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選択性獲得に向けた5つの原理に基づく6つの戦略

Huggins DJ, Sherman W, Tidor B. Rational Approaches to Improving Selectivity in Drug Design. Journal of medicinal chemistry. 2012.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22239221


ここでは、5つの原理(形状、静電的性質、自由度、水和、アロステリー)による選択性獲得の為の6つのドラッグ・デザイン戦略についてレビューしている(Fig. 1)。
(A)静電的相互作用の違いを認識したデザイン
(B)オン・ターゲットに特異的な高エネルギー水の放出を指向
(C)オン・ターゲットに特異的なアロステリック・サイトの利用
(D)オフ・ターゲット側に特異的な立体反発を利用
(E)オン・ターゲットのコンフォメーション変化に有利な相互作用を指向
(F)オン・ターゲットに特異的な相互作用の導入

後述のCOX2、PTP1B、ファクターXa、トロンビンのように狙いの相互作用部位がリジッドであれば1アミノ酸残基の違いすらも選択性向上に大きく貢献できる。一方でHIVプロテアーゼでは1アミノ酸残基が効きそうだが、タンパク構造の再配列の為に緩和してしまう場合は機能しない。キナーゼ、メタロプロテアーゼのように2次構造のループの有無を活かすのも効果的。


・構造ベースでの選択性考察
 非選択的COX阻害薬からCOX2選択的阻害薬を見出す際に鍵になったのは、V523Iの1残基。COX2がバリンであるのに対して、メチレン一つが延びたCOX1のイソロイシンは阻害薬と衝突し、13000倍の選択性を引き出した(Fig. 2)。しかし、この際には、ターゲット分子の柔軟性と再配列効果も考慮しておく必要がある。COX1の場合は分子の衝突を緩和する事が出来なかったので選択性が高まった事は重要である。分子の再配列効果を予測するには、相互作用のより正確な考察が必要である。たとえば、同じ1アミノ酸残基の違いとしてHIVプロテアーゼのI84Vミュータントがあるが、ダルナビルはこの1残基を認識しうる置換基を有しているにも関わらず、活性はワイルドタイプで0.22 nM、変異体で1.1 nMとその活性の違いは僅か5倍である。別のリガンドで50倍の選択性があるものがあるが、その効果は明確には説明できない。

・静電的相補性
 静電的相補性は、構造ベースの相補性より取扱にくいが、選択性を出す為のデザインとしては良く利用される。オンターゲット側でソルト・ブリッジを構築するような置換基で、オフターゲット側では静電反発するような置換基で、選択性は向上しうる。セリン・プロテアーゼの負に帯電した領域では、エステル基の導入によってトリプシン活性を残して(pKi = 7.10)、トロンビン活性を減弱させた(pKi = 5.68)。逆に、メタンスルホニル基を導入すれば、トリプシン活性は減弱し(pKi = 6.77)、トロンビン活性を向上させ、活性を反転させた(pKi = 8.38)。
 血液凝固に関わらるセリン・プロテアーゼの場合、192番目の残基はターゲットによって異なる。トロンビンの場合はグルタミン酸であり、ファクターXaではグルタミンである。この1アミノ酸残基を狙ってベーリンガーはオフターゲットのトロンビンのグルタミン酸とチャージ反発するようにカルボン酸を導入し、FXaで41 nMの活性で、トロンビンで2μM以下と選択性獲得に成功した。
 PTP1B阻害薬では、他のPTPがアスパラギン酸を持たないのに対して、PTP1BはAsp48を持つ事から、塩基性アミンを導入する事で20倍の選択性を獲得する事が出来る(Fig. 3)。
 このように、静電相互作用はFig. 4Aのように緑ラインで示したクーロン相互作用に対して青ラインで示した脱溶媒和ペナルティの総和として得られるので、黒ラインで示したトータル・エネルギーの鞍点に相当する最安定エネルギーを獲得するデザインが求められる。選択性を出すためには2つのタンパクでの相互作用エネルギー曲線の差の大きな所を狙うデザインが求められる(Fig. 4B)。

・コンフォメーションとフレキシビリティ
 2つのタンパクで大きく構造変化できる部位の有無は選択性を出すポイントになりうる。たとえば、キナーゼの場合、DFGアウト状態をとれるか否かの違いを活かして選択性を出す事が可能である。キナーゼの不活性状態を安定化させるという手もある。チミジレート・シンターゼでは、そのフレキシブルな構造の特性を活かされた。TACEやMMPといったZnメタロプロテアーゼではサブサイトのフレキシブルなループが利用された。

・ターゲット部位の結合水
 オフ・ターゲットには強く結合しているが、オン・ターゲットには緩く結合している水分子は、それを弾き出すデザインによって、選択性を向上させる事ができる。このような結合水を予測する計算科学が進歩しつつある。
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テーマ : 科学・医療・心理
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