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リーンシックスシグマ:PJ推進に適用

Walker SM, Davies BJ. Deploying continuous improvement across the drug discovery value chain. Drug discovery today. 2011.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21443967

アストラゼネカでのリーンシグマをとりいれた研究戦略。創薬での成功確率と生産性の継続的改善(CI)の為に、リーンシグマ法を応用し、POC獲得の確度を高める事に成功した。この報告はその成功体験と学ぶべき事を共有する事を目的としている。リーンシグマをプロジェクト運営に利用する事で、常に患者の為に何が必要かという顧客志向に立ち返る事を徹底させた。本来製薬企業であれば当然の事であるが、実際には研究から上市までが余りにも隔たりがある為に、研究に顧客志向を繋げて考える事は極めて困難となってしまう。しかし、リーンシグマの考え方はそれを可能たらしめた。そして、癌のプロジェクトにおいて、数々のステージで生産性改善に成功した。具体的なノウハウが紹介される事はないが、 要の一つは、リーンシグマの専門家をプロジェクトメンバーに入れている事であろう。リーンシグマを創薬に応用する事の有用性を確かめる事ができる。


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1)配置方針:しかるべき人選
継続的改善のプログラムとして、疾患領域として癌を選び、POC取得の成功確率の向上を目指した。ここでの課題は、スタート段階でプログラムを推進する事のできる適切なプロジェクトと適切な人選である。継続的改善(CI)の為の人選として、

CIプロジェクトを推進しマネージできる人
プロジェクトを管理できるリーンシグマ専門家
各階層に進捗と成果を情報伝達できる人
スポンサーとリーダーからの提案を決定できる人

をクライテリアに設定、この際には研究所文化に通じた人選も考慮した。


2)配置方針:しかるべきプロジェクトの選定
創薬を成功させる為に、その全体像としてFig. 1に示す価値の連鎖を想定した。

Fig. 1:創薬は上位概念の1)疾患領域戦略と2)プロジェクトポートフォリオがA)戦略の価値を生み出し、中位概念の3)プロジェクト推進がB)プロジェクトの価値を生み出し、下位概念の4-5)生産工程がC)プロセスの価値を生み出す。創薬研究では、5階層のコンセプトが鎖でつながるように関係づけられ、A-Cの3つの価値の歯車がかみ合う事で臨床でのPOC取得への生産性が改善する。ここでは採算性を継続的に改善する為に、中位概念の3)プロジェクト推進にリーンシグマを適用する事にした。この階層に着目した狙いは、上位、下位への波及効果が期待できるからである。リーンシグマの活用によって、「適切な化合物」「適切なターゲット」「適切な疾患」を選出する。

チームは、顧客データと成果のデータを得る事ができる。顧客の調査結果を創薬プロセスに落とし込み、プロジェクトの成果の指標(PJのタイムラインと摩耗率)によって、プロジェクトを成功する為の質とスピードを把握する事ができた。候補化合物創出への時間を短縮し、POC取得するという戦略的目標に向け、解決すべき課題は優先順位が付けられ、価値の連鎖のシート上に展開された(Fig. 2)。

3)最適な手法(リーンシグマの改良)
リーンシグマは本来、生産工程に適合しているので、そのままでは研究開発には利用できない。研究開発を継続的改善させるにはリーンシグマを研究仕様にして利用する必要がある。
(i)顧客視点で価値を明確化:ターゲット選定ー顧客にとって創薬ターゲットの重要な要素は何なのか?
(ii)価値の連鎖を確認し、価値のない不必要な活動を排除:PJ意志決定ーPJレビューの過程をマップ化。何も利益のないミーティングをしていないか?重複はないか?
(iii)顧客とパフォーマンスデータの利用:ターゲット選定ー顧客とプロセスデータがどのターゲットを選ぶべきかを決定。
(iv)顧客にとっての価値の流れ:PJ意志決定ー創薬化学者がリード化合物を吟味。
(v)研究者の関与、調整、権限委譲:DMTA(デザインー合成ー評価ー解析)ー多様な専門性を持つサイエンティストがDMTAサイクルを行う事での継続的改善
(vi)最高レベルに向けた絶え間ないナレッジの向上:DMTAーさらなる改善に向けたDMTAサイクルでのデータの把握と追跡

4)生み出された変化
リーンシグマを応用して適応疾患を癌に創薬のプロジェクトに適用した。ターゲット選定はプロジェクトの質を決定するドライバーになるが、全ての場合においてほとんどパソーマンスのデータはない。ここでは、Fig. 2のように顧客志向のアプローチを取り入れた。従来の創薬では、研究者の「良いアイデア」に基づくテーマ設定であったが、顧客志向はレビュー過程を従来の3-12ヶ月を3ヶ月以下にまで短縮させる事に成功し、ポートフォリオの必要条件と提案されたターゲットは100%合致した。
DMTA(デザインー合成ー評価ー解析)ではサイクルタイムの短縮が鍵になる。平行して進行する3つのプロジェクトで、異なるバックグラウンドを持つメンバーの交流がサイクルタイムの50%短縮に寄与した。

Fig. 2:矢印:質とスピードの改善(緑色:生み出される成果、赤色:それによって期待される成果)。

・プロジェクトの選定:研究者のアイデアベースから脱却、顧客志向を軸にする事で、ポートフォリオの必要条件を満たすターゲットのみを選出、レビューのサイクルを3-12ヶ月から3ヶ月以下に短縮、ポートフォリオと仮説からPJの摩耗率を30%低減。
・プロジェクト意思決定:顧客志向により、プロジェクトの計画と問題解決の質を向上。無駄なミーティングを25%削減。
・DMTA(デザインー合成ー評価ー解析):スピードと質、成果につながるデータにフォーカスする事で、サイクルタイムを50%削減。ビボ試験数を低減。デザインの質の向上。
・研究/開発の連携:顧客志向により、全てのプロジェクトがリード最適化の終了時点で化合物開発の概要を有している。開発計画をサポートするに足るデータが得られず失敗するプロジェクトは10%以下になる。ヒトに投与するまでのリード最適化の時間を短縮できる。

Fig. 3:目標はPOC取得の向上である。プロジェクト、プロセス、戦略の3つの価値が全てが揃わないと成功しない。ここでは中間層の価値であるプロジェクトにフォーカスし、リーンシグマの考え方を取り入れて、継続的に生産性を改善させた。結果として、プロセス、戦略の生産性も高まり、3つの歯車はPOCという大きな歯車を動かし、イノベーションという歯車を突き動かす。

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テーマ : 科学・医療・心理
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