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リード創出でターゲットクラスに注目

Beaulieu C, Isabel E, Fortier A, et al. Identification of potent and reversible cruzipain inhibitors for the treatment of Chagas disease. Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters. 2010.
Available at: http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0960894X10014666.

シャーガス病治療薬にはシステインプロテアーゼであるクルジパインの阻害薬が有望であり、実際にK-777のような共有結合性阻害薬が知られている(Fig. 1)。しかし、これらの共有結合性阻害薬は、宿主のプロテアーゼ酵素も非可逆的に阻害し、オフターゲット活性による望まれない副作用に寄与すると考えられる。安全性に優れているのは可逆的阻害薬であるが、その報告例はほとんど存在しない。

メルクの研究者のアプローチは、クルジパインが同じシステインプロテアーゼであるカテプシンと相同性が高い事に着目し、自社で見いだしたフェーズ3開発化合物オダナカチブが末端シアノ基でチオイミデート結合を形成して可逆的な阻害様式をとる事に着眼し、ニトリル部位を持つ可逆的クルジパイン阻害薬をカテプシン阻害薬から展開するという、ケモゲノミクス的アプローチをとった。

まず、カテプシンK阻害薬を含めたシステインプロテアーゼ阻害薬をフォーカススクリーニングにした結果、カテプシンK阻害薬3で1.8 nMの強力な活性を示すクルジパイン阻害薬を見いだした(Fig. 2)。しかし、この化合物は塩基性基がある為かリソソームでの化合物凝集性によって望まれないカテプシンB、L、Fといった作用も示してしまい、リソソーマトロピスムを起こしてしまう。よって、より安全性の高いシャーガス病治療薬を指向して非塩基性クルジパイン阻害薬の検討に方針を定めた。非塩基性化合物に絞った検証の結果、幸運にも化合物4を見いだす事が出来たが、カテプシンKに対する選択性、マウス血中半減期が短いといった薬物動態で課題を残した。

最適化にはP1、P2、P3の3つの部位が考えられた(Fig. 3)。まず、P1部位の変換の結果、フルオロシアノフェニル10で活性が向上、ただし選択性にインパクトなし(Table 1)。次にP3部位の変換の結果、多様な置換基が許容されるが選択性に寄与する置換基は見いだせず(Table 2)。しかし、この部位は代謝安定性改善に利用できると考えた。最後にP2部位を最適化した結果、変換の余地はほとんどなかったが、フルオロロイシンの脱フッ素体17で活性はサブナノオーダーに向上した。これらP1?P3の置換基を組み合わせた24?26から、カテプシンL、B、F、S、Vに対して80倍以上の選択性を有する26を代表化合物に選出した。経口吸収性は良好で、血中持続性も確認できた。カテプシンKに対しては選択性が得られなかったが、カテプシンK阻害薬は臨床にて安全性を確認しており、問題にならないと考えている。

以前のテーマで検討していた独自の骨格から、新規テーマの活性も引き出してしまう。まさに、得意とする骨格を有する研究所の強みを発揮した効率的なドラッグデザインである。
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テーマ : 科学・医療・心理
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