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カルメグリプチン・6つのナレッジ

Boehringer M, Fischer H, Hennig M, et al. Aryl- and heteroaryl-substituted aminobenzo[a]quinolizines as dipeptidyl peptidase IV inhibitors. Bioorganic & medicinal chemistry letters. 2010;20(3):1106-8.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20031408


ロッシュのDPP4阻害薬カルメグリプチン周辺化合物の構造活性相関を報告で、3環性のユニークなヒット化合物3は1950年代の遺産とも言うべきエメチン系誘導体である。S1ポケットを芳香環で埋めた化合物2a,b,cは報告済み。メルクのシタグリプチン1a、ロッシュの別ケモタイプ、ピリミジン、ピリジン系の4a,bとの重ね合わせからS1ポケットにはまるフェニル基上置換基の探索に集中した。SARは非常にタイトで置換基に許容性は低いが、クロロ基やメチル基の導入で活性は向上、さらにメチル基上にフッ素を導入(2d vs. 2g)するだけで活性は12倍向上している。これは結晶構造から、Tyr631, Val656, Tryp659, Tyr666と5点でのファンデルワールスコンタクトを形成している事が示され、水素の場合よりも約2倍のエネルギーを獲得する事で説明できる。これは非常にユニークな結果で興味深い。ただ、このフルオロメチル基は化合物2jでAMES試験陽性で小核試験もクリアできておらず、構造起因の毒性の原因となるようなので要注意。フェニル基で最適化された化合物2cは0.3 mg / kgから薬効を示し、CYP阻害などの毒性面で問題がなかったが、フォスフォリピドーシスの懸念があり、PKプロファイルも分布容積が非常に大きく脳内移行性が高い為に本テーマとしてはあまり魅力のないプロファイルであった。フォスフォリピドーシスは化合物の両親媒性によると推測されたので、これを低減させ、PKも改善しうるピリジンとした2iで分布容積は小さく血中を対流するタイプで脳内移行性も低い、経口吸収性に優れ、フォスフォリピドーシスは払拭、ビボでは0.03 mg / kgから用量依存的に強力な作用を示している。ビトロの活性が強くなくとも、PKでここまで薬効を発揮できる点は注目できる。非常にドラッガブルな化合物と薬効を両立させた、としている。

ロッシュはDPP4の研究を通じて、初期のピリミジン系統の化合物以来、一貫してフォスフォリピドーシスのリスクを化合物の両親媒性と関連付けて課題解決の作業仮説をたてており、この方法論は機能している。
1)脂溶性を低下させて両親媒性を低下させる方針、加えて、2)ケモタイプの重ね合わせによるデザイン、3)低下した活性をPKで補うといった戦略、4)フルオロメチル基の毒性、5)フッ素の多点水素結合といったナレッジ、は参考にできる。また、古くからある独自のエメチン誘導体からDPP4の活性を出した点は、6)特異の骨格に活性を引き込むという化学の強みを活かしている。既に紹介済のように、ノバルティスも70年前に見出した合成麻薬LSDのエルゴリンからCXCR3やSSTR1の活性を引き出しており、自社オリジナルの伝統的骨格に活性を引き込むのは、合成法や物性の長所・短所を知り尽くしているだけに、研究を圧倒的に有利に進める事ができる。

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