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GPCR結晶化:A2Aの事例

Jaakola V-P, Griffith MT, Hanson MA, et al. The 2.6 Angstrom Crystal Structure of a Human A2A Adenosine Receptor Bound to an Antagonist. Science. 2008;322(5905):1211-1217.
Available at: http://www.sciencemag.org/cgi/doi/10.1126/science.1164772.

2008年に報告されたGPCRのアデノシンA2A結晶化報告。アデノシンのリガンド結合サイトがロドプシン、アドレナリンと大きく異なる事は、新たな驚きとして衝撃を与えた。レチナールやカラゾロールがロドプシンもしくはβ2の3、5、6、7膜貫通領域の深い結合サイトに位置するのに対して、アデノシンのリガンドZM241385は細胞外ループ2や3、膜貫通領域の6、7ヘリックスとコンタクトはあるものの、3、5膜貫通領域とは相互作用がほとんどない。これまでのGPCR研究では、ミューテーション実験とアドレナリンやロドプシン受容体の結晶構造解析の結果から、とりわけモノアミン性GPCRでは3TMのアスパラギン酸がリガンドのアミンとイオン結合を形成しており、この領域がリガンド結合サイトと推定して議論されてきた。ところが、アデノシンではこのモチーフは全く適用できず、膜貫通領域に対してリガンドは垂直に立っている。二環性のトリアゾロトリアジン環は5TMのフェニルアラニンとπスタックし、7TMのイソロイシンと疎水性相互作用を、6TMのアスパラギンとは3点で水素結合を形成している。注目のリガンドのアミン(N15)は、3TMのアスパラギン酸ではなく、5TMのグルタミン酸と相互作用している。このグルタミン酸をアラニンにポイントミューテーションすると活性は激減するが、グルタミンにミューテーションしてもそれほど活性は減弱しない。この事実から、このアミンはイオン結合ではなく、水素結合によって相互作用していると考えられる。一方で、GPCRの活性状態、不活性状態の切り替わりを司るのに重要な役割と推定される「トグルスイッチ」の6TMのトリプトファンには、β2では相互作用していないが、ロドプシンとアデノシンは相互作用している。ロドプシンやアデノシンはリガンド非存在下では不活性化されているのに対して、β2ではリガンド非存在下でもある程度活性化しているが、これにはトグルスイッチのトリプトファンの動き/自由度が関連していると推察される。また、アゴニスト、アンタゴニストの切り替わりに重要と推定されていた膜貫通領域底部の考察は、重要な情報を与えてくれている。ロドプシンでは3TM部分Asp-Arg-Tryと6TM部分Gluとのイオン結合を形成したD/ERYモチーフによる「イオニックロック」が不活性状態を保持するのに重要とされ、このイオン結合を切断する事で活性状態になると考えられいた。また、クラスAに属するGPCRには、このDRYモチーフが存在し、アゴニスト/アンタゴニストの変化に重要と考えられてきた。しかし、このモチーフは、アドレナリンβ2、β1、そしてこのアデノシンにも存在しなかった。そのかわりに、アデノシンでは、3TMのアスパラギン酸が細胞内ループ2のチロシン、2TM底部のスレオニンと水素結合を形成している。同じモチーフがアドレナリンβ1のアスパラギン酸とチロシンとの相互作用に見いだす事ができ、一方でβ2ではアスパラギン酸はセリンやスレオニンと相互作用して、チロシンは異なる方向を向いている。この細胞内ループ2の違いが受容体の活性化、不活性化に重要な役割を果たしていると推定される。今後、GPCRシグナル伝達のメカニズムとして、細胞内ループ2の水素結合仮説は、D/ERYにとって代わっていくのかもしれない。アンタゴニストにイソブチル基やメチル基を入れるとアゴニストに変わった、という報告がある。これは導入した脂溶性置換基がD/ERYの「イオニックロック」を切断すると考えられてきた。ただ、こういった剛直なイオン結合を切断するような脂溶性置換基というのはなかなかイメージが沸きにくいものであった。しかし、細胞内ループの水素結合切断がアゴニストへのスイッチに関与しているとしたら、まだイメージもしやすい。また、細胞外ドメインの構造も、アデノシンはアドレナリン、ロドプシンとは大きく違うのも驚きである。アドレナリンやロドプシンの細胞外ループ2がβシートやαヘリックスといった蛋白二次構造を形成しているのに対して、アデノシンは部分的にランダムコイル構造を構築している。このランダムコイルは、多くのクラスAのGPCRに存在する3TMと5TMをつなぐジスルフィド結合の他にアデノシン特有の細胞外ループ1と2を橋渡しする二つのジスルフィド結合を有する。細胞外ループ3はループ内にジスルフィド結合が存在してループのねじれを規定しているが、ミューテーション実験から、このループは受容体のシグナルを伝えるのに必ずしも必要ではないと推定される。それにしても、アデノシンの結晶情報のインパクトは、従来考えられてきたリガンド結合サイトとは全く違うところにあった点である。現時点で分かっているだけでもいくつかの結合パターンがあって、さらに他の結合モードも存在しうるとしたら、ホモロジーモデリングを作るには、多くの「仮定」が入ってしまう事を覚悟しなくてはならない。
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