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内因性リガンドミメティックス

Sasaki S, Kitamura S, Negoro N, et al. Design, Synthesis, and Biological Activity of Potent and Orally Available G Protein-Coupled Receptor 40 Agonists. Journal of medicinal chemistry. 2011.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21319751

リードジェネレーションの多くは、フラグメントもしくはランダムスクリーニングによるヒット化合物からの最適化、もしくは公知化合物、特許化合物からの展開である。一方で、最も伝統的な合理的薬物設計の一つとして内因性リガンドそのものをリードに選択する方法がある。内因性リガンドからデザインする事は、同時に標的タンパクと内因性リガンドの相互作用様式を理解しうる事から、生理活性物質の生体機能を解明という点でも本質的である。よって、内因性リガンドからの合理的ドラッグデザインは、他とは一線を画すインパクトを持つ。ジェームス・ブラックのアドレナリンから導き出した狭心症治療薬プロプラノロール、ヒスタミンから抗潰瘍薬シメチジン、オンデッティのカプトプリルの創製がその代表例であり、いづれもノーベル賞受賞につながっている。一方でオーファンGPCRは、そもそも内因性の生理活性物質すらも不明のターゲットであって、これを追究する事は新たな生理活性タンパクの解明と治療標的を創出しうる。武田はこの研究に圧倒的な強みを持っており、ここで報告されているGPR40は武田がGSKとほぼ同時期に見いだしたオーファンGPCRである。武田の研究者は、既にGPR40の内因性リガンドとして長鎖不飽和脂肪酸(FFA)の可能性を推定しており、中でもDHAが1.1μMの最も強力な薬理作用を示す事を見いだしている。カルボン酸をエステル化すると活性は消失する。よって、DHAと受容体GPR40は、カルボン酸の水素結合とオレフィンのππ相互作用が受容体との結合に重要との仮説を立て、研究を開始した。まず、市販のアリールアルキルカルボン酸をスクリーニングし、フェニルプロピオン酸に100μMで弱い作用がある事を確認した。活性こそ非常に弱いもののリガンド探索のきっかけを見いだしたので、次にππ相互作用を期待して芳香環をリンカーを介して伸張、1bで510 nMまで活性が向上した。これをリードに、まず末端フェニル基上置換基をオルト、メタ、パラと探索(Table 1)、次にメタ位に絞って置換基探索(Table 2)、オルト位にジメチルを有する6iで活性は強力な8.8 nMにまで向上した.この際にポイントとなっているのは、BSA添加時のセラムシフトが平面性の高い無置換ビフェニルでは高いのに対して、オルト位に導入した置換基がビフェニルの二面角を大きくしてセラムシフトを小さくし、アゴニスト作用に寄与しているという点である。この段階で改めてリンカーXを変換したが、アルコキシリンカーがベスト(Table 3)。しかし、代表化合物6iは経口吸収性が低く、その要因はフェニルプロピオン酸のβ酸化と推定されたので(Fig. 3)、これをブロックするアプローチをし、アルキルリンカー上の置換基導入は活性が低下したが、フェニル基上のオルト位にフッ素を導入した4pのみで活性向上と経口吸収性改善が認められ、ビボでの薬効を確認した(Table 4)。

創薬ターゲット枯渇と言われる中で、1製薬企業の研究所が、未知のターゲットを同定し、バリデーションし、内因性リガンドを探索し、ドラッグデザインして薬効を確認するに至った。この成果は、後に武田が世界に先駆けて臨床試験に持ち込んだTAK-875に至る重要なマイルストーンとなった。極東の1製薬企業が世界に誇れるイノベーションを顕示し、そのプレゼンスを示した成果である。
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