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論文情報は自社内でバリデーションするべし

Mullard A. Reliability of “new drug target” claims called into question. Nature reviews. Drug discovery. 2011;10(9):643-4.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21878966

Prinz F, Schlange T, Asadullah K. Believe it or not: how much can we rely on published data on potential drug targets? Nature Reviews Drug Discovery. 2011;10(9):712-712.
Available at: http://www.nature.com/doifinder/10.1038/nrd3439-c1


バイエルでは3分の2のテーマをターゲットバリデーションが出来ずに中止した。その理由は、文献情報を再現できなかったからだ。アカデミアの報告した研究の50%が再現できないと言われるが、その数値すら過小評価した値と考えられている。バイエルでは再現できたのは僅か14プロジェクト、43プロジェクトは再現できなかった。

 最近のフェーズ2成功確率が28%から18%に低下していると言う昨日紹介の報告があったが、その原因が動物予測モデルの限界とターゲット・バリデーションに疑問が残る場合が多い為であり、成功確率改善にはこれらの課題をクリアすべきと考えられる。
創薬ターゲットはインハウスでのターゲット同定、ライセンス・インや文献情報や学会情報といった公知情報から選出される。プロジェクトが学際研究から企業研究に移る際に、焦点は「興味」から「市場性・実現可能性」にシフトする。特定のターゲットを研究から開発まで追求するとなると、その財務コストは最終的に数億ユーロに達する。たとえ研究初期の段階であっても、HTSへの投資は相当額になるので、可能性のあるターゲットの報告されたデータの妥当性は研究開始を決定する上でも企業にとっては重要なものとなる。無駄な投資リスクを軽減する為に、ほとんどの製薬企業はインハウスでターゲット・バリデーションをする。その際、報告された画期的データに基づいて研究をスタートさせたのに、インハウスでバリデーションすると結果が再現できない為に幻滅する事もある。大学もしくは企業の研究者に聞いても、公開データの再現性を得るのが難しいという見解は一致している。しかし、再現実験の結果を公開し、それを体系的に分析した事例の報告例はない。
 製薬企業における初期研究では与えられた予算と研究者で主にターゲット・バリデーションを検討し、ターゲットの確度を高め、公表データを再現し、幅広くデータセットを取得してテーマ固有の魅力を探索する。Fig. 1にはバイエルの癌、婦人科疾患、循環器系疾患での過去4年の公知情報の再現性の有無をグラフ化した。インハウスで再現できたのはわずかに20-25%(Fig. 1c)、プロジェクトの3分の2がデータの整合性が得られずに中止する結果となった。
 実験系の違いが再現できない原因かと考えたが、細胞系やアッセイフォーマットの違いはほとんど問題になっておらず、むしろ実験系を公表論文に従って構築したにも関わらず再現できない事が多かった。さらに再現性の有無についてはジャーナルのインパクト・ファクターとは何ら相関するものではなかった。
 再現性の無さの要因は、統計解析の問題、サンプルサイズが不十分といった事が考えられるが、研究室内外の競争や論文公表の圧力の為に不十分な正確性しかない段階で発表してしまうのかもしれない。論文はポジティブな結果の方が受領されやすいので、データも自然とポジティブなものに偏ってしまう。このような怪しいデータは、ピアレビューの段階で排除されるべきであるが、レビュアに再現性を取るためのリソースがあるわけではないので、確認実験される事なく公開され、仮にリジェクトされても、何ら実験がリファインされる事もなく、他のジャーナルに掲載されてしまう。
 バイエル社内でも統計的優位性の低いものは疑問視しており、バイエルの実験系が社外で再現不可能な可能性も認識している。とはいえ、バイエルではターゲットバリデーションを1)無作為なアッセイ法によってターゲットのバイオロジーの確証を得、2)化合物最適化のような後半ステージで信頼性あるアッセイ系を提供し、3)これらのアッセイを社内の他の部署の各実験室で評価してチェックする。6-12ヶ月かけて膨大なデータを取得するので、バイエルでは自身のデータには高い信頼性を置いている。
 強調しておきたい点は、他のグループのデータが再現できないから自社の実験データが正しいと主張したいわけではない、という事である。言いたい事は、他のグループが詐欺だいう事ではなく、再現性がなかった、という事である。実際のところ、バイエルの研究では、撤回したり怪しいと疑われるような内容は一つも存在しない。一方で、バイエルでは3-4人の研究者をフルタイムで6-12ヶ月かけて公表論文を検証させたが、その再現が得られない事は頻繁にあった。
 以上の検証から、創薬ターゲットを文献から抽出するには注意が必要であり、ターゲット・バリデーションに投資するのは重要である。
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テーマ : 科学・医療・心理
ジャンル : 学問・文化・芸術

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