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異端児によるドラッグスペース開拓が重要

Faller B, Ottaviani G, Ertl P, Berellini G, Collis A. Evolution of the physicochemical properties of marketed drugs: can history foretell the future? Drug discovery today. 2011;00(00):1-9.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21782967


医薬品開発を目指す非臨床化合物12000化合物と最近と昔ながらの伝統的医薬品、古い医薬品の性質を比較した。医薬品になる物性はある領域に集中している一方で、2002年以降に承認されている医薬品は伝統的なドラッグスペースから逸脱している。この新奇な領域では、歴史や古い医薬品の知識による半経験的ルールは必ずしも適用できない。むしろ、別のアプローチこそ必要である。

12000化合物をChemMAPを使ってプロファイリングした結果、Fig. 2の大きなサークル内に分布した。一方、緑色丸で示した1983年以前の医薬品は、左下領域(III)の水素結合数が少なく、低分子の領域に存在した。この領域は、いわゆるドラッグライクで、溶解度、膜透過性や活性のバランスのとれた領域である。一方で左上領域(IV)は分子サイズが大きく、脂溶性の高い領域、また化合物がほとんど存在しない右上領域(I)は分子サイズが大きく極性の高い領域、右下領域(II)は低分子で水素結合数の多い高極性領域となる。たとえば、ターゲットクラスで化合物をプロファイリングすると、プロテアーゼは比較的極性が高く分子サイズが大きく分岐した構造をとっており、イオンチャンネルや核内受容体は、低分子でコンパクトな脂溶性化合物である事が理解できる(Fig. 4)。このように、ターゲットクラス毎に化合物の性質の特徴を浮き彫りに出来る。

2002年以降の承認された100医薬品もChemMAPで解析した(Fig. 2 赤色丸, Table 2)。伝統的医薬品が領域IIIに集中している(66%)のに対して、2002年以降の新薬は領域IIIには42%程度で、他の領域にも分布している。大まかには、伝統的医薬品に比べて分子量は大きく、ただし水素結合数も多いので脂溶性は同等、との傾向が掴める。最近の新薬でも、中枢薬に関しては、伝統的医薬品のドラッグスペースに存在し、膜透過性と適当な蛋白結合率、Pgp基質の影響を受けない必要性の為と考えられる (Fig. 5-7)。一方で、癌は、時代と共に右下領域(II)から左上領域(IV)にシフトしており、細胞増殖抑制作用から選択的キナーゼ阻害薬にMOAがシフトしている事に一致する。

このように過去の医薬品から半経験的に導き出したルールも、検討しているターゲットクラスが過去のそれと異なれば適用できない。結果的に時代の変遷と共に医薬品のプロファイルも変化しているので、半経験的なドラッグライクスペースを逸脱したところに医薬品は出現しうる。新たなドラッグスペースの領域に、求められる物性を見極めなくてはならない。

<膜透過性>
Fig. 5: 膜透過性を分子別にマークし、ChemMAP上にプロット。分子量の増大は膜透過性を低下させる。伝統的医薬品の存在する領域IIIは、概ね膜透過性が良いが、領域IIーIVを横断する点線の範疇は、良いものと悪いものが混在する。エガンによって提案された膜透過性をPSAとClogPで予測するエッグ形状のスペースには、伝統的医薬品はフィットするが(Fig. 5(a))、伝統的医薬品のスペース外の化合物は、エッグ形状のスペースの中にも膜透過性の低いものは存在し、逆にエッグ形状の外に膜透過性の良いものが見出す事ができる(Fig. 5(b))。

<Caco-2汲出>
Fig. 6: 伝統的ドラッグスペースではPgp基質にならないが、それ以外の領域は全く異なる。分子量の増大はPgpの影響を強く受ける。

<フリー体分率>
Fig. 7: 領域IVの蛋白結合率は99%以上と高く、伝統的医薬品の領域IIIは種々の蛋白結合率が存在、領域IIでは70%以下と蛋白結合率は低い。
Fig. 8: 脳内フリー体分率は一般にClogPと相関があるとされるが、伝統的医薬品でこそ適用できこそすれ(Fig. 8(c))、そこから逸脱するドラッグスペースでは適用できない(Fig. 8(b))。


「歴史は未来を語りうるのか?」狙っているターゲットが伝統的なドラッグスペースから逸脱するならば、その回答は否定的だろう。ターゲットクラス、投与量、適応疾患、患者層、慢性的か急性的か、その時代の規制当局(レギュレーション)の意向、これら状況が異なるだけで、過去の成功体験は何ら通用しなくなる。そして、回顧的、帰納的経験則に基づくガイドラインは、まだ見ぬ未開拓のドラッグスペースには通用しない。
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テーマ : 科学・医療・心理
ジャンル : 学問・文化・芸術

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趣味で読んだ創薬化学論文を綴った日記。

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