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究極のルール・ブレイカー:アクティビティ・クリフ

Stumpfe D, Bajorath J. Exploring Activity Cliffs in Medicinal Chemistry. Journal of medicinal chemistry. 2012.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22236250

 SARが連続性を失い、活性が激的に変化する事は「アクティビティ・クリフ(活性の絶壁)」と呼ばれ、1990年代にその名前が登場した。その後、SAR取得時にしばしば利用される言葉になったが、実際のところその明確な定義はないまま利用されている「バズ・ワード」になっている。ここでは、アクティビティ・クリフについて、多面的に考察した。

 アクティビティ・クリフは、一般に構造は似ているが、活性が大きく異なる2つの化合物ペアと理解されている。しかし、「似ている」という定義は明確ではなく、「大きく異なる活性」は、10倍なのか、100倍なのか、それ以上なのかもハッキリしていない。また、100倍の違いといった場合、1μMと100μMなのか、1nMと100nMなのか、定義されているわけではない。

 アクティビティ・クリフは、Fig. 1のように、活性のネットワーク状のグラフで表記したり、活性のランドスケープとして図示、SALIグラフによってスコア化する事ができる。
 一例としてEGFR2拮抗薬とCOX1阻害薬の場合がFig. 2に例示されている。EGFRの場合、窒素一つで400倍、COX-1ではベンゼンを置換チアゾリジンにして3600倍の活性の違いがある。いずれもタニモト係数で91%以上の類似度を持つ。ジヒドロフォレート還元酵素の各活性領域でのアクティビティ・クリフは、Fig. 3の丸で囲んだ部分に見ることができる。

 アクティビティ・クリフの概念はさらに拡張される。まず、置換基Rクリフは、置換基変換のプロセスで活性が激的に変化するパターンを指す。選択性クリフは、1つのターゲットでは活性が向上もしくは維持するが、もう一つのターゲットでは活性が減弱し、激的に選択性が高まる事を指す。Fig. 4のようにベンゼン環上の塩素原子は、カテプシンL活性は7倍向上させるが、カテプシンB活性は20倍低下する。ナノモルオーダーの活性を持つCOX1,,2阻害薬のジクロフェナックは、塩素をフッ素に変換してベンゼン環上にメチル基を導入したルミラコキシブで、COX1活性は維持するものの、COX2活性は10μM以下まで低下させて、1000倍以上の選択性を持つ選択的COX1阻害薬となる。マルチターゲット・クリフの場合、Fig. 5のカテプシンKのようにクリフ・パートナーのターゲットが元々活性の強いダイレクト型と、オーロラ、EGFRのキナーゼのように、クリフ・パートナーのターゲットの活性が弱いものが強くなる非ダイレクト型に分類できる。メカニズム・クリフでは、A1A拮抗薬のように置換基一つでGPCRの作用様式が、作動薬、拮抗薬、部分作動薬、逆作動薬とホッピングする(Fig. 6)。

 大規模化合物の複数のターゲットに対する活性はアクティビティ・クリフの分布を知るのに有用である。マルチターゲット・クリフを持つ化合物から取れる情報量は多い。末端置換基Rのみならず、母核にヘテロ原子を入れれば種々の骨格を創出する事ができ、アクティビティ・クリフの分布を知る事で優先順位付けが可能となる。

 活性がナノオーダーのアクティビティ・クリフのペアを5個以上揃える事が出来れば、それはナノモル・レイヤーとみなす事ができる。活性が100倍以上差がでるペアを並べて出来るレイヤーは活性が尾根のように連なったアクティビティ・リッジである。Fig. 7にEP3のアクティビティ・リッジの事例を上げており、アクティビティ・リッジを知る事は、SARを解釈し、最適化方針を決める上で重要な役割を果たす。
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テーマ : 科学・医療・心理
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