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JMC過去50年の歴史を検証

Walters WP, Green J, Weiss JR, Murcko M a. What Do Medicinal Chemists Actually Make? A 50-Year Retrospective. Journal of medicinal chemistry. 2011.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21755928

メディシナルケミストはこれまでに一体どのような化合物を合成してきたのか?JMCで報告された1959-2009年の415284化合物を解析した。
・分子量:医薬品の分子量が年々大きくなるのに合わせて、JMC報告化合物の分子量もパラレルに大きくなっている(Fig. 2:実戦がJMC、灰色が医薬品)。

・ClogP:1985年以降増大傾向だが、2000年以降の増大率は小さい(Fig. 2)。

・PSA:医薬品、JMC報告化合物共に増加傾向(Fig. 2)。

・回転結合数:医薬品、JMC報告化合物共に増加傾向(Fig. 2)。

・水素結合数:ドナー、アクセプター共に増加傾向(Fig. 3)。

・分子の複雑さ(Fig 3):医薬品、JMC報告化合物共に増加傾向(Fig. 3)。

・平面性:医薬品は時系列で平面性に変化はないが、JMC報告化合物は平面性は高まっている(sp3率が低下)(Fig. 3)。sp2-sp2カップリング反応が利用可能になった事がその要因。

・フレームワーク:リングの種類は12172種類、リンカーは8881種類、側鎖は25330種類存在するが、実に70%の化合物は僅か37種類のリング、53種類のリンカー、16種類の側鎖でカバーされる。90%の化合物も470種類のリング、518種類のリンカー、265種類の側鎖でカバーされてしまう(Table 3)。つまり、実際に利用されているパーツの種類はそれほど多くはない。ところが、リング+リンカーの組み合わせで出来るフレームワークは、激的に増加しており(Fig. 4)、同じビルディングブロックでも組み合わせ方次第で新規な骨格を創出できる事が理解できる。


40万以上のJMC化合物を解析してみると、この50年で分子は大きく、複雑に、脂溶性は高く、そして平面性が高く、芳香環枚数が増えてきた。Table 4からこれらの傾向(fsp3のみ低下、それ以外は増加)が確認できる。これらの結果は、ドラッグライクネスが低く物性が低下していると説明される場合が多い。疑いの余地がないのは、ClogPとFsp3は医薬品とJMC報告化合物で異なるレンジに位置している(Fig. 6)。ただし、いわゆる「物性の悪い」化合物が薬にならないわけではない。実際のところ、成功を収めた多くの医薬品は一般的なレンジ内には収まっていない。また、50年のスパンで見ると化合物の物性は増悪傾向にあるが、直近の2000-2004年と2005-2009年を比較すると、物性は改善傾向にある事が見て取れる(Table 5)。

そもそもドラッグライクというコンセプトを再考するには、過去50年で化合物プロファイルが上記のように推移した9つの理由を考える必要がある。
1)分子生物学の進展:サブタイプに対する知見が豊富となり、選択性を出す為のカウンター・スクリーニングが必要となり、選択性獲得の為により複雑でサイズの大きな分子が必要となった。
2)合成・分析技術の進展:化合物合成技術、精製技術、構造同定技術が発達した。特に鈴木カップリングの発明以降、ベルテックスにも300種類のアリールボロン酸が登録され、市販品は3000種類も存在する。容易に合成が出来る為、化合物の分子量は大きく、複雑化してしまう。
3)ハイスループット化学の進展:鈴木カップリングのようなsp2-sp2カップリングをハイスループット合成化した為に、合成された化合物は自然に平面性の高いものになってしまった。
4)製剤技術依存:製剤技術はPKを激的に改善できる事があるので、メディシナル・ケミストは不完全な化合物でも物性面は製剤技術で何とかしてくれるだろうと期待してしまう。
5)ターゲット・フォーカス型創薬:ターゲット・フォーカス型創薬のパラダイムの為に、結合活性→細胞系活性→ADME→毒性、といった多段階の工程によって最適化する為に、その過程で分子はイビツで医薬品に不適当なものとなってしまう。前パラダイム時代では、少なくともモデル動物で薬効を確認する事が最初にする事なので、最初からある程度の物性を有した化合物を最適化できていた。
6)SBDDの悪用:X線結晶構造解析ではタンパクの脂溶性ポケットを狙う事になる。こういったポケットを狙い続ければ、分子は大きく、脂溶性は高くなってしまう。
7)HTSライブラリー依存:リード探索にHTSに頼るが、概ね物性の悪いヒット化合物からスタートしてしまう。
8)開発のハードルの高さ:活性、選択性や他のパラメーターを充足させる必要があるので、分子量は大きく、複雑な構造になり、ドラッグライクネスは低下する。
9)JMCの投稿ポリシーの変化:かつて医薬品もしくはそれに近いものを掲載していたが、現在ではより初期のステージでも投稿できるようになって、投稿数も増えた為。


デザインプロセス改良のための5つの提言。
1)真のドラッグライクネスへの深い理解:一般論の範囲外にも存在するドラッグライクネスへの理解。
2)リガンド効率を重視:脂溶性も低く、毒性面の懸念も低くなる。
3)ADMEToxの情報量とスループット向上:アッセイの質、量、スピードの改善によって早期にリスクをチェック可能になる
4)多元パラメーターの同時最適化:視覚化ツールや複数クライテリアを同時に解決するようなアルゴリズムの提案
5)簡単なケミストリーへの依存からの脱却:sp2-sp2反応のような簡単な合成から脱却する事で合成化合物の物性は激的に改善する。
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テーマ : 科学・医療・心理
ジャンル : 学問・文化・芸術

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