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脂溶性低下ドラッグデザイン:分子量増大型極性基連結法ではなく、分子量維持型極性基変換法を

Cumming JG, Tucker H, Oldfield J, et al. Balancing hERG Affinity and Absorption in the Discovery of AZD5672, an Orally Active CCR5 Antagonist for the Treatment of Rheumatoid Arthritis. Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters. 2012.
Available at: http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0960894X11017999

Waring MJ. Defining optimum lipophilicity and molecular weight ranges for drug candidates-Molecular weight dependent lower logD limits based on permeability. Bioorganic & medicinal chemistry letters. 2009;19(10):2844-51.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19361989



 アストラゼネカの有するCCR5拮抗薬1は、0.32 nMの強力な結合活性を有していたがhERG阻害活性が7.3 μMで、50 mg/kg経口投与でQT延長が確認された。hERG阻害作用はCCR5拮抗薬の共通した課題であり、その理由は中央母核にピペリジンやトロパンがほぼ必須で、活性発現にアミン性置換基が受容体7TMのグルタミン酸と相互作用する必要性があると考えられている。

 hERG阻害のようなオフターゲット活性を低減させる方法は、脂溶性低下が一般に受け入れられている。これまでのSARから左下部分のベンゼン環は変換の余地がない。よって、変換許容性の高い左上のベンゼン環にフォーカスして最適化を開始した。芳香環のベンゼン環を含ヘテロ原子飽和環のピペリジン、ピペラジンに変換し、末端のRを種々検討した(Table 1)。既にGSK報告論文を紹介している通り、この環変換では最も物性が良くなる変換である。

http://medicinalchemistry.blog120.fc2.com/blog-entry-292.html


 メタンスルホニル基を有する3e, (R)-5dで活性と代謝安定性、hERG阻害活性のバランスが良好であった。よって、左上側をこの置換基に絞って左下側ベンゼン環の置換基を検討(Table 2)、元の化合物1同様にジフルオロフェニル基の6や7eがビトロのベストプロファイルであった。

 ピペラジンタイプ6はlogD1.2と十分に脂溶性は低いが、分子量641とサイズが大きい。分子量の大きな分子で脂溶性が低いと、トランスポーターの影響を受けて、経口吸収性が低くなる事が、第2報でのデータ・マイニングから指摘されている。この解析結果は、高活性でも疎水性の塊のようなヒット化合物を最適化する際に、物性改善したいが既にある構造を変換して活性を落としたくない、という保守的な無意識に引きずられ、極性基をぶら下げて分子量を増大させる事が結果的に脂溶性は下がってもPgp基質になったPKは改善されない、という事を指摘しており有用である。これは、アストラゼネカのインハウス化合物で膜透過性と相関する物性パラメーターを検証して導きだしたガイドラインである。分子量と脂溶性AZlogDが膜透過性の閾値に関連していて、分子量が大きくなるに従って脂溶性が高くないと十分な膜透過性がない、という事を示している。分子量毎に示されたAZlogDに従えば、リピンスキーやベーベルの指標より精度は高い。ただし、ガイドラインは分かりやすく使い勝手が良いから利用してみるのであって、分子量を50毎に細かく区切っては、いくら確度が良くても使いにくさは否めないが、上記のような本質的な課題を指摘する内容である。
 また、脂溶性の低下を目指して、脂溶性の末端に酸性・カルボン酸や塩基性・アミンを入れるとその蓄積性から毒性につながる事も知られている。よって、薬物動態だけでなく、 安全性面でも、スマートなデザインではない。このような状況を避けるには、分子量を増大させずに脂溶性を下げる、すなわちここで実践しているように、既にある脂溶性置換基を極性基に置き換えて活性の維持できる代替基を探索する事に挑戦する事である。logD1.2のピペラジン6はラット、イヌ(オス、メス)でバラついたが、若干脂溶性の高いlogD1.5のピペリジン7eはPKの種差は小さかった。元の化合物1がlogD2.2であったのに対して脂溶性が低下しPKの担保された7eはhERG阻害活性は24μMと低減し、マージンは250倍から6400倍まで改善した。CYPといったオフターゲット選択性も良好で、フェーズ2開発のAZD5672に選定した。

 ファイザーのCCR5拮抗薬マラビロクがHIV治療薬を指向しているのに対して、アストラゼネカはリュウマチ治療薬にフォーカスしている点も興味深い。

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