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伝統的手法で挑戦的方針を

Lerchner A, Machauer R, Betschart C, et al. Macrocyclic BACE-1 inhibitors acutely reduce Abeta in brain after po application. Bioorganic & medicinal chemistry letters. 2010;20(2):603-7.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19963375

昨日にも紹介したとおり、ノバルティスでは、ペプチドから驚異的な低分子化を達成したが、そこで見いだした化合物1は、遷移状態アナログのヒドロキシエチルアミンが抱えるいつもの問題、Pgp基質になる事での脳内移行性の低さを課題として有していた。まず、ペプチド構造の脱却の為にP1部分とP2アミド部分にベンゼン環を挿入、さらに最適化を検討した。アミンの塩基性に対して活性値は相関するが、Pgp基質と、膜透過性は塩基性に逆相関し、このジレンマの為に有用な化合物を見出すのに手こずったが、シクロプロピルアミンタイプの3つの化合物で両立させるバランスの良いプロファイルを示した。これらはカテプシンD、Eに対する選択性が低く課題を残しているものの、30 mg / kg程度の経口投与で脳内βアミロイドを74%も減弱させる事に成功した。

ペプチド性リガンドからの低分子化は、古くはGPCRの内因性リガンドを元に行われる事がほとんどであったが、ここではBACEというアスパラギン酸プロテアーゼをターゲットに実践した。少なくともここでのプロセスでHTSは全く利用していない事が特筆すべき点である。一般的に、最適化研究で低分子化は容易ではない。その事を踏まえた上で、ノバルティスの研究者は、ペプチドから活性に必須の最小有効部位を特定し、一度落ちきった活性をマクロサイクル化を鍵工程に活性を高め、Pgp基質を塩基性の調節によって回避し、見事に経口吸収性と脳内移行性を担保した低分子リガンドの探索に成功した。巨大分子をリードにデザインするという方針は、SBDDのアスペクトからは常軌を逸している。LEやLLEを指標にしていては決して採択できない。しかし、そもそも定石どおりにやればうまくいく程、創薬の方法論は一般化されていない。イノベーションはいつも「過去に例がない」のであって、「一度しか起こらない」のである。イノベーションはレトロスペクティブな振り返りでしか考察できない。そして、それをマネすれば、イノベーションが起こせるというわけでもない。創薬に過去の成功体験が何の参考にもならないように、一般論だけで攻め続けても薬はでない。ここでは、方法論こそ伝統的であるが、その挑戦的な方針がイノベーションの引き金になっている。
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趣味で読んだ創薬化学論文を綴った日記。

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