところこの予想どおりのSMR相関は使い道は小さい。重要なのは、脂溶性の変化に対して代謝安定性を改善しうる置換基である。ファイザーの研究者は、これに関して、代謝ー脂溶性効率(MLE)を定義した。MLEはPMIにclogPにスケーリングファクターで処理した数値である。Fig. 2に示された結果を参考にすると、パラ位クロロ基やトリフルオロメチル基は効果的で、同じ置換基でもオルト位になるとむしろ悪化する傾向が見て取れる。ここで示された結果の使いどころとして、漠然とした情報しかない状態のリードジェネレーションの段階で、活性も弱く代謝安定性もそれほど良くない場合に、積極的にMLEに優れた置換基を導入する事で、代謝プロファイルを悪化させずに活性を向上させる事ができる。逆に、個別のケモタイプで、既に代謝部位が分かっていたり、詳細なSMRが判明していればあまり利用価値はないように感じるかもしれないが、たとえば、代謝安定性に影響なく、脂溶性をチューニングしたい場合は、中央ライン上の置換基を選ぶなど、情報をうまく活用すればスマートなデザインも可能。興味深いのは、高速SARとして30年以上も前に提唱されたトップリスツリーの置換基変換で代謝安定性が改善するのは、最初の塩素原子くらいである点である(アニリンやニトロはファイザーのガイドラインで合成しない方向になっているので、データセットが不十分という前提だが)。よって、活性が上がっても代謝安定性が悪い場合に、トップリスツリーと相補的な利用方法も可能である。
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趣味で読んだ創薬化学論文を綴った日記。

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