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シクロプロピル基コンフォメーション効果

Cee VJ, Frohn M, Lanman BA, et al. Discovery of AMG 369, a Thiazolo[5,4- b ]pyridine Agonist of S1P 1 and S1P 5. ACS Medicinal Chemistry Letters. 2010:101229123654003. Available at: http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/ml100306h

 S1P1リガンドの3aは活性こそ8乗オーダーと強力でビボでも作用がみられ、副作用リスクのあるS1P3に対して選択性が高いが、clogP 3.9でtPSA 53Å2の高脂溶性、低極性表面積プロファイルは、ファイザーの示したガイドラインでオフターゲット毒性リスクが高いととされるclogP>3, tPSA <75Å2の範疇にある。よって、続く最適化では、脂溶性を低下させ、tPSAを高める変換を指向した。ベンゾチアゾールに窒素を導入すればclogPは1.1低下、tPSAは12向上できるので、その3b-3d、そしてベンジルをシャッフルさせた4a-4dを合成検討(Table 1)。窒素を導入すると多くの場合で活性は減弱したが、3b, 3d, 4dでサブマイクロオーダーと活性は維持。内因性リガンドのS1PはclogPが5.5と高いので、これらに若干の脂溶性を付与して活性向上を狙った。種々合成した結果、メチル基、ジメチル基を導入した5a, 5bで活性は一桁向上、さらにシクロプロピル基にすると2 nMの強力な活性を示した。環サイズをシクロブチル以上に大きくすると活性は減弱(Table 2)。興味深い結果として、窒素を除去したベンゾチアゾール6では活性が減弱している点である。シクロプロピル基の効果を理解する為に、ジメチルA、シクロプロピルB、窒素のないシクロプロピルCの回転エネルギーを検証した(Fig. 2)。驚くべき事に、ジメチルA(青)では120, 240°が安定角であるのに対して、シクロプロピルB(黒)では180°にシャープなエネルギー極小値を持つ。一方で隣接位に窒素のないシクロプロピルC(赤)では0°を極小値に、180°にも鞍点があるものの全体的にブロードなエネルギー図を示した。このように思いがけないシクロプロピルと隣接窒素のコンフォメーション固定化の効果によって9乗オーダーの強力な活性を実現できたと考えられる。見いだした化合物5d (AMG369)はclogP 3.2、tPSA 65で元の3aに比べてパラメーターを改善している。ビボでも薬効を確認している。サブタイプ選択性はS1P5にこそ選択性が低いものの、S1p5には悪い作用が考えられず、問題ないと考えている。

 この論文では、ファイザーのtoxicology outcomeのガイドラインを指標とし、物性を改善しつつ活性向上の糸口を探ったところがポイントとなっている。その過程で見いだしたシクロプロピルの思いがけない効果がブレイクスルーとなっている。すなわち、内因性のS1Pは脂溶性が高いので脂溶性と活性の正の相関が最適化の苦労をさせる中で、シクロプロピルのコンフォメーション固定化が機能したのである。ここで想起するのは、メルクがFXaやブラジキニン受容体拮抗薬で検討したシクロプロピルとカルボニル基のσπ超共役作用である。ここでは隣接位の窒素が活性発現の鍵になっており、窒素原子の不対電子対とシクロプロピル基の相互作用が推定される。仮にそうだとすると、ヘテロ環窒素とシクロプロピルの効果は、ドラッグデザインで応用性が期待できる。
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