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マクロサイクル、グレイトサイクル!

Marsault E, Peterson ML. Macrocycles Are Great Cycles: Applications, Opportunities, and Challenges of Synthetic Macrocycles in Drug Discovery. Journal of Medicinal Chemistry. 2011:110307174342025.
Available at: http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/jm1012374


マクロサイクルレビュー。創薬におけるマクロサイクルは、大きく二つのカテゴリー、1)天然物、2)ペプチドに分類できる。天然物マクロサイクルは、化合物原体がマクロサイクルでそのまま使われる事が多いが、ペプチドの場合は、コンフォメーションを固定化して活性を向上させ、極性を低下させ、ペプチド加水分解を受けにくくする事でドラッガビリティを向上させる。どちらのカテゴリーも既に豊富なレビューが報告されている。
ここではマクロサイクルを12原子以上の環状構造と定義し、メディシナルケミストリーでの応用にフォーカスをあてる。マクロサイクルは分子量が大きく、水素結合ドナーアクセプター数は増え、PSAは大きくなる為に良好なPK-ADMEのドラッグスペースからは外れていると考えられがちである。しかし、重原子数が同じ分子で比較すれば、マクロサイクルは回転結合数が少なく固定化されたコンフォメーションは活性と選択性を獲得し、経口吸収性は改善できる。一方で、マクロサイクルは合成法に課題があり、高度希釈条件を必要としたり、そもそも合成法が設定できない場合もある。

このレビューでは、最初に創薬化学でのターゲット毎のマクロサイクルを、次にマクロサイクルの合成法にフォーカスをあてる。コンフォメーション固定化という観点では、活性、選択性、代謝安定性の改善、ファーマコフォアの同定、新規構造の創出でアドバンテージがあるが、このような一般論を超越し、マクロサイクルはヒットの出にくいノンドラッグブルで難易度の高いターゲットクラスでブレイクスルーを引き起こし、また分子量の大きな内因性リガンドからのミメティックスによるドラッグライクネス付与といった、リガンド創出において重要な役割を果たしており、薬物設計のセントラルドグマとなっている事は間違いない。


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2.1マクロサイクル酵素阻害薬
プロテアーゼ阻害薬では、マクロサイクルによってコンフォメーションを固定化して活性を向上させ、極性を低下させ、加水分解耐性を向上させる効果を期待する。また、プロテアーゼは一般にβストランドを認識しており、この二次構造ミミックが阻害薬のデザインに利用される。その事例として、ACE阻害薬1(K13)、アミノペプチダーゼB阻害薬2(OF4949-IV)、HIVプロテアーゼ阻害薬3がβストランドミミック。

2.1.1レニン阻害薬
低分子リガンド探索が困難なレニン阻害では、その初期の研究では唯一の基質であるのがアンジオテンシノーゲンペプチド4から展開された(Fig. 2)。初期にはP2-P1の環化体5-7がマイクロオーダーの阻害薬として見いだされた。ペプシンやカテプシンDといったアスパラギン酸プロテアーゼに対する選択性を獲得し、キモトリプシンに対する加水分解耐性を得た。P4-P2マクロサイクルでは8のように活性は0.29 nMと非常に強力。P2-P1'マクロサイクルを検討し(9)、ラクタムのシャッフル(10)、ラクトン(11)へと変換し、活性は1.3 nMに向上した。ラクトンでも容易にマクロサイクル形成によって加水分解を受けにくい。化合物11はもはや元のアンジオテンシノーゲン4の構造をほとんど残しておらず、低分子化に成功し、経口吸収性を獲得している。実に20年以上も前に検討されていたこの研究(1992年に報告)は、後のアスパラギン酸プロテアーゼ阻害薬に共通の重要なモチーフである遷移状態ミミックの先駆け的研究となった。そのケミストの担当者は、後のセリンプロテアーゼDPP4阻害薬でMK-0431(ジャヌビア、シタグリプチン)を創製したMerckのAnn E. Weberである。

2.1.2.NEP阻害薬
亜鉛メタロプロテアーゼであるNEPの阻害薬において、直線状の遷移状態ミミックのサーモリシンのX線結晶構造からマクロサイクル12はデザインされた(Fig. 3)。経口吸収性獲得の為にダブルプロドラッグ化したのが13(CGS-25155)である。マクロサイクルでもフェニル基上の置換基をオルトにした14はNEP選択的、メタにした15でACEとのデュアル阻害薬になり、マクロサイクルの固定化の方法を変化させて選択性をファインチューニングする非常に優れた成果である。


2.1.3.トロンビン阻害薬
 トロンビンはセリンプロテアーゼである。高活性な直鎖状阻害薬16のX線結晶情報を元に、P1-P3を環化したマクロサイクルにした17は、活性こそそれほど改善しなかったが(といっても0.09 nM)、トリプシンやtPaに対しては23000倍、7100倍以上の高い選択性を獲得する事に成功した。天然物マクロサイクル19とも全く構造が違う事も特筆すべき点。この大環状構造をデザインしたMerckのPhilippe G. Nantermetは後にアルツハイマー治療薬として最も魅力的ターゲットであるアスパラギン酸プロテアーゼのBACE阻害薬において、やはりマクロサイクルにより課題であった中枢移行性を獲得する事に成功している。その後はアスパラギン酸プロテアーゼであるHIVプロテアーゼ阻害薬を担当しており、メディシナルケミストがターゲットクラスベースでターゲット横断的に専門性を活かせている事も理解できる。

2.1.4. HIVプロテアーゼ阻害薬
 アスパラギン酸プロテアーゼのHIVプロテアーゼは、強力な活性を有するペプチド20からβストランドをリジッドに固定化したマクロサイクル21で12 nMの活性を確認、さらに遷移状態アナログのヒドロキシルエチルアミドの水酸基の立体を反転させた22で活性は0.6 nMに向上した(Fig. 5)。ダルナビルから展開したマクロサイクルの構築の合成にはRCMを利用し、結合活性は12 pMに達する。

2.1.5. HCV NS3プロテアーゼ阻害薬
 C型肝炎治療薬を指向したターゲットで、P1-P6まで続くペプチド29が7μMの活性を有しており、一方で非環状タイプの30では 1nMの活性を有している(Fig. 6)。これらのP3-P1マクロサイクルとした31は細胞系でも7 nMの活性を示し、さらなる最適化で経口吸収性に優れた数々の臨床マクロサイクル化合物BIL2061, ITMN-191, TMC435350を見いだしてる。共有結合性の可逆的阻害薬としては非環状のSCH503034がフェーズ3で先行するが、これらもマクロサイクルにした種々の化合物が報告されている(Fig. 7)。一方でMerckを中心にP2-P4マクロサイクルが検討され(Fig. 8)、マクロサイクルMK-7009が臨床入りしている。ダブルRCMによってP1-P3, P2-P4のダブルマクロサイクルも報告されている(これは半分遊び心か?)。

2.1.6. BACE阻害薬
 アスパラギン酸プロテアーゼBACEは、Aβ仮説に基づくアルツハイマー治療薬として最もプロミッシングなターゲットである一方で、その阻害薬は、HCVやHIVと異なり中枢移行性を獲得する必要があり、これらに比べてさらなる低分子化と低極性化が求められるので、ハードルが高い。直鎖状のペプチド48からの変換では、P1の芳香環はππ相互作用に重要と考えられる(Fig. 9)。これを除去したP3-P1マクロサイクル48bは活性が減弱するが、P1-Nマクロサイクル49ではむしろ活性が向上したので、P2-P3アミドのNHは必須ではなく、NHを潰す事で膜透過性がか向上し、細胞系活性も改善している。
 またノバルティスでは、経口薬にはほど遠いペプチド47(OM99-2)からの最適化を検討している。まず、活性が残る最小フラグメントが50である事を確認し(1.4μM)、X線結晶情報からマクロサイクルを検討し、52で150 nMまで活性を向上。さらに遷移状態ミミックのヒドロキシルエチルアミンを導入した53(NB-533)で活性は27 nM、細胞系でも45 nMまで向上させ、カテプシンDに対しても53倍の選択性を有していた。NB-533はMDR基質となって脳内移行性が担保されないので、塩基性を調整、細胞系活性とバランスをとるにはpKa = 7-7.5がベストで、シクロプロピルアミン54を得、経口吸収性と脳内移行性を獲得した(カテプシンDに対する選択性は低下)。
 HTSから見いだした非環状55は経口吸収性が低くMDR基質となって脳内移行性も低い。マクロサイクル化によって(1)ペプチド性の脱却、(2)事前組織化による低分子化、(3)近接するP1、P3の有効活用を指向し、デザインした56で活性を確認。鎖状分子では活性がない事から、マクロサイクルが重要な役割を果たしている。側鎖の置換基変換で、活性と脳内移行性を担保したマクロサイクル57を見いだしている。
 MerckではPhilippe G. Nantermetらによってセレンディピタスに見いだされたターチャリーアミン56を独自に見いだしたが、低分子化、PSA低下、エステル加水分解抑制を目的にマクロサイクル59とし、活性保持と加水分解抑制、MDR基質回避を達成した(細胞系活性との両立には不成功)。
 J&JではHTSで見いだした60がモデリングからヘアピン構造で酵素と相互作用すると考え、マクロサイクルとして最適化した62で9乗オーダーの強力な活性を確認した。

2.1.7. その他酵素阻害薬
 CDK2阻害薬では、SBDDを活かして非環状の65の分子内水素結合部分を環化、さらにマクロサイクルとした66でCDK活性を劇的に向上、さらに他のキナーゼサブファミリーに対して1000倍以上の選択性を獲得、抗癌作用を確認している(免疫抑制作用で中止)(Fig. 11)。
 HDAC阻害薬として、天然、非天然のマクロサイクルが報告(Fig 12)。
 2004年にMerckが報告したファルネシルトランスフェラーゼ阻害薬では、非環状の73に比べてマクロサイクル72は40000倍の活性向上の0.1 nM(Fig. 13)。エントロピー的ペナルティの低下がドラスティックに効いた事例。後にCGRP拮抗薬の研究でリーダーとなるTheresa M Williamsやオレキシン拮抗薬のJeffrey M Bergman、大御所George D Hartmanが名前を連ねている。

 酵素をターゲットにしたマクロサイクルのデザインは多くの場合(1)非環状もしくは天然のリガンドをベースに、(2)X線やNMR情報を活かしたラショナルデザイン。その効果は、(1)βシートのような活性コンフォメーションを固定化する事前組織化、(2)自由度を低下させて相互作用を獲得、(3)極性低下で膜透過性とPK改善。


2.2.マクロサイクルGPCR
 GPCRは結晶情報がほとんど活かせないので、SBDDによるマクロサイクル構築は困難であるが、内因性のペプチドリガンドがマクロサイクルを形成している場合があり、それをヒントにデザインされる場合がある。

2.2.1.CXCR4拮抗薬
 アザクラウンで構築されたマクロサイクル。最近報告されたものとして79(AMD3465)(Fig. 14)。

2.2.2.モチリン受容体拮抗薬
 モチリン受容体作動薬としてマクロライドのエリスロマイシンがしらている事から、拮抗薬探索でもマクロサイクル1万化合物をスクリーニングし、80を137 nM活性で見いだす(Fig. 15)。結晶情報がないので、RCMを使った固相ライブラリー合成で多様な化合物を合成し、SARを探索。

2.2.3.グレリン
 グレリン作動薬としてマクロサイクル化合物のHTSから見いだした82を最適化した83(TZP-101)は経口吸収性があり、フェーズ3開発中である。さらにバックアップとしてTZP-102がフェーズ2で開発されている。対応する非環状体で活性はない。


2.3. タンパクタンパク相互作用阻害薬(PPI)
 PPIでは数百Å2の表面積を持つポケットが阻害薬を設計するホットスポットとなる。マクロサイクルはこのポケットに結合しうる。その際に、ペプチド構造のデメリットをクリアする事が期待される。

2.3.1.GrbSH2調節薬
 ペプチド86のβターンミミックとしたマクロサイクル88で活性は20 nM、最適化された89で活性は75 pM(Fig. 17)。

2.3.2.ソニック・ヘッジホッグ調節薬
 シュライバーがマクロサイクルライブラリーから見いだした90を最適化し、91(ロボットニキニン)を見いだす(Fig. 17)。 

2.3.3. ニューロトロフィンミミック
バーゲスによるTrkA作動薬(Fig. 18)

3.合成法
固相反応、RCM、銅もしくはパラジウムカップリング、ホーナーエモンズ、クリック反応、アミド化、ウギ反応、光延反応、還元的アミノ化、バートンマックコンビーラジカル反応、マクロラクトニゼーションなど(Scheme 1-35)。
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