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3つの知識、1つの教訓

Guay D, Beaulieu C, Truchon J-F, et al. Design and synthesis of dipeptidyl nitriles as potent, selective, and reversible inhibitors of cathepsin C. Bioorganic & medicinal chemistry letters. 2009;19(18):5392-6.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19665376.

システインプロテアーゼのカテプシンC阻害薬はDPP1としても知られ、その阻害薬の多くは活性中心と非可逆的に結合阻害するジアゾメチルケトン、ビニルスルホン、ヒドロキサム酸などが中心であった。メルクは、可逆的阻害薬を指向して、活性中心と相互作用するシアノ基を持つ化合物のデザインに取り組んだ。まず、内因性基質のαアミノアミドモチーフを持つ100化合物をライブラリー合成してスクリーニングし、11μMの活性を持つ化合物1を見いだした。シアノ基の導入により活性は200 nMに向上、さらにP2ポケット部分を最適化してチオフェンを有する6で5.8 nMの活性を示した。次にP1ポケット部分を最適化してインドールをフェニルに変えた化合物11で0.9 nMまで活性は向上した。しかし、これらの化合物は経口吸収性が認められず、それは酸化的代謝が原因ではなく、アミドの加水分解が原因と判明した。P1ポケットにイソプロピル、tert-ブチル基を有する化合物は活性が大幅に減弱するものの加水分解は抑制された。そこで、コンパクトでかつステリックなカテプシンK阻害薬でも利用されたシクロプロピル基に変換した。ここで得られた17は活性が12 nMと良好で、加水分解もほぼ完全に抑制された。シクロプロピル部分はジメチルやシクロブチルで活性は激減するので空間的にタイトだと推定される。シクロプロピルにフェニルを導入した23は活性が維持し、クリアランスも改善した。こうして見いだされた化合物も動態面ではまだ問題があった。そこで別途P2部分の最適化を検討した。1級アミンを閉環してピロリジンにした29では活性は4.8μMまで活性は減弱。しかし、フッ素を一つ入れるだけで40倍も向上した(化合物33)。さらにフェニル基を導入し、フッ素をメチルチオエーテルにした39で活性は1.7nMまで取り戻された。ただ、これと先に見いだされたP1部分を組み合わせてもミスマッチしてしまい、期待の化合物を見いだすには至っていない。

合成面で利用価値が高いのは、3置換シクロプロピルアミンの合成中間体がオキサゾロンとアルデヒドをクノーバナーゲルで縮合した後にシクロプロパン化、メタノリシスによって合成できる点。ベンズアミドとメチルエステルが1分子に存在しても、アミドのみをマーウィン塩、酸処理する事で選択的に加水分解できる点。シアノメチルアミンのBoc保護体はTHF中メシル酸で処理する事で分解物を与える事なく綺麗に脱保護できる点、など。

1)アミド加水分解が課題になった際にはステリックな置換基を導入する事で軽減させる事が可能な点、
2)カテプシンKの知恵をターゲット横断的に利用する効率的デザイン、
3)3置換シクロプロピルアミン合成法
は、他のターゲットを狙う際にも利用できるナレッジといえる。一方で
4)良い置換基同士の組み合わせで優れたものが得られると期待しがちであるが、むしろ機能しない事もよくあるという結果
も覚えておきたい。これは活性を議論する際にエンタルピーの寄与にのみ意識が向かいがちだが、活性の陰の主役がエントロピーである事を考えると理解できる。
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テーマ : 科学・医療・心理
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