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ナレッジベースデザインとリスク検証

Mascitti V, Stevens BD, Choi C, et al. Design and evaluation of a 2-(2,3,6-trifluorophenyl)acetamide derivative as an agonist of the GPR119 receptor. Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters. 2011.
Available at: http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0960894X11001119


 HTSで見いだされた化合物4は13 nMの活性を持つものの脂溶性が高いためか代謝安定性は低かった(Fig. 2, Table 1)。問題解決には、ナレッジベースのドラッグデザインが活かされる。

 まず、脂溶性低下を目的に左側トリフルオロフェニル基の変換を指向し、他社先行品MBX-2982やGSK1292263Aの部分構造メタンスルホニルフェニル基やテトラゾリルフェニル基を導入したが活性は減弱した(Fig. 1, Table 1)。よって、これら既存のケモタイプとは結合様式が異なると考えられる。また、トリフルオロフェニル基のフッ素のどれを外しても活性は減弱、ここの変換は無理と判断された。
 次に、酸性条件に不安定なBoc基をシクロプロピルメチル基に変換しても代謝安定性の改善は見られない。
 最後にアセタミドβ位のメチル基に着目した。受容体と相互作用しているとも推定されるが、その立体化学によって結合時の立体配置のエントロピーのペナルティを低減させていると考えるのが適当に思われた。そこで、N-β-フルオロエチルアミドがゴーシュ構造を安定化させるという知見を想起し、フッ素でのコンフォメーション固定化を指向した化合物3をデザインした。フッ素の入った立体中心は構造変化時のエントロピーのコンフォメーションや振動の要素にポジティブな効果を与えると期待できる。さらに、フッ素導入は脂溶性を低下させ、代謝安定性の改善が期待できる。この合成では、マクマリンの不斉フッ素化反応で98%eeで中間体18を得ているところが鍵となる(Scheme 1)。得られた化合物は80 nMのフルアゴニスト活性を示し、期待通り脂溶性は低下して代謝安定性は改善した。
 NMR解析からNMRタイムスケールより遅い平衡で75%の存在比率でゴーシュ構造をとっている事を確認した。フッ素エナンチオマー17で活性が減弱した事から、受容体側のトポロジーを不斉点で認識していると考えられた。また、フッ素のない21では活性が減弱している。コンフォメーション解析ではフッ素体3も21も類似のコンフォメーション分布を示した事から、活性値の違いは活性コンフォメーションをとれるかどうかのエネルギー障壁ではなく、二面角の捩じれエネルギーがフッ素体3の方が小さいと推定される。また、受容体側とのフッ素の相互作用も排除できない。
 化合物3はフッ素とアミドとの分子内環化でアゼチジン22やオキサゾリン23を構築しうると考えて、種々の条件を検討したが、これらの反応は進行しなかった。しかし、活性代謝物の試験では、トリフルオロフェニルの部分でイプソ置換反応が進行し、バイオアクティベーションによる毒性懸念が示唆された。

最適化において、活性を保持させて脂溶性低下させるという方針を設定し、1)他社の脂溶性低下できる置換基を導入、2)問題となる置換基を外して検証、3)メディシナルのナレッジを活用(フッ素の立体効果、電子的効果、脂溶性効果)、4)作業仮説をリファレンス化合物と比較して検証、5)懸念される副反応を検証、6)バイオアクティベーションのリスクの検証、と合目的的な変換とナレッジの活用によって最適化している。結果的には、外す事のできなかったトリフルオロフェニル由来のリスクに精査を続行できなかったのかもしれないが、結果はポジティブ、ネガティブに関わらず、ここで示すストラテジーによるディシジョンメイキングは質の高い判断と言える。
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