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小さな変換の連続が骨格変換を呼ぶ

Yoon T, De Lombaert S, Brodbeck R, et al. 2-Arylpyrimidines: novel CRF-1 receptor antagonists. Bioorganic & medicinal chemistry letters. 2008;18(16):4486-90.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18672365

CRF受容体拮抗薬ではリガンドの脂溶性を低下させ、溶解度を改善する事が共通の課題となっている。これらを目的に、ニューロジェンから母核の変換、ドッキング、最適化を検証した興味深い報告がされている。ニューロジェンが先の報告で一つの環にファーマコフォアとなる置換基を集結させて見いだしたアリールイソキノリン構造1は、6nMの強力な活性を示すが、clogPが7.4と高く、溶解度も0.5μg / mL以下と問題があった。根本的問題解決の為に、イソキノリンの縮合ベンゼン環を除去し、シンプルなビアリール構造としてフェニルピリミジン構造2へと変換し、脂溶性を一挙に2軽減させ、分子量も50低下する事に成功した。

単純化されたこの化合物は、活性が100倍低下し561nMと弱い活性を残している。活性向上の方針として、サノフィーのSSR125543を利用したファーマコフォアモデルと重ね合わせから、ピリミジン4位方向に脂溶性ポケットが存在すると推定し、置換基探索を検証、メトキシ基で15nMと活性は40倍向上した。ピリミジン5位のメトキシと6位のアミンは電子的な反発が存在するが、これによる構造変化は活性に有益な効果をもたらすと推定している。ただし、メトキシ基の導入で、clogPは1.0向上してしまう。一方でピリミジン6位探索ではメチル基に変わる良い化合物は見いだせていない。最後に2位アリール部分の最適化によって、cLogPを0.5低減させ、活性もイソキノリン化合物1よりも強力な2nMの活性を示す化合物5gを見いだした。さらに、ピリミジン5位をアミンからエーテルリンカーに変えても活性は保持され、とりわけ脂溶性がclogP5.0と良好で、かつ活性も9nMと強力で、また、溶解度も28μg / mLと大幅に改善した化合物12bを見いだした。ただしこの化合物でも、動態面ではまだ不十分である。

母核の変換は活性が激減するので勇気がいる一方で、そこからうまく次々とベネフィットを引き出しており、「損して得とれ」「急がば回れ」「虎穴にいらずんば虎児を得ず」が想起されるような展開である。ニューロジェンは、2度に渡るホッピングの度に落ちた活性を再び取り戻す事で、最初のリードとは全く異なる単純化された化合物を見いだす事に成功したのである。

ここまで見てきたように、CRF受容体拮抗薬はクラスBGPCRに属する為に、そのリガンド探索は困難であり、初期の化合物の構造は多様性の低いものであった。その中で、製薬各社は、独自の作業仮説をたて、展開し、新たな骨格を導き出し、課題解決に取り組んで来た。確かに、CRF受容体拮抗薬の研究は、抗鬱作用が臨床で発揮されずに、ほとんど頓挫する結果となってしまったが、そこで示された研究プロセス、ナレッジはメディシナルケミストリーの叡智となって他の研究の糧になって生きずくに違いない。
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