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60年の創薬イノベーションから学べ

Munos B. Lessons from 60 years of pharmaceutical innovation. Nature reviews. Drug discovery. 2009;8(12):959-68.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19949401.

「Lessons from 60 years of pharmaceutical innovation」という題して創薬の過去60年と現在を解析、今後の提案がされている。

ここでの下記4つの提言にはマネージメントと研究者個々人の裁量という二つのコンフリクトが内在するが、これをどのバランスで研究所を組織化させるかは、ひいてはコーボレートガバナンス、企業風土をどうしたいのか、製薬会社としてのアイデンティティ、軸足を何処におくかにも関わるマターであり、研究開発型企業の経営者が考えておくべき事でもある。

1)一定の新薬創出という概念から脱却したイノベイティブな変換、居心地の良い現状からの脱却によるR&Dの根本改革
2)ラジカルで成功体験のある外部ソースをビルディングブロックとし、これらを組み合わせた企業間連携により、いつでも最先端の「グローバルブレイン」にアクセスできる体制の構築。これによって、コスト削減と敏捷性を獲得することが可能、破壊的革新を機能的に運営。
3)短期間の間の最優先事項としてイノベーションの周辺へと資源を投下、破壊的革新を指向(アーリーフォロアー)。
4)実際のところ、製薬会社の成功は、“ブラックスワン” (予想不可能だが、一度起きるとそのインパクトが強大で、起きた原因を後知恵解釈しかできない事象)に依存している。ブラックスワンによるブロックバスターの前では普段の日常業務などほとんど意味のない作業と化す。そもそも、企業リーダーがその規模をスケーリングし、自動化できるといった考えが誤り。重要な事は個人責任の消失、透明性、そして研究者の情熱。


以下に内容抄録。

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Fig. 1a:承認される新薬の個数は、1990年代までフラット、その後急上昇し、元に戻りつつある。この間に低分子以外にバイオ医薬(核酸・ワクチン・抗体など)が台頭。
Fig. 1c:4300以上の企業が創薬にトライしてきたが、新薬承認にこじつけたのはわずか6%の261社。しかも現在でも生き残っているのは32社で12%、残りの229社は破綻したか吸収合併。さらに新薬の60%近くがメガファーマ21社で独占、そのうち10社は既に吸収合併などで現在は存在せず。

Fig. 2a,b: 新薬創出が困難といわれている中で驚くべき結果は、メルク、リリー、ロッシュは1950年以降ほぼコンスタントに新薬を創出している。一方で、J&J、ワイス、ファイザー、BMSも新薬は出し続けているがその効率は、先の3社に比べて低く、M&Rでの吸収合併で巨大化したことがカルチャーの改革に直結していない事を指摘。
Fig. 2c,d: 製薬企業の数と承認されている新薬の数には明確な相関があり、ポアソン分布で説明可能、この視点での成功確率は統計的にはそれほど変化していない。

Fig. 3: 新薬の開発費は毎年13%以上指数関数的に増加しており、驚異的なインフレであり、新規作用機序の新薬は減少、影を潜めている。一方で開発費用を個別に見て見ると、ファイザーが2000?2008年の間に600億ドル(60兆円)投下して9個承認されたのに対して、プロゲニックスは4億ドル(400億円)で1個(レリストル)を承認されており、その効率は全く異なる。2008年に関して見て見ると、1つの新薬を見出すに投じた研究開発費が10億ドル(1兆円)以下におさめているのはわずか27%のみで、この問題と意味するところを十分に理解する為には、より詳細な解析が必要である。

審査当局の規制の高さが研究開発費の増大に寄与している事実もあり、バイオックス、バイコール、トログリタゾン、シサプリドといったブロックバスターの回収はこの典型例である。一方で興味深い知見は、1983年にアメリカで既に審査当局の規制は厳しくなっていた。その為にアメリカの製薬会社は一時期はヨーロッパ、日本の製薬会社に比べて苦労した時代もあるが、結果的にアメリカの製薬会社は効率的にパフォーマンスを上げられる組織へと変貌する事に成功した。一見パラドキシカルなこの事実は、高いハードルに見合ったイノベイティブで安全性に優れた化合物を開発化合物として選抜するようになったことがその要因で、逆に審査の甘い国ではその国では承認されても、世界に討って出る代物とはなりえていないのである。

Fig. 4:1950年代の新薬といえば70%がメガファーマ由来であったが、1990年以降は低下、一方でバイオベンチャーといった小さな企業は以前は30%であったのに対して現在ではメガと同等の50%を占める。この要因は、(バイオテックブームでの)ベンチャーの数自体の増加、生産性の向上から説明できる。ベンチャー同士にはネットワークもあり、メガファーマは基礎研究からの新薬創出に力をいれ、規制当局のハードルもベンチャーとメガへの影響は違う(多くのバイオベンチャーはオーファンであったりアンメットを狙って審査に持ち込む事を優先する)。規模が大きければよいというものではなく、要はどのようなやり方で創薬に切り込むかにかかっている。

Fig. 5a,b: 吸収合併が先細りのパイプライン強化になるか、について、“ビフォー・アフター”でポアソン分布で比較してみると、吸収する方の大企業の生産性は変わらない、もしくは低下する一方で、吸収される側のベンチャーの生産性は向上している。新薬創出数の“ビフォーアフター”で見比べると、吸収合併後に改善したのが44%、低下したのは36%、一方で吸収された側の企業は、改善したのは80%、残りは低下、一方で吸収する大企業は逆の結果で、70%が低下、残り30%が改善であった。この結果を「1+1=1」と揶揄するアナリストもいる。

Fig. 6: 329個の新薬のトップセールスを比較した結果、ブロックバスターは21%で、製薬会社はこの創出の為に多額の資源を投下しているにも関わらず、また、これ以外はやらないとさえ考えているにも関わらず、時系列でこの存在比率は変化していない。最も悩ましいのは、企業として崇高なコンピテンシーであるはずの顧客指向(患者の悩み、苦しみ、そこから解き放つ為の創薬)は何の将来の成功確率を高める為のナビゲーターにもならない。一方で、まもなくやってくるブロックバスターの特許切れ「特許の崖」でトップ13企業は一時的な収益減少はあるものの、中長期的に持ち直すビジョンを描いている。しかし、このようなイメージは株主を納得させるものではなく、株主の期待に応える方法は、M&Aやコストカット・リストラといったビジネスモデルではありえない。

リサーチマネージメントの改革としてここで4つの提言をする。

1)一定の新薬創出という概念から脱却したイノベイティブな変換、居心地の良い現状からの脱却によるR&Dの根本改革
2)Innocentive, chorus24, public-private partnerships, open-source R&D2, X Prize, innovation networks, FIPNetといったラジカルで成功体験のある外部ソースをビルディングブロックとして、これらを組み合わせてた企業間連携により、いつでも最先端の「グローバルブレイン」にアクセスできる体制をとる。これによって、コスト削減と敏捷性を獲得することが可能、破壊的革新をうまく運営。
3)短期間の間に最優先事項としてイノベーションの周辺へと資源を投下、破壊的革新を指向する。
4)企業カルチャーの見直し。製薬会社の成功は、“ブラックスワン”の存在に依存している。ブラックスワンによるブロックバスターの前では普段の日常業務などほとんど意味のない作業である。そもそも、売上高を正確には予測などできず、ポートフォリオマネージメントなどをリスクマネージに利用しようとするが、「特許の崖」はクリアできていない。企業リーダーがその規模をスケーリングし、自動化できるといった考えに誤りがある。重要な事は個人責任の消失、透明性、そして研究者の情熱。
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趣味で読んだ創薬化学論文を綴った日記。

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