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選択性獲得に向けた熱力学的考察

Kawasaki Y, Freire E. Finding a better path to drug selectivity. Drug Discovery Today. 2011;(2010).
Available at: http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S1359644611002479

 多くの新薬には高活性、高選択性が求められる。しかし、ターゲットクラスによっては、選択性獲得がファミリーの相同性、構造的類似性によって困難な場合がある。

 選択性向上には、
1)オンターゲットの活性を向上させて相対的にオフターゲット活性を減弱させるか、
2)オフターゲット活性を低下させるようなデザインをする、

かの2つの手法が存在する。ここではいくつかのプロテアーゼを検証し熱力学的に解析、前者が疎水性置換基の導入によって推進され、後者が極性官能基の導入によって加速されている事を見出した。

 ドラッグデザインで重要な役割を果たす熱力学的要素をFig. 1に例示している。活性に寄与するエンタルピー(ΔH)は、主に水素結合やファンデルワールス相互作用である(緑色バー)。活性を減弱させるエンタルピーは、極性置換基の脱溶媒和である。活性に寄与するエントロピー(TΔS)は極性、非極性基の脱溶媒和である(赤色バー)。活性を減弱させるエントロピーは、タンパク残基の構造化である。

 最も頻繁に利用される手法は、結合ポケットへの非極性置換基導入で、ファンデルワールス力で得られるエンタルピー・ゲインは小さく、脱溶媒和のエントロピーが駆動力になる。HIVプロテアーゼの場合、2つのメチル基の導入が2桁の活性向上に寄与し、主にエントロピー駆動となっている(Fig. 2)。この時カテプシンDやペプシンに対する活性はそれほど向上しておらず、結果的に選択性は激的に向上している。脂溶性ポケットに相補的に結合しなくとも脱溶媒和の効果で活性は向上するし、これが相補性良く疎水性ポケットを埋め、脱溶媒和表面を最大化した時に、最も効果的に活性が上昇する。オフターゲット側にこういったポケットがなければ活性は上がる事なく、結果的に選択性を高める事になる。

 極性基導入のケースとして、HIVプロテアーゼでメタンチオールをメタンスルホニル基に変換した場合(Fig. 4)、Asp30との水素結合によってエンタルピー・ゲインを得る一方、コンフォメーションが固定化され、脱溶媒和によるエントロピーの消失を招く(Fig. 4のケースではもともと活性はピコオーダーと非常に強いので、活性の上下は議論できない)。選択性に関しては、ペプシン、カテプシンDの活性は減弱して選択性は改善(Fig. 5)。極性基による相互作用は配向と距離が極めて重要なので、これを確保できないと、エントロピー・ロスの寄与が大きく、活性は減弱する。よって、オン・ターゲットでピンポイントに水素結合を狙う事ができ、このサイトがオフ・ターゲットになければ、選択性は大幅に改善する事になる。

 脂溶性基と極性基の熱力学的効果を図示したのがFig. 6 ((a)脂溶性基、(b)極性基、青色;オンターゲット、緑色:オフターゲット)。オン・ターゲットの疎水性ポケットにジャスト・フィットする置換基を入れればエンタルピーとエントロピーの相加効果で活性は向上(Fig 6(a)青色)、オフターゲットにおいても疎水性効果で多少の活性向上もあるが、オン・ターゲットに比べてその効果は小さく(Fig. 6(a)緑色中段)、これがオフターゲット側の壁とクラッシュする場合は、オフターゲット活性は減弱し、選択性は向上する(Fig. 6(a)緑色下段)。オン・ターゲット側で効果的に水素結合を形成できれば、エンタルピー駆動で活性は向上するが(Fig. 6(b)青色)、オフターゲットに対応する相互作用サイトがないならば、エンタルピーの脱溶媒和ペナルティが支配的となって活性は減弱し、結果として選択性は向上する。
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テーマ : 科学・医療・心理
ジャンル : 学問・文化・芸術

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趣味で読んだ創薬化学論文を綴った日記。

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