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グレリン作動薬:ダニエル・ベーベル、研究哲学を貫き通してフェーズ3

Hoveyda HR, Marsault E, Gagnon R, et al. Optimization of the Potency and Pharmacokinetic Properties of a Macrocyclic Ghrelin Receptor Agonist (Part I): Development of Ulimorelin (TZP-101) from Hit to Clinic. Journal of Medicinal Chemistry. 2011;(Part I):111107042043009.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22106937

Veber DF, Johnson SR, Cheng H-Y, et al. Molecular Properties That Influence the Oral Bioavailability of Drug Candidates. Journal of Medicinal Chemistry. 2002;45(12):2615-2623.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12036371


 創薬化学での未解決の重要な課題は展開性あるリードを如何に創出するかである。たとえばGPCRでは、ペプチドを内因性リガンドに持つ場合がある。内因性ペプチドは、合成の困難さのみならず、非常に大きな分子量と極性表面積からルール・オブ・ファイブを逸脱してしまうので、経口吸収性が見込めずにリードとして選定される事はない。しかしながら、天然物の中には、ルール・オブ・ファイブを逸脱しているにも関わらず、経口吸収性を示すものが存在する。たとえば、シクロスポリンのような環状ペプチド、ラパマイシンのような環状ポリケチドがそれである。これらに共通しているのはマクロサイクル構造を構築している事であり、マクロサイクルはコンフォメーションの固定化によって経口吸収性を獲得している可能性がある。一方で、ルール・オブ・ファイブに代わるルールとして、経口吸収性を獲得するのに固定化された分子構造であれば分子量の制限を受けない、という概念に基づいたガイドラインが、ダニエル・ベーベルによってGSK時代のカテプシンK阻害薬の研究の中で提案された(第2報)。ここでは、そのダニエル・ベーベルを含むトランザイムの研究者によって、構造固定化をドラッグ・デザインの本質的信条にフェーズ3開発中グレリン作動薬ウリモレリンの創製過程が報告される。
 
 トランザイムでは、環状ペプチドアナログとしてFig. 1に示すモチーフのライブラリーを有していた。このライブラリーはグレリンやモチリンといったGPCRのリガンド探索で功を奏してきた。グレリンではヒット化合物1はKi 86 nM、EC50: 134 nM、モチリンに対する選択性は100倍以上だが、経口吸収性が低い。活性・経口吸収性向上を目指してマクロサイクルの最適化を開始した。テザーのオレフィンは飽和化でき、2級アミンはアセチル化すると活性が消失、AA1の立体LをDに反転されると活性は減弱し、置換基としてはシクロプロピル基がベスト、AA2のグリシンはDアラニンで活性向上し、L体では活性は減弱する。AA3はD体で活性が強く、LLEから判断するとD-フルオロフェニルアラニンがベストであった。
 見出された化合物2は分子量500以上でclogP5.3、水素結合ドナーが3つ、アクセプターが5つあり、ルール・オブ・ファイブには違反するが、代謝安定性は許容され、膜透過性も問題なく、Pgp基質のリスクもなく、経口吸収性が良かった。その結晶構造及びNMR構造解析から、トリペプチド残基はタイプI’βターン構造をとって、グレリンの活性ファーマコフォアをミミックしていると推定された。さらに、フェノキシ基のOとアミンで分子内水素結合の形成が示唆された。分子内水素結合は、極性置換基をマスクし、かつ分子のフレキシビリティを固定化する効果がある。R2のMe基、AA1のシクロプロピル基は、水素結合を形成するのに都合の良い構造をとらせ、かつ極表面をマスクする効果を発揮したと推定され、これによってマクロサイクルの中でも経口吸収性を獲得したと考えられる。今後、さらなる最適化からバックアップのTZP-102を導き出す。

 ダニエル・ベーベルの提唱した経口吸収性に対するガイドラインは、極性表面積と回転結合数で規定される。このガイドラインが当初インパクトを与えたのは、分子量をファクターに含まず、分子サイズに制限を与えない事であった。かくして、このフィロソフィーはマクロサイクルによって実践的創薬として具現化され、フェーズ3開発化合物TZP-101(ウリモレリン)を創出する事となった。
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