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希少疾患治療薬・オーファンドラッグに価値あり

Meekings KN, Williams CSM, Arrowsmith JE. Orphan drug development: an economically viable strategy for biopharma R&D. Drug Discovery Today. 2012;(2010).
Available at: http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S1359644612000529



 アンメット・メディカル・ニーズの疾患に応えるオーファン・ドラッグ創薬が注目を集めている。オーファンの希少疾患は製薬企業にとって魅力ある市場である一方で、それに関する情報は限定的である。ここでは、希少疾患の患者数が非常に少なくとも、一般的な疾患と同程度以上に市場価値がある事を紹介する。また、オーファン・ドラッグは臨床試験規模が小さく済み、臨床期間も短く、審査当局の許可を得られる可能性も高い点で、収益性も確保できる事を示す。これらのデータは、製薬企業が希少疾患に着手する事が価値あるものである事を示唆している。

 現在、米国では7000種類の希少疾患に苦しむ2500万人の患者がおり、多くは子供である。さらに、年間200種類の新たな希少疾患が報告されている。また、過去10年はオーファン・ドラッグにとって年間承認数の多い時期であった。2001-2010年のオーファン・ドラッグ承認数の年間成長率(CAGR、計算方法はBOX1)は10%に達し、全体の新薬承認の年間成長率が低下していた事と対照的である。2010年の新薬承認数(NME)に占めるオーファン・ドラッグの割合は30%に及ぶ。米国オーファン・ドラッグ・アクト(ODA)は20万人以下の希少疾患の治療薬の開発を推奨し、支援しており、オーファン・ドラッグの基準を満たせばFDAから税制面での優遇措置を受ける事が可能である。製薬企業は、研究開発費用の増大に伴うパイプライン摩耗率の増大から、新規疾患領域に展開しようとしている。ここではそういった希少疾患についてレビューする。

 1990-2030年の将来の予測を含めたトムソン・ロイターのデータベースから、オーファン・ドラッグとして86種類、コントロールとして非オーファン・ドラッグ291種類を選び、解析した。オーファンか否かでは疾患領域が全く違うが、オーファン・ドラッグと非オーファン・ドラッグは10%が一致しており、さらに抗癌薬の47%がオーファンで利用されている点は顕著である。現在ではオーファン・ドラッグは製薬企業売上全体の22%を占めるにいたり、2001年から2010年の売上に関する年間成長率(CAGR)は25.8%で、非オーファン・ドラッグの20.1%を上回る(Fig. 1a)。先述の承認数の年間成長率増加と合わせて考えても、無視できない大きな市場に成長していると考えて間違いない。希少疾患市場は今後もさらに規模を拡大すると考えている。オーファン・ドラッグの現在価値(PV)は1兆410億ドルで、非オーファン・ドラッグの現在価値(PV)は3兆3440億ドルである。これを医薬品1つ当たりに換算すると、オーファン・ドラッグが121億ドル、非オーファンが115億ドルとなる。年間の価値に換算すると、オーファンが6億3700万ドル、非オーファンが6億3800万ドルとなる(Fig. 1b)。この試算を考慮すれば、オーファン・ドラッグは非オーファンと遜色ない売上と理解できる。また、2000年に比べて2010年の現在価値(PV)は倍増しており、今後もオーファン・ドラッグはポテンシャルの高い市場として成長を続けると期待される。また、希少疾患は患者層が少ないが、速やかに新薬承認を獲得する事ができ、患者を囲い込む事が可能で、患者数が増えてもその疾患領域を独占状態にする事ができ、高い価格設定によって収益を確保できる。たとえば、希少疾患の発作性夜間ヘモグロビン血色素尿症治療薬ソリリスの年間医療費は約4000万円とオーファンの中でも最も高額で、米国の患者数は僅か4千ー6千人だが、2010年の売上は約540億円に達する。さらに、オーファン・ドラッグの収益創出力は、適応拡大の可能性が高い事に象徴されており、実に15%のオーファン・ドラッグが適応拡大で新たな希少疾患治療薬として承認されている。オーファン・ドラッグのトップ10のうち6つは複数の希少疾患治療薬として利用されており、単独の疾患治療薬が平均81億ドルの売上であるのに対して、複数の疾患治療薬として利用されているものは、平均して343億ドルの売上を有する。192個のオーファン・ドラッグのうち、145個は希少疾患治療薬として最初に承認されており、残りの47個は非オーファン・ドラッグによる適応拡大であった。この事を考慮すれば、まず、希少疾患を狙って開発する事が有効である事が理解できる。また、192個のオーファン・ドラッグは、8.3%が非希少疾患に、12.5%は別の希少疾患治療薬に適応拡大していた。

オーファン・ドラッグが、非オーファン・ドラッグ以上の正味現在価値(NPV)を持つかは単純比較できない。しかし、オーファン・ドラッグを規制当局に申請するにあたり、手数料の免除、研究開発費の補助、税制上の優遇措置によって研究開発費を抑制できるというメリットがあるのは重要である。一方で、希少疾患はエンドポイントが不明であったり、患者がどこにどの程度いるのか分布を特定するのが困難であり、難しさはある。しかし、臨床期間は、フェーズ2では非オーファンが平均5.42年であるのに対して、オーファンは平均3.9年と短くて済む(Fig. 2a)。また、オーファン疾患は、単一遺伝子異常の結果である事が多いので、ターゲットを特定すればその薬剤開発に集中する事で研究開発を成功させる確率は高まる(Fib. 2b)。

ここで示したように、オーファン・ドラッグの開発と実用化に向けた投資と経済的価値は、非オーファン・ドラッグの薬剤に比べても、見劣りするものではない。特に、より小さな患者層をターゲットにする希少疾患では、そのベネフィットは顕著である。オーファン・ドラッグの経済的価値を高める数々の重要なドライバーが既に存在する。ここでは、そのドライバーを研究開発関連と商業関連に大別した(Fig. 3)。研究開発に関連する経済的価値創出のドライバーは、米国オーファン・ドラッグ・アクト(ODA)による支援(例えば、税額控除、研究開発助成金、FDA免除料)だけでなく、臨床開発と規制当局の承認の確率が高い点、タイムラインが短い点があげられる。商業関連の経済的価値創出のドライバーは、プレミアム価格の設定が可能、患者の囲い込み、比較的低いマーケティング・コストと長い市場独占権があげられる。

特定の希少疾患、オーファンの患者分布を特定できれば、研究開発は推進できる。また、希少疾患の薬剤開発は、疾患の中で細かく階層化された疾患を考慮する事で、階層型医療として扱う事ができる。この階層化された疾患の考え方によって、オーファン・ドラッグの研究開発をオーファンの分子標的とパスウェイを元に非オーファン治療薬へと展開する事ができる。たとえば、後期黒色腫では、50以上のオーファン・ドラッグ指定を従えている。 階層化された疾患の考え方は、細分化された疾患を分子情報(病因、病態、治療、アウトカム、遺伝子型から表現型の相関など)を元に定義づけられる。オーファン・ドラッグの開発と実用化のためには、この考え方が有益になると思われる。
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テーマ : 科学・医療・心理
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