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フッ素性質を使いこなすターゲット横断的ナレッジ活用

Cox CD, Coleman PJ, Breslin MJ, et al. Kinesin spindle protein (KSP) inhibitors. 9. Discovery of (2S)-4-(2,5-difluorophenyl)-n-[(3R,4S)-3-fluoro-1-methylpiperidin-4-yl]-2-(hydroxymethyl)-N-methyl-2-phenyl-2,5-dihydro-1H-pyrrole-1-carboxamide (MK-0731) for the treatment of taxane-refractory can. Journal of medicinal chemistry. 2008;51(14):4239-52.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18578472

 ここで報告されるMerckのKSP阻害薬MK-0731のドラッグデザインでは、フッ素ケミストリーを使いこなした、合成面、hERG阻害回避、MDR基質回避のデザインがポイントになっている。
 初期のヒット化合物ジヒドロピロール誘導体10は、ナノモルオーダーの強力な活性を示すものの、hERG阻害が強い事が問題となった。問題解決に向けて脂溶性低減のために2位にヒドロキシメチルを導入した化合物11をデザインして合成(Scheme 1)。合成ルートは、フェニルグリシンメチルエステルのアミンをベンジルイミンで保護し(3)、メタアリールジクロリドでα位をアルキル化、ベンジルイミンを脱保護と同時に2つめのアルキル化を完遂してピロリジン誘導体4を得る。2位のエステルを還元してアルコールとし、ピロリジン1位とトリホスゲンで分子内カーバメートを形成させて保護する(5)。ピロリジン4位の2重結合をオゾン酸化でケトン6にし、トリフラート化、続く鈴木カップリングで4位にアリール基を導入した(7)。分子内カーバメートを塩基加水分解で開環し、得られたアルコールをTBS保護、光学分割の後にピロリジン1位をトリホスゲンでウレア化、TNBS基を除去して目的物を得る。ヒドロキシメチルの導入された化合物11は、6nMの強力な活性を保持し、脂溶性低下の効果もあってhERG阻害は確かに軽減した。しかしながら、水素結合ドナーとなるアルコール置換基の導入の為に、MDR基質となるリスクが高まった。hERG阻害を低減させたままMDR基質のリスクを解消する為に、ピペリジン1位の塩基性をファインチューニングする手法をとった。その結果、pKa7.5のシクロプロピルアミン15とpKa7.6のフルロエチル14でhERG阻害を回避しつつ活性を保持し、MDR基質のポテンシャルを解決した。シクロプロピルアミンはバイオアクティベーションのリスクが懸念され、実際にバイオアクティベーションの毒性が問題となった。そこでフルオロエチル14を精査化合物に選定した。しかし、この化合物は予期せぬ事にラットで死亡例が見られた。この原因は、代謝物として脱アルキル化し、生成したフルオロアセテートによる毒性と推定された。電子吸引性を有するフッ素官能基による塩基性の低減を使いこなす為に、Merckでの5-HT1D作動薬の経験を利用する。すなわち、ピペリジン3位にフッ素を導入すれば、アキシャル位でpKaが1、エクアトリアルでpKaが2低下する事が確認されている。このナレッジをここで利用し、3-フルオロピペリジンを導入した。その結果、アキシャルタイプの化合物30すなわちMK-0731で、pKaが7.6で、細胞系でも5.3 nMの強力な活性を示し、MDR基質のポテンシャルも低く、hERG阻害のリスクの低い候補化合物を見出した。
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