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「百聞は一見にしかず」視覚化ツール

Ritchie TJ, Ertl P, Lewis R. The graphical representation of ADME-related molecule properties for medicinal chemists. Drug Discovery Today. 2010.
Available at: http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S1359644610008056.

ADMEToxと化合物の物理化学的パラメーターには相関があり、これを視覚的に表示する事はメディシナルケミストが直感的に理解する助けとなる。ここでは、ADME経験則をどのように視覚化して表示できるかについてレビューする。

・セルの色づけ:最もシンプルで古くからある表示方法。(Fig. 1)

・信号機表示:青、黄色、赤の表示は世界共通の標識。1920年くらいから利用されている。直感的に理解するのに非常に有効。ADME、clogP、分子量、スクリーニングヒットの判断に利用されている(Fig. 2)。

・特殊プロット:リードトゥドラッグのプロセスでは、複数の要素を同時に最適化する必要がある。2、3、4次元でデータを理解する為に、散布図、パイチャートといったグラフィカルな表示が利用されている。計算技術が発達した19世紀以降に盛んになる。

・クレイグプロット:1971年にクレイグによって提案された置換基の性質をハメットのσ値とハンシュの脂溶性π値でプロットして理解するというもの。2010年には等価体ホッピングへの応用にもその概念が利用された(Fig. 3)。

・フラワープロット:1995年にマーチンに提案された複数の物性パラメーターを表記する方法(Fig. 4)。キナーゼのような生物活性のパネルで選択性を検出するのに利用可能。(Fig. 4)

・エッグプロット:エガンによって提案。化合物をlogPとPSAでプロットした際に良好な経口吸収性を示す範囲を卵状に塗りつぶして表記。(Fig.5)

・経口吸収性グラフ:マンダゲレらによって報告。縦軸に膜透過性、横軸に代謝安定性して経口吸収性の良し悪しの領域を表示。(Fig. 6)

・黄金の三角地帯:logDを横軸、分子量を縦軸にした場合、黄色で示した三角地帯がドラッグライクスペースとするもの。(Fig. 7)

・フェイズダイアグラム:ADMEの良し悪しを顔の表情で表記。

・SARANEA:構造活性相関、構造物性相関、構造選択性相関を視覚化する手法。ロウンキネらによって提案。クモの巣のようにネットワーク化されたデータ表示。SARANEAはJavaで無料でダウンロードできる。

・時間軸プロット:ADMEが時間軸でどのように変化しているかを表記。たとえば、経口吸収性が時間と共にどのように変化したのかを表示させる。グーグルの下記モーションチャートが好例。スクリーンショットはFig. 8。

http://code.google.com/intl/ja/apis/visualization/documentation/gallery/motionchart.html

・BAレーダープロット:経口薬に求められる性質のドラッグスペースをレーダーでプロット(もしくは、スパイダー、クモの巣プロットとも呼ばれる)。たとえば、Fig. 9a-dは分子量、logP、PSA、回転結合数と溶解度の5つのパラメーターで示したプロット。
 緑色の部分がドラッガブルレンジで、ブルーのペンタゴンがおさまっているFig. 9aがドラッグライクな化合物。Fig. 9bでは分子量や脂溶性が高く、逸脱した脂溶性でアラートの赤字で表示。Fig. 9c、9dはノバルティスの2000年中盤からのパイプラインの初期と後期のプロファイル。プレクリニカル、フェーズ1の時のFig. 9cに比べてフェーズ2のFig. 9dの方が市販薬のFig. 9aに近いプロファイルになっている事が理解できる。
 Fig. 10A, Bはノバルティスのライブラリーから3000化合物の物性をプロファイリング。ドットラインは分布。Fig. 10Bは数年前のライブラリーで、一般に言われているように分子量が大きく、脂溶性が高いが、一方で最近のFig. 10Aはドラッグライクな範疇にある。このように、バーチャルデザインやライブラリー用に化合物購入する際にレーダープロットをフィルターに利用する事で質を維持できる。なお、ノバルティスではGSKで実装されている改良版レーダープロットを利用しており、そこには分子量、溶解度、水素結合数に加えて、芳香環枚数を指標に利用し、グリーンゾーンに加えてボーダーラインのイエローゾーンを設けている。(Fig. 11)

・分子の「ヘルシー度」を信号パイチャートで表示:スーパーマーケットの食べ物の成分情報を信号機で表示しているように(Fig. 12右)、分子の物性パラメーターを「ヘルシー度」を示すように表示する方法(Fig. 12左)。食べ物の健康度とイメージが一緒なので、その重要性を認識するのに効果的。

・警告:視覚化ツールは創薬の意思決定を補助するものであるが、一方でシンプルで明快性への要望が計算や仮説に潜在的に存在する決定を覆い隠してしまう。たとえば、分子量500以下という明確なカットオフは分子量501も900の化合物と同様に切り捨ててしまう。ところが、実際には、分子量501は900とは異なり十分ドラッガブルなレンジに制御可能なサイズである。このようなカットオフにフレキシビリティを付与する為に、ボーダーラインのレンジを取り入れる事が可能である。また、logPやlogP、溶解度といったパラメーターは潜在的に誤差を含んでしまう。もう一つ重要な課題は、視覚化ツールが静的であり、構造が変わると新たに発生させなくてはならない。動的にオンザフライに仮説を検証できればより使いやすくなるだろう。また、クビキが指摘するように、経口薬のスペースに入っているものが必ずしも医薬品になるわけではない。遺伝毒性やオフターゲット、バイオアクティベーションのリスクのある置換基のあるものは医薬品にはなりえない。

百聞は一見にしかずという古い諺は医薬品創出の世界でも真実である。視覚化ツールのさらなる改善が期待される。
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テーマ : 科学・医療・心理
ジャンル : 学問・文化・芸術

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趣味で読んだ創薬化学論文を綴った日記。

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