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医薬品解析にはTTDをマイニングせよ

Liu X, Zhu F, Ma X, et al. The Therapeutic Target Database: an Internet resource for the primary targets of approved, clinical trial and experimental drugs. Expert opinion on therapeutic targets. 2011:1-10.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21619487

タンパク、核酸、その他の分子標的が明らかにされる一方で、イノベーティブな新薬になる創薬ターゲットは圧倒的に少ない。有望な創薬ターゲットの抽出に既存の承認薬、もしくは開発中の薬剤のナレッジは有効活用できる。疾患ターゲットデータベース(TTD)は創薬で成功した358のターゲット、251個の臨床開発中のターゲット、1254個の研究課題ターゲット、1511個の承認医薬、1118個の臨床開発化合物、ターゲットに紐付けされた2331個の試験化合物を収載している。ここではTTDの利用法から、実際の有望なターゲット探索法まで紹介する。

TTD(Therapeutic Target Database)
http://bidd.nus.edu.sg/group/cjttd/TTD.asp


・なぜTTDか?
創薬ターゲットは1000以上報告されているにも関わらず、1994年から2005年の間に承認された画期的な創薬ターゲットはわずか12個しか存在しない。よって、この玉石混淆の中から有望な創薬ターゲットを見出すための戦略が求められる。臨床試験から基礎的実験レベルの包括的情報は、ターゲットの選定、推進、研究戦略と意思決定の為に良いツールとなる。このような包括的データベースとして、TTD,DrugBank、PDTDがアクセス可能でデータベース間で情報は補完されているが、とりわけTTDは、承認薬や治験薬に関して、14000もの医薬品ータンパク情報を積極的に提供しており、情報収集のソースに選択した。


・TTDについて
臨床試験の情報源は、FDAウェッブページ、NIHサイト、センターウォッチドラッグで、384社の製薬企業(アストラ、バイエル、ベーリンガー、ジェネンテック、GSK、インサイト、アイシス、メルク、ノバルティス、ファイザー、ロッシュ、サノフィ、シェリング、スペクトラム、武田、テバなど)、230のジャーナル(エキスパートオピニオン、ネイチャー、TiPS、DDT,サイエンスなど)の情報が収載。TTDは、キーワード検索、カスタム検索が可能で、カスタム検索ではターゲット名、医薬品名、疾患名(436疾患)、ターゲットクラス(61種類)、薬剤疾患クラス(156種類)、MOAで検索可能。SwissProt/UniProt, PDB, KEGG, OMID and PubMedがクロスリンクしており、元文献を見ることができる。疾患名や薬剤の名前で検索すれば、関連ターゲットをチェックできる。FASTA形式でタンパクの配列を入力すれば、BLAST配列アライメントツールを利用して、相同性の高いタンパクを検索できる。検索で得た情報はダウンロードできる。


・TTDの類似度検索を利用した探索法
TTDの有用性を示す二つのケーススタディ
1)タニモト係数による薬剤の類似度検索が可能。たとえば、非臨床のPI3KとmTOR阻害薬GSK2126458で検索すると、臨床試験中のBEZ235(Phase-II), GSK1059615(中止), AZD8055(Phase-I)が得られる。
2)ターゲットの相同性検索が可能なので、あるターゲットに対して活性を持つ化合物が、他のどのターゲットに対して結合しうるかを推定できる。たとえば、黄熱病ウィルスNS3で検索すると、HCVNS3が相同性の高いタンパクとして得られる。二つのタンパクは、どちらもセリンプロテアーゼドメインで、HCVもしくは黄熱病ウィルスの非構造領域での作用に携わる。よって、TTDに収載されいているHCVNS3阻害薬BILN-2061, ITMN-191とVX-950は、黄熱病NS3阻害薬の母核になりうる。


・TTDを利用した多元作用標的薬のメカニズム解析
TTDの情報を利用して多元作用標的薬のメカニズムを明らかにできる。たとえば、イマチニブは、BCR / ABLキナーゼと血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)阻害作用を介して薬効を示す慢性骨髄性白血病治療の革新的抗癌剤である。TTDを文献検索すれば、BCR/ABLキナーゼは、種々のシグナル伝達、変換プロセスを活性化することによって慢性骨髄性白血病の発症機序に関わっている事がわかる。一方で、PDGFRは間質液圧の調節で重要な役割を果たしており、これは固形腫瘍の共通の特徴であり、化学療法の経毛細管輸送を妨げていると考えられている。よって、イマチニブによるBcr / AblとPDGFRの同時阻害が3つの作用:1)BCR/ ABL阻害による主薬効、2)ネガティブ要因の減弱による腫瘍微小環境の改善、3)薬物輸送の改善、によって抗白血病効果を増強していると考えられる。


・TTDを利用したターゲット探索
TTDデータは、配列ベース、構造ベース、マシンラーニングベースで収載されているので、これら手法を組み合わせた計算手法でターゲットドラッガビリティを予測する事が可能となる。この計算手法の精度は臨床開発ターゲットに適用する事でチェックできる。薬物結合部位のドラッガビリティはマシン・ラーニング法によって推定する。結合部位の相同性は配列ベース検索で得る。316種類の医薬品から下記4つの計算モデルを作成した。

方法A:168種類の薬剤との薬物ー結合部位配列相同性解析
方法B:129種類の結晶情報のあるターゲットに対し、薬物ー結合部位の相同性解析
方法C:316種類のターゲットから構築したマシン・ラーニングモデルによるドラッガブル蛋白の推定
方法D:システム・レベルでのドラッガビリティ・ルールを満足するか否かを評価

この4つの手法を使って(精度保持の為に少なくとも3つは使用)2008年の臨床開発中ターゲットのドラッガビリティを予測。Table 1-2の前途有望なターゲットが得られた。

Phase IIIの30化合物中53% (Table 1),
Phase IIの84化合物中24%(Table 2)、
Phase Iの41化合物中15% (Table 2)、
非臨床864ターゲットのうち4%


予測されたフェーズ3化合物のうち、37%の6化合物は承認、31%の5化合物はポジティブな結果が得られた。逆に有望でないと予測された15化合物(Table 4)のうち、13化合物はポジティブな結果が得られていない。ファルネシルトランスフェラーゼのチピファルニブは承認申請されたがFDAから承認されず。Hsp90阻害薬ベリフラポン、スクアレン合成酵素阻害薬TAK-475、リポキシゲナーゼ活性化酵素タネスピマイシンは開発中止、5つのターゲット、AkT, MMP-12, MMP-2, MMP-9,スフィンゴシンキナーゼはネガティブな結果となった。以上の結果から、ターゲットのドラッガビリティと研究難易度は、遺伝的要素、構造的要素、物理化学的要素や系に関連付ける事ができそうである。
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