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2012年以降の効果的創薬共同研究は、アカデミアの薬理と企業のメドケムの連携。抜群の教育効果も発揮。

Rotella DP. Drug Discovery 2012 and Beyond. ACS Medicinal Chemistry Letters. 2012:120131124244008.
Available at: http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/ml300022p


 21世紀の最初の11年の創薬は、サイエンスにとっても科学者にとって騒然としたものであった。その中でも変わらない本質的なやり方は、疾患における分子レベル・細胞レベルでのパスウェイにおいて、医薬品とターゲットの相互作用の関連を明らかにし、ヒトでの疾患に精度よく外挿できる動物モデルを構築し、トランスレーショナル・メディスンの分野から疾患を追跡できる有効なマーカーを探索する事であった。こういった方法論は、ターゲットを選別して優先順位づけするのに極めて有益であった。製薬企業は大小問わず多かれ少なかれこれらの戦略をとって新薬創出を狙ってきた。
 医薬業界が下火になっているものの、創薬研究自体は長期スパンで恩恵を受けられる分野でもある。今でも多くの優秀な研究者は、バーチャルな企業、基盤研究、学際的な創薬センターに従事している。製薬企業はその規模に関わらず、自前のポートフォリオにない特殊技術や専門性を有する外部機関と連携している。製薬企業からアカデミックに転身した研究者は、他では真似のできない自前の技術を深め、自分の興味ある分野で他には得難い経験を積み、次世代の創薬研究者を育てるべく訓練を積ませている。もはや鉄板のように確実な生産性あるターゲットには束縛される事なく、研究の優先順位を自分で決め、千変万化の研究哲学、創造的アイデアが生み出されて発展されてきた。この研究の自由度の増大によって、研究者は創薬における自分の研究の意味づけや価値を明確にする必要に迫られてきた。そもそも研究とは何なのか?メリアン・ウェブスター辞書によると、研究の定義は、「事実の発見と解釈の為に検討と実験を行い、既知の理論や新真実についての法則を改訂したり、そういった改訂された理論や法則を使って『未知のものを探索する為の』応用実験」とされている。製薬企業での創薬は『研究』ベースの創薬であり、将来もその側面が残されるであろう。一方で、どれだけ研究の価値を定義したところで、審査当局から開発化合物の承認を勝ち取る事を成功する保証はない事は誰しも理解している。いくらトランスレーショナル・サイエンスを強化してクライテリアを吟味しプロジェクトを評価しても、開拓段階から臨床試験まで開発化合物数を改善させる筋道がはっきりする事はない。
 誰しもがアカデミックの創薬研究からの重要な貢献を知る努力は必要ないかもしれないが、決して無視できるものではない。たとえば、リック・シルバーマン、テッド・テイラー、アルン・ゴーシュ、デニス・リオッタ、ロバート・ヴィンスは学際研究の中で医薬品を創出した研究者たちである。彼らの成果はいづれも、研究室で進行中のテーマから発展したものであった。現在のエンボイ社、アイレロン社、プロテオスタシス社、フォールドレックスは、アカデミックの研究室からスタートした研究をベースにしたベンチャー企業である。一方で、別のビジネス・モデルとして、最近、バンダービルド大が中枢ターゲットにフォーカスした創薬センターを設立した事があげられる。この組織は、製薬企業での経験者が牽引し、構成メンバーとなっている。また、製薬企業各社と共同研究を実施しており、臨床開発に進んでいる化合物も持っている。この手法を他にも多くの大学が追随して創薬センターを設立しており、専門性ある特定の疾患から生物学、創薬化学、スクリーニング、薬効薬理、薬物動態といった分野で得意とする技術にフォーカスしている。
 ノース・カロライナ大学のフライらによるアカデミアでの創薬についての調査では、創薬を推進する上での3つの大きな阻害要因として1)資金調達、2)メディシナル・ケミストリーの専門性、3)アカデミアの創薬に対する理解の欠如、を挙げている。資金調達に関しては、アカデミアの創薬センターでパートナーシップを数多く提携し、マイルストーンをクリアしていく事でクリアしうるので、それほど大きな阻害要因にはならなくなると考えられる。メディシナル・ケミストや他の創薬研究者がアカデミアの創薬センターに流入すれば、残る2つの課題も対処できるかもしれない。しかし、このような人材の移動による効果が出るには時間を要する。勿体ない事に、製薬企業の研究者は、直ぐにIND候補になるわけではないが薬効動物に作用があってポジティブ・コントロールとして利用できるような化合物について知見を有しているにも関わらず、アカデミアとの連携がされない事が多い。これらの情報をアカデミアと共有し、共同研究を遂行するプロセスで、安全性、動態、プロセス化学についてのデータ、SARを取得していけば、共同研究は成功するであろう。
 フライが(敢えて)議論していない点は、技術についての知的財産権についてである。大学の研究者で終身在職権のない構成員は、成果をできるだけ早く論文として成果報告したい。一方で、製薬企業の研究者は、発見を権利化して保護し、情報は自分たちの手元にだけ残して隠したい。この双方のコンフリクトの解決方法は、ソロモンの知恵を持ってしても困難であろう。双方ともに、権利の保護を理解した上で、協力的な努力を果たすべきで、こういった課題を扱う事に慣れていく事で、よりスムーズに共同研究が進行するようになる。
 企業と大学の共同研究の長い目で見た利点は、次世代の科学者に、創薬の実践的研究に触れさせて、人々の健康に与える創薬研究の影響力を実感させる事である。製薬企業の研究者とその出身者、大学院生、ポスドクとの関わりが学生にとってチームワークやコミニュケーション、研究戦略立案を勉強する良い機会となる。研究後期に軸足をおいた企業側と、研究初期に軸足をおいた大学側、その大学側には企業出身者が増える事で、より共同研究は滞る事なく、強力に連携できるようになる。
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テーマ : 科学・医療・心理
ジャンル : 学問・文化・芸術

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趣味で読んだ創薬化学論文を綴った日記。

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