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ボトルネックは研究者の自惚れか?

Edwards M, Tramontin T, Simon D, Dhankhar A, Sheikh M. Managing the health of early-stage discovery. Nature Reviews Drug Discovery. 2011;10(3):171-172.
Available at: http://www.nature.com/doifinder/10.1038/nrd3388

本報はマッキンゼーによる製薬業界のボトムアップからの生産性向上を目的にした調査結果であるが、そのオチはシニシズム的だがデータに基づいているだけに笑えない。つまり、多くの研究者は自分の研究所は能力ある人材が少ないと評価しながら、一方で”自分だけ”は優秀だと信じているのだから。この”自分は優秀”、”自分は特別”、”あいつはダメ”という独善的な自惚れ集団が生産性を落としている最大の要因ではないかとさえ感じてしまう。

この調査から言える事は、世界のどの研究所でも個々の研究者の高い能力が求められている、という事。どんな仕組みやシステムを作ろうとも研究者の創造性がなければ新しいものは生まれない。如何にして有望な人材、能力、パーソナリティに優れた研究者を登用できるか、育てる事ができるか、逆に個々の研究者は自分の専門性を磨き、自らの強みは何なのかを示し、パフォーマンスをあげていく事が成果につながる。世界的に就職難、リストラの嵐の時代とはいえ、能力ある人材は求められ続けている。有能な人材を惹き付ける方法の一つは報酬。誌上発表は結果に対する報酬の一つであるが、意外にもこれを満たしている研究所は世界的にも僅かに17%である。毎日更新されるパブリケーションも、その所属機関はいくつかの名の知れたところばかりで数える程しかない事実と一致する。その他多くのマジョリティの研究者は、フラストレーションを感じているようである。また、研究者の社内育成制度が重要視されているのは意外な結果。プロの研究者であれば自ら進んで技術を盗みにいくくらいのアクティビティで成長していくべきものと思いがちであるが、むしろ世界的に教育プログラムを確立する事が意識されている。今まで個人任せになりすぎていた欧米にあって、研究者の質を揃えたいという事なのか?採用時に試用期間で既存メンバーから意見聴取するのは、応募者の能力を知るのに良い方法であり、4割程度の研究所が利用している採用手法である。日本のように30分前後の面接で判断するよりもミスリードが低いシステムかもしれない。共同研究に関しては日本だけが閉鎖的に思えるが、世界的にも奨励されているのは僅かに22%で、一般的に閉鎖的、保守的体質と感じているようである。一方で、研究所の戦略は最も納得感を持って受けとめられている要素であり、世界的にはその重要性が理解されて成熟しているようである。PJマネージメントと研究者個人のアイデアという相反する要素を如何に共栄させるかは今でも大きな課題である。ポートフォリオに関しては、成果の出せないプロジェクトの中止が最も質の高い判断であるにも関わらず、それを実践しているのが31%というのが、如何に研究者の拘りと未練が判断を迷わせるかという事を示している。また、問題解決には作業仮説ベースで熟考する事が重要であるにも関わらず、日々の質の低いルーチンや雑用に負われて時間をとれていない、それらを削る事が出来ていないのも世界共通。「わかっちゃいるけど、やめられない」、質に重点をおく事が如何に意識改革して取り組まないと実践できないかがよくわかる。



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医薬研究では生産性は依然として重要な課題である。経営者は研究生産性向上の為に、組織の再編、投資する疾患領域の再重点化、新規技術への投資といった種々のアプローチをとっている。これらの「トップダウン」型アプローチは様々な形で成功をおさめてきたが、研究マネージャーは同時に各々の研究者の生産性のレベルにおいて、「ボトムアップ」型アプローチにも同様に焦点をあてるべきである。ここでは、研究所の生産性の違いが主に何に起因するのかを理解する為に、コンサルタントのマッキンゼーが世界のトップ研究機関のリーダーを選出してインタビューした。マッキンゼーでは、アカデミアと企業の研究所に共通して分野を問わず存在する60以上の課題を見いだし、247機関の4300人以上の研究者からどの要素が研究所パフォーマンスに影響しているかを調査した。

決定的成功要因
分野、大学、企業を問わず、最も生産性に関与している5つの要素として「才能」「共同研究」「戦略/役割」「ポートフォリオ/PJマネージメント」「問題解決」が挙げられる。

才能:ここでの才能とは魅力度のみならず自らのキャリアパスをマネージできるかも含まれ、研究生産性には重要な要素である。それにも関わらず、調査結果で5つの要素の中でも27%と最も低く(Fig. 1a)、多くの人が研究所の最も解決すべき課題であると感じている事が理解できる。よって、人材開発と採用は最重要課題であり、明確な報酬と成果に対する対価によって報いる必要がある。優良な研究所は一定の達成に対して、ジャーナルへの投稿を認めるといった報酬を与えるのであるが、こういった報酬は全体の研究所のうち僅かに17%しか満たされていない(Fig. 1b)。トップレベルの研究所は長期間成果を出さない事を許容せず、パフォーマンスの低い研究者が改善する努力をしないならば、リストラの対象となる。優良な研究所は、全研究者に人材開発計画を求め、それらは毎年見直される。さらに、プログラム化された社内教育制度に加え新人実習を提供している。マッキンゼーの調査で、36%の研究所が新人実習を行っているが、長期間の社内教育を実施しているのは23%にとどまる。優良な研究所では、採用過程でチームの判断も組み込む。たとえば、応募者をその研究チームで試用期間として仕事をしてもらい、そのインプットを採用の決定に盛り込むのである。この制度は39%の研究所が採用しているが、実際に研究チームに発言権があるのは22%にとどまる。

共同研究:優良な研究所は、内外問わずに共同研究を奨励し、問題解決の可能性を最大化するように努めている。共同研究は戦略に次いで研究所が取り組んでいる要素として評価されている(Fig. 1a)。研究所内での共同研究はチーム間の交流を最大化し、問題解決のアイデア交換を加速する。お互いの文化の共有を奨励しているのは44%程度、共同研究を改善する為に定期的なミーティングをする事は70%が同意している。研究所外での共同研究は大きな課題の解決に効果を発揮するが、外部でのイベント参加を奨励している研究所は38%、さらに共同研究となると僅かに22%。優良な研究所では同窓会などのつながりを利用してうまく内外の共同研究を実施している。

戦略/役割:トップレベルの研究所は戦略が明確で、組織全体における戦略の目標の中での役割が明確。その戦略がリソースの配分や新規な能力をどう再配分するといった日々の決定をよりよりものにする。研究所における戦略は、透明性を生み出し、解決すべき主たる科学的問題の解決法を共有させる。優良な研究所では、競合に打ち勝つ為の新規技術を常に探索している。

ポートフォリオ/PJマネージメント:トップレベルの研究所では、ポートフォリオ/PJマネージメントをマネージやレポートのみならず、イノベーションのサポートとしての役割を果たしている。ステージゲートとディシジョン・クライテリアによって、プロジェクトのゴール、成果、期日を運営。プロジェクトと全体のポートフォリオを継続的に順位づけし、リソースの配分を最適化。しかしながら偉大なるサイエンスは積極的にマネージできないし、研究者は自身の意志や希望に自らの身を委ねるものなので、このような経験や直感的なものとポートフォリオ/PJマネージメントは相容れない。重要な事は、イノベーションをはぐくむ環境の中でプロセス管理が共栄するように運営する事である。一例としては、喫緊の課題に研究者が集中的に対応する事で、個人的な興味のプロジェクトにもリソースを配分できるようにする、といった具合にである。優良な研究所では、結果の出せないプロジェクトは如何なる場合もできるだけ早く中止しようと努める。進捗のないプロジェクトにリソースをあてがう事は他のプロジェクトにも悪影響するからである。それにも関わらず、僅か31%の研究所しか中止決定した後でさえ、本当に完全に中止できないのである。

問題解決:問題解決能力は研究の成功の為に最も重要な要素であるが、十分な時間がとれていない事が多い。優れた研究所では問題解決は作業仮説ベースで行う。そして、失敗から学ぶ事に時間を費やす。マッキンゼーの調査では、35%の研究所が問題解決の為に1週間に数時間は費やしており、51%が作業仮説ベースのアプローチの価値を認識している。しかし、積極的に問題解決の為に時間を費やしているのは16%にとどまっており、いたずらにルーチンで繰り返しの質の低い作業に時間をとられてしまっている。失敗実験から学び、再考するのに十分な時間をとっているのは、僅か18%の研究所だけである。優れた研究所は生データをじっくり考察し、他の研究所のリーダーやチームを招聘して意見をあおぐ。失敗実験から学び、組織全体で共有する。


60の研究所からインタビューしたところ、より成果のあげる研究所は5つの要素全てでベストプラクティスを実践しており、特に才能に関しては他の要素を上回る(Fig. 2)。自己採点によるトップ10のベストパフォーマンス研究所は、ワースト10に比べて平均して8つの行動で高い評価をつけている。トップ10のパフォーマー達は、彼らの行動の改善の必要性をほとんど感じていなかった。

マッキンゼーでは2000年から2010年までに主要な賞を受賞した290人の研究者のH-インデックスを調査したところ、上位4分の1は下位4分の1より少なくとも4倍の生産性があった。一方で企業での生産性は一貫性、機密性の問題で評価するのが難しい。しかし、企業の研究者は、自分の能力・仕事ぶり・功績・行動に対してあまりにも楽観的すぎるように考えているようである。なぜならば、実に70%の研究者が自分たちが上位4分の1で働いていると信じているからである。



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趣味で読んだ創薬化学論文を綴った日記。

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