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対処療法がイビツな分子を

Qian Y, Wertheimer SJ, Ahmad M, et al. Discovery of Orally Active Carboxylic Acid Derivatives of 2-Phenyl-5-trifluoromethyloxazole-4-carboxamide as Potent Diacylglycerol Acyltransferase-1 Inhibitors for the Potential Treatment of Obesity and Diabetes. Journal of medicinal chemistry. 2011.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21413799

DGAT-1阻害薬はノックアウトマウスの結果から抗肥満作用やインスリン感受性改善が期待され、過去に報告された化合物1ではビボで薬効が確認されている。カルボン酸系化合物としてバイエルから2が報告。バイエルの2をアミノベンズイミダゾール部分をフェニルウレアに開環した4がアボットより報告。また、別系統カルボン酸としてJTから3が報告。JTのシクロヘキサン部分をビシクロ環に変換した5がアストラゼネカ、JTの縮環部分を環拡大して開発候補としたのがファイザーのPF-04520110である。
ロッシュではヒット化合物として6Aが得られていたがヒドラジン由来と思われるPKの悪さで検討中止。一方で別ヒットのアミド系6はPKが良いがhERGが課題。側鎖の変換でhERG阻害回避を目指して29を導くまでの経緯を報告。Table 1のSARで意外なのは、右側ピリジンを脂溶性の高いベンゼンに変えた10でhERGが改善している点、これはその後のTable 2のSARでも同じ。側鎖のメトキシエチル基Aを巻いたBで大した効果なし、極性基CはhERG低減、塩基性低減するDで大した効果なし、カルボン酸EはhERG激減するが極性が高すぎるせいか(log D = -0.9)、膜透過性悪く細胞系活性がない(化合物14)。Table 2で右側側鎖をリジッドなピペラジン、ピペリジンで再探索(Table 2)、化合物23、24でhERGを軽減し活性を保持したが、PKが悪い。PK改善の為に再びカルボン酸を導入。化合物29がベストプロファイルで、in vitroのADMEToxプロファイルに優れ、ビボで薬効を確認。

活性を追い求めて最適化を進めたその構造に手を加えて再考する事はなかなかできない。よって、仕上げられた化合物にhERG阻害のようなオフターゲット活性がついて来てしまうと、どうしても側鎖の変換で回避したくなる。hERG回避といえば伝家の宝刀カルボン酸である。しかしながら、カルボン酸の導入はhERGを回避する一方で極性が高まって膜透過性低下という新たな問題を発生させる。分子に剛直性を与えてhERGを回避しても、今度はPKが悪化するという新たな問題が発生する。PK改善に再びカルボン酸を導入し、なんとかバランスをとって出来た構造は、ズラズラと並ぶ脂溶性置換基の末端に核弾頭の如くカルボン酸がついている。カルボン酸は極性が高い。膜透過性を改善する為には脂溶性を付加しなくてはならない。脂溶性の高いカルボン酸は蓄積性を示して毒性につながる。そんな古くから知られるシンプルな特性も、カルボン酸がin vitroのADMEToxをクリーンナップしてしまうので、研究者を錯覚させてしまう。1990年代後半はin vitroスループット技術とコンビケム合成の発展で、活性を追い求める暗黒の時代であった。その反省として、2000年代前半に構造物性相関を軸にしたProperty Based Drug Designが隆起するのであるが、それらは、おおよそ薬の姿とは呼べないイビツな化合物を生み出してしまった。どれほど精度の良いガイドラインを作ったとしても、セイフティ・ネットになる事はあっても、薬に導いてくれるものではない。創薬の羅針盤は、研究者自身の内にしか存在しえない。
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趣味で読んだ創薬化学論文を綴った日記。

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