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劇的!薬物設計ビフォー・アフター

Szewczyk JW, Acton J, Adams AD, et al. Design of potent and selective GPR119 agonists for type II diabetes. Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters. 2010.
Available at: http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0960894X10018500.

HTSから見いだした化合物1は直線状のビスピペリジン構造であり、活性は3600 nMと弱く、溶解度が低くタンパク結合率が高いといった物性面の悪さを持ち、マウスのクリアランスも高く、hERG阻害があり、薬効も弱かった。課題山積の最適化は、溶解度、hERGに対する選択性を獲得しつつ、ビボでの薬効を示す化合物の探索である。ここでのアプローチは大きく二つある。一つは、両末端の置換基に極性基や代謝安定性に優れた置換基を導入し、物性のhERG選択性を獲得するという方針である。もう一つは、新規母核の創出として、他社報告リガンドとの分子モデルと重ね合わせによって母核を変換し、そして側鎖を最適化するという方針である。

 ヒット1の左側ピリジンをフェニルにすると活性向上(2)、メチル基スキャンでメタ位、パラ位で活性は7乗オーダーに(4、5)、オルト位は許容されず。競合他社特許情報を元にメタンスルホニルを導入するとパラ位で活性は8乗に(6)(Table 1)。しかし得られた6は溶解度が悪い為にPKが低い。これの代替基は見つからず。フェニルを物性改善しうるヘテロ環に変換(13?21)、ピリミジン19でヒト、ラット共に活性は9乗の1nM, 2nMに到達。続いて代謝的に不安定と推測される右側Boc基をヘテロ環に変換(Table 2)。得られた27では確かにBoc体6に比べてクリアランスが低下し、血中濃度が向上している(Table 3)。最適化された化合物33?36は活性は8?9乗オーダーであり、35以外はビボで作用を示したが、hERG阻害を解決できなかった。さらに、物性面の低さが製剤的課題として浮上し、さらなる精査ができなかった。このような物性解決として、母核の変換によって根本的問題解決をはかる事とした。

新規母核にはフレキシビリティと非対称性を導入する事で物性改善を試みる事とした。単にピペリジン環を開いて直鎖にした化合物50は10乗の活性と良好な物性を示した。しかし、その後、同一化合物をクレームする特許が公開された為に、さらなる構造の変換の必要性に迫られた。母核をシクロプロパン化して固定化した系統からピコモルオーダーの活性とhERG選択性を獲得した化合物53を見いだした(Table 5)。さらにビボでの強力な作用獲得と溶解度とhERG阻害解決に向けて両末端の置換基を最適化した結果、Table 6に示す化合物58?61を見いだした。61ではMED 0.01-0.03 mpkというOGTT試験で強力な薬効を確認したが、イヌ心電図でQT延長が確認され、敢えなく中止。一方で、58ではビボでの薬効が示され、QT延長が認められず、175種類の受容体選択性が高かった事から、候補化合物に選定した。


合成面では、
・ビスピペリジンはBuchwaldもしくはSnAr反応で側鎖置換基を導入(Scheme 1)。
・ラセミ体シクロプロパン中間体のアルコールはScheme 2で合成。cisオレフィンはアルデヒドからジブロモオレフィンを経由し、アセチレンに変換して、リンドラー触媒で得る。Charatteシクプロパン化。末端アルコールのホモロゲーションはTPAP酸化、Wittig、ハイドロボレーション酸化。transオレフィンはホーナーエモンズ。
・光学活性なシクロプロパン中間体49は、光学活性なエポキシドを浸かってR体47を得、エナンチオ選択的Charetteシクロプロパン化、ジオールからアルデヒドを経由して合成(Scheme 3)。
・得られた中間体アルコールを光延反応で最終物へ変換(Scheme 4)。

活性も物性も低いボロボロのヒット化合物、普通なら目も背けたくなる構造からでも、ラショナルかつパワフルに最適化し、他社特許情報の活用、文献情報との重ね合わせを活かして新たな展開へとシフトする。競合激しく途中の化合物が特許でおさえられたとしても、さらなる作業仮説と強力な合成力で、特許性を獲得し、のぞみのプロファイルを示す化合物を見いだした。その研究戦略と成果は圧巻。結果論かもしれないが、アルキルエーテルが末端の環へと迂回するようなリンカーとして機能して、物性を改善していおり、ドラスティックな構造変換である。
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