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別ケモタイプで課題克服

Barrow JC, Stauffer SR, Rittle KE, et al. Discovery and X-ray crystallographic analysis of a spiropiperidine iminohydantoin inhibitor of beta-secretase. Journal of medicinal chemistry. 2008;51(20):6259-62. Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18811140.


メルク社のBACE阻害薬として、クラシカルな遷移状態アナログから展開したターシャリーアミン系統とは異なる別ケモタイプ/スピロピペリジン系化合物の誌上発表。BACE阻害薬は、HIVプロテアーゼやレニン阻害薬同様にアスパラギン酸プロテアーゼに属し、その阻害薬は、遷移状態アナログをミミックした化合物が多い。ところが、同時にそれらは中枢移行性獲得が困難である、といった問題を抱えていた。全く違うケモタイプをリードに展開したい場合は、HTSに頼るところであるが、BACE阻害薬は、アスパラギン酸プロテアーゼの中でもとりわけヒット化合物の見いだしにくいターゲットでもある。メルクで最初に10μM濃度でスクリーニングしたところ、ヒットは得られなかった。そこで、さらに一桁弱い100μM濃度でスクリーニングしたところ、22μMの弱い活性を有するスピロピペリジン1がヒットした。この化合物は、ロッシュのレニン阻害薬2と同様にピペリジンを有している。化合物1は活性が弱いためか、共結晶が得られなかったので、簡単な最適化によって活性の向上を期待した。スピロピペリジン構造はウギ4成分反応によって構築する事ができる。最適化の結果、2.8μMの活性を有する16を見いだし、共結晶によるX線結晶構造解析を行う事ができた。驚くべきはピペリジンが活性中心のアスパラギン酸と水を介した水素結合をしている点で、ダイレクトに相互作用しているロッシュ社のレニン阻害薬との大きな違いとなっている。この化合物は、Pgp基質となって中枢移行性が低いので、水素結合ドナーアクセプターとなっているアセタミド部分を除去し、S3ポケット方向にベンゼン環を連結したところ、Pgp基質を回避し、活性はサブマイクロオーダーまで向上した。また、このケモタイプはCAD構造であるにも関わらず、hERG阻害で問題がない。

最終的なゴールがナノモルオーダーであり、しかも既に自社で分子量400オーダーでナノモルオーダーの活性を示す化合物を持っていた場合、なかなか100μMからヒット化合物を探索するのは気が遠くなる作業に思える。一方で新規ケモタイプには、従来のケモタイプではクリアできない課題を克服できる可能性がある。メルクではBACE阻害薬が魅力的テーマである事から、極めて弱い活性からでも、新たなリードを見いだし、最適化へと踏み出した。その結果、Pgp基質とhERG阻害回避という点で従来のケモタイプの課題を克服するという大きなベネフィットを引き出した。ピペリジンはアスパラギン酸プロテアーゼ阻害薬のモチーフである事もきっかけの一つであるが、メルクがかつてより強みにしていたプリビレッジド構造のスピロピペリジンを持っていた事も展開性の鍵になっている事は特筆すべき点である。
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