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今後も活躍する低分子医薬品

Giordanetto AF, Bostr J. Ac ce pt us cr t. Drug Discovery Today. 2011.
Available at: http://dx.doi.org/10.1016/j.drudis.2011.05.011

医薬品業界ではしばしば真のイノベーティブな医薬品である「ファースト・イン・クラス」よりも「ミー・トゥー・ドラッグ」が話題になる。実際、創薬化学者は、競合他社から化合物が出現すれば、それをただフォローアップしている。ここで明らかにしたいのは、どの程度の構造変換によってフォロー・オンされているのか、についてである。74種類のファースト・イン・クラスとフォロー・オンドラッグの組み合わせを検証した結果、実に70%の化合物は非常に近い構造をしており、必要最小限の構造変換で済ませていた。
重要な事は、特許のとれる必要最小限の構造変換で、薬理作用に影響を及ぼす化合物の物性をドラスティックに変える事。サーカスのような劇的な構造変換で全く違うケモタイプを生み出したとしても、そんな変換の割に薬理面でアドバンテージがないなら、むしろ無駄。薬効で勝てないのに豪快な変換に酔うのは、ケミストの自己満足、自惚れに過ぎない。

創薬ターゲットは枯渇化していると言われるが、創薬化学者は、置換基一つで既存薬と差別化し優れた医薬品を創出する事ができる。医薬品の中には同一ターゲットで40年越しに僅かの置換基変換によって新薬を創出した事例がある。低分子は終わらない、むしろ人体の限られたドラッガブルターゲットの中で、活性・物性・動態・安全性・薬効プロファイルバランスをファインチューニングできる低分子医薬品は今後も活躍する、そこに患者がいる限り。


・単なるコピーではない:同一メカニズム、異なる構造
同一ターゲットであっても、異なる結合サイトや異なる作用様式によって薬理作用でイノベーションを起こしうる。異なる化合物構造であれば、予測不能なオフターゲット作用や毒性を回避しうる。構造がことなれば、特許性を得、ADMEを改善できる。74種類のうち22種類(30%)が同一ターゲットで構造的に相同性のない医薬品であった。これは単なるコピー・ドラッグではない。

顕著な事例として、L-タイプカルシウムチャンネルブロッカーのベラパミル、ニフェジピンで、この二つの薬剤は、結合サイトが異なる。薬理面、組織分布、動態面での差別化を図る事ができる(Fig. 1)。

アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬の事例として、タクリンとドネペジル(Fig.1)。結合サイトは同じであるが、より多くのサイトを利用するドネペジルはBChEに対する選択性の獲得、PKの持続性でタクリンに比べて優れている。

HIVプロテアーゼ阻害薬、サキナビルとリトナビルの事例では、構造は全く違うが結合サイトでは重なりあう。皮肉なことに、リトナビルはHIVプロテアーゼ阻害薬として利用するよりも、CYP阻害作用で血中濃度を向上させる為に利用されている(Fig. 1)。


・単なるコピーか?同一メカニズム、類似構造
74種類のペアのうち、70%が類似構造のフォロー・オン薬剤。


・フォロー・オン設定:長期間置いて承認された類似構造
ファースト・イン・クラス新薬が承認された後から、フォロー・オン薬剤を指向したPJを設定する戦略。この場合、臨床、非臨床における明確な差別化点が設定される(Fig. 2)。レチノイドのトレチノインとイソトレチノインはシスートランスの幾何異性体の違い。ソマトスタチン誘導体のオクトレオチドとランレオチドは側鎖とキャッピング基が違うだけ。

1977年に承認された肺癌治療薬・選択的エストロゲン調節薬タモキシフェンから20年経過し、トレミフェンが同一疾患で承認。トレミフェンは塩素原子が一つ入っただけで、医薬品としては使われる事のない反応性のアルキルクロリドにも関わらず、フェーズ3での薬効と安全性はタモキシフェンと同等、しかし、タモキシフェンと違い、トレミフェンはラットでの肝臓遺伝毒性はなく、ヒトでの眼球毒性や脳卒中リスクには関連しなかった。このように、置換基一つで安全性で差別化できるケースがある。

パミドロネートはビフォスネートと2原子違うだけであるが、15年越しに癌の高カルシウム症治療薬として毒性の低減と薬効向上を果たした(Fig. 2)。

トリコモナス症、ランブル鞭毛虫とアメーバに対する薬剤として、メトロニダゾールとチニダゾールは実に40年の承認期間ラグ。スルホンを導入し、膜透過性の低下と代謝安定性の改善を果たし、腸管での副作用軽減と耐性を改善した(Fig. 2)。

プロプラノロールのナフタレンを等価体変換したチモロールはclogPが2.8から1.2に低下し、経口吸収性は改善し、クリアランスは低下、脳内移行性を低下させた。中枢性副作用は低減させ、PK-PD相関は明確化された(Fig. 2)。

テトラジンはピラゾシンのフランをテトラヒドロフランに変換し、溶解度、経口吸収性と血中持続性を改善。

承認までの長期間のタイムラグと極めて近い構造類似性は、進歩性及び非自明性の具体的な証拠が要求されるであろう。実際のところ、タモキシフェンに比べての進歩性データを記載していないトレミフェンの特許を特許庁がどのように判断したのか疑問が残る。これとは対照的に、テラゾシンはピラゾシンに対する有効性を特許で明示している。


・競合設定:近い時期に承認された類似構造
承認のタイムラグが2年以内の競合的フォロー・オン化合物は65%存在(Fig. 3)。


・類似構造、異なる物性
H2拮抗薬の事例では、シメチジンに比べてラニチジンは薬物相互作用のリスクを劇的低下。シルデナフィルの「窒素ウォーク」で得られたバルデナフィル(Fig. 4)。ランソプラゾールはオメプラゾールと置換基違い。

チクロピジンののちにでたクロピドグレルは抗血栓薬で安全性と耐性を獲得したブロックバスター(Fig. 4)。

メトプロロールはアテノロールに比べて脂溶性の低下による脳内移行性低下で中枢性副作用軽減(Fig. 4)。

アシクロビルはガンシクロビルに比べてサイトメガロウイルスに対する特異性に優れている(Fig. 4)。

ゾルミトリプタンはスマトリプタンに比べて経口吸収性と薬効発揮時間に優れている(Fig. 4).

CA阻害薬ドルゾラミドに対してブリゾラミドは脂溶性が1.72から6.6に大幅上昇、眼科疾患の条件に優れる(Fig. 4)。


・最近の事例
SGLT2阻害薬のダパグリフロジン(Fig. 5)に対して、ファイザーのPF04971729は架橋2炭素部分の違いだけ。活性と選択性の改善。


・創薬化学者は何を俯瞰すべきか?
50以上のファースト・イン・クラスーフォロー・オン・ペアが市場に出ており、その成功事例は、構造上のマイナーチェンジからドラスティックなホッピングまで多様である。ドラスティックな構造変換は注目されるが、1-3原子程度のマイナーチェンジの変換も同等の効能があるにも関わらず、過小評価されがちである。

 フォロー・オンを狙う仮想シナリオでは、他社特許のクレーム外にアクセスしうる最小限の構造変換を特定すべきである。この戦略の成功には、独自の発明を確保する為に、先行他社に比べて競合優位性と差別化を実証する能力が必要である。この仮説では、差別化するための動物モデルと研究遂行において厳格なクライテリアの設定が必要である。創薬におけるフォロー・オン戦略は財務面、法的側面も含め議論は尽きないが、ファースト・イン・クラスとフォー・オンドラッグの関係を見ていると、構造と薬理作用がクリアに相関している事を思い出させてくれる。創薬化学者はジェームス・ブラックの名言「新薬は旧来の薬剤から出発するのが最も実りある手段である」から学ぶ事ができる。また、次世代の新薬は既存の新薬の近くにーそれこそ数原子も離れていない距離にー存在するのかもしれない。
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テーマ : 科学・医療・心理
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趣味で読んだ創薬化学論文を綴った日記。

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