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テザリングでフィッシング2

Erlanson DA, Arndt JW, Cancilla MT, et al. Discovery of a potent and highly selective PDK1 inhibitor via fragment-based drug discovery. Bioorganic & medicinal chemistry letters. 2011.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21459573

PI3KシグナルパスウェイとしてPI3KやAktはかなり検討されているが、PDK1はほとんど検討されていない。実際にサネシスの研究者がスタートした時点ではほとんど報告例もなく、現在の報告化合物も選択的なものは少ない。ここではサネシスの得意とするフラグメントを酵素とジスルフィド結合で連結させる「テザリング」を利用したリガンドデザインを報告している。この手法の特徴はX線結晶構造解析が利用できる点と、ジスルフィド結合がなければ極めて弱いヒット、もしくはほとんど活性のないヒットを起点としてデザインできる点にある。サネシスではリガンド探索が極めて困難と言われるアスパラギン酸プロテアーゼのBACE阻害薬においても、この手法によってユニークなリガンドフィッシングを報告している。ここではさらなる応用として、既知リガンドを「エクステンダー」としてチオール結合で用意しておき、そこに結合しうるフラグメントをフラグメントリンキングでフィッシングする。この手法はオーロラキナーゼでも利用しているが、ここでそもそも報告例の少ないPDK1にも応用できる事を示した事でその有用性を証明している。
まずエクステンダーとして、キナーゼのプリン結合サイトもしくはヒンジバインダーであるジアミノピリジンを用意(Scheme 1(1)(2))。結晶からピリミジンNHがSer160と水素結合して相互作用(Fig. 1)。次に3000種類のテザーをスクリーニングし、活性の増強したフラグメント(4)がリンクした(5)を見いだす。ジスルフィド結合を安定なアルキルにした(6)でマイクロオーダーの活性を示した。アルキルリンカー長を検証したが見つかった6が最適(Table 1)。ピリミジンはアミンのオルト位に水素結合アクセプターが必要(Table 2)。ピリミジン置換基としてメトキシ基18で若干活性向上。ピリドン側鎖はジフルオロフェニル基(24)で若干活性が改善。

ここまでの一連の側鎖変換では活性が大して上がらないので、サネシスの研究者は失望感を味わう事になる。オーロラで成功したリンカーを芳香環で固定化する方法はことごとく失敗した。PDK1との共結晶もまだ得られていなかった。このような状況にあって、モデリングを組む事でデザインの方向性を定める。想定されたのは、キナーゼバインダーがヒンジの奥の方に外れていて立体的に込み入った部分にはまっている事である。これを解消し、ヒンジに適切に結合するように、アミノピリミジンのドナー/アクセプターと二つのアルキルリンカーをベンズイミダゾロンに組み込んだ26をデザインしたところ、活性は一挙に50倍以上向上して8乗オーダーとなった。最後にエチレンリンカー上置換基を探索、DFGアウトの脂溶性ポケットを埋め、得られた33は2-13 nM、細胞系活性もサブマイクロオーダーまで向上し、その結合様式は共結晶から確認された(Fig. 2)。241種類のキナーゼに対して10μM濃度でMuskに98%阻害するもののそれ以外は強く作用はしていない。PKが悪いがビボでも薬効を確認している。


1)フラグメントをタンパクとチオール結合させる、2)フラグメントリンキングさせる、3)切り離す、という手法は2000年代にアボットのハジャックらによって提唱されていた。しかし、当時はリンキングを確率論に頼るしかなく、3段階を経るくらいならHTSの方が早いので、HTSに競べてアドバンテージのない方法論であった。しかし、高速結晶構造解析技術のおかげでフィッシングしたリガンドの結合様式を確認する事ができ、その後のデザインの方向性を示す事ができるようになった。HTSでは検出できない弱いリガンドも抽出できるのでHTSに対してアドバンテージがある。フラグメントリンキングもステップワイズにつなぎ合わせるので効率が良い。こうした既存の手法に比べて優位性は、確かにリガンドの少ないPDK1で選択的リガンドを見いだすという成果によって実証された。2010年代に報告されたリガンドとも明らかにケモタイプは異なる。ただ、唯一のネックは、二つのフラグメントをリンキングする事で、分子は横長に大きくフレキシブルで代謝を受けやすいリンカーを潜在的に有してしまう点である。ここでは、アミノピリミジン構造からのホッピングが功を奏したが、どうしてもデザインに飛躍が求められる。
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