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諸刃の剣・共有結合モディフィアも使いよう

Singh J, Petter RC, Baillie TA, Whitty A. The resurgence of covalent drugs. Nature Reviews Drug Discovery. 2011;10(4):307-317.
Available at: http://www.nature.com/doifinder/10.1038/nrd3410


 共有結合モディフィアは強力な薬効を実現できる一方でオフターゲット選択性が出せない、免疫系由来のバイオアクティベーションの引き金となり毒性につながる事から、創薬では「諸刃の剣」の性質を持つ。共有結合モディフィアには安全性に関してリスクがある一方で、医薬品では重要な役割を果たし、売上高に関しても、2009年のトップ10医薬品のうち、実に3つのクロピドグレル、ランソプラゾール、エソメプラゾールが含まれ、26個の共有結合モディフィアの年間売上は3兆円に達し、しかもいくつかがジェネリックになっている事を考慮すると、この売上高すら過小評価していると見なす事ができる。FDAの承認された39個の共有結合モディフィアのうち、33%が感染症、20%がガン、15%が消化器、15%が中枢を占める(Fig. 1)。癌領域ではアロマターゼ阻害薬、チミジレート合成酵素阻害薬、リボヌクレオチド還元酵素阻害薬で利用されているが、消化器領域ではP2Y12拮抗薬のクロビドグレル、プロトンポンプ阻害薬のオメプラゾール、ランソプラゾールなど、中枢薬ではMAO阻害薬のラサジリンやセレジリンが鬱やパーキンソン治療薬として利用され、深刻な疾患では慢性的治療にも共有結合モディフィアが利用されるケースがある。また、発売されている共有結合モディフィアの多く(クロビドグレル、アスピリン、PPI)は狙ってデザインされたものではなく、偶然の発見、セレンディピティによる。現在では、共有結合モディフィアは免疫系由来の毒性につながるバイオアクティベーションを起こしうるので、リスクベネフィット解析を行った上で、生命を脅かす疾患で他に良い治療法のないターゲットに絞って行われる事が殆どである。
 共有結合モディフィアのメカニズムの特徴は、式(1)平衡状態のKiの後に共有結合を形成するk2値が逆反応のk-2に比べて非常に大きい事にある。非可逆的阻害に近い様式として、スローバインダータイプが存在する。可逆的阻害薬と異なり共有結合モディフィアの場合、結合したタンパクが消失し、新たなタンパクが再生するまで薬効を維持する事は特筆すべき性質である。タンパクの消失よりも阻害時間が長い場合、メカニズムベース阻害と見なさなくてはならない。阻害活性は可逆的阻害薬のKi値で表すのではなく、平衡状態のKi値と結合速度のk2で示され、完全に酵素を失活させるまでの時間によって示される(Box1)。このKiとk2のバランスによって選択性や活性は制御でき、ドーパミン加水分解酵素、セリン加水分解酵素のFAAHで実践されている。

 薬効に関しては、可逆的阻害薬で優れたリガンド効率は0.3程度でこれを達成するのが困難であるが、共有結合モディフィアは劇的に改善可能である。一度結合すれば、ターゲット蛋白が再生しない限りインビボでも極めて長時間持続的に薬効を示すのも特徴の一つである。選択性はKiとk2のバランスで決まるが、セリンプロテアーゼやシステインプロテアーゼではオフターゲットのサブタイプに対して弱いKiで作用するが、続く共有結合k2は非常に強力な為に選択性を得るのは困難な場合が多い。ただ、FAAHの非常に稀な例として、強力な薬効と優れた選択性を獲得した共有結合モディフィアの報告は存在する。また、他のプロテアーゼとは相同性の低いターゲットを狙えば、活性と選択性を獲得できると考えられる。癌や感染症では変異体による耐性が課題になるが、共有結合モディフィアはこれに対しても強く作用しうる。近年の共有結合モディフィアのドラッグデザインは、1)タンパクの結合サイト付近に共有結合しうるアミノ酸残基を確認し、2)可逆的阻害薬が知られているかを調査し、3)適切な位置にウォーヘッドを入れて共有結合を形成できるように設計する。現在、癌を中心にRAやC型肝炎治療薬でも共有結合モディフィアは臨床開発が進んでいる(Table 1)。

 共有結合モディフィアの事例は古くからあるが、合理的なデザインが行われ始めたのはごく最近であり、リスク/ベネフィット評価、長所/短所を解析し理解しておけば、治療薬として極めて重要な方法論として機能する。
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テーマ : 科学・医療・心理
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