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戦略的提携はWin-Win関係で「三方よし」

Havenaar M, Hiscocks P. Strategic alliances and market risk. Drug Discovery Today. 2012;(2010).
Available at: http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S1359644612001122

製薬企業の戦略提携の71%が新薬承認される前に中止している。驚くべき事に薬効不足や安全性の問題で中止した理由は僅かに33%に過ぎず、多くが戦略的・経済的事由で中止していた。この背景には契約が固定的で変更不能という性質があり、契約段階では自分たちの貢献を過大評価し、パートナーの貢献を過小評価するように意識が働く上、市場の流動性と不確定性から期待するような売上になる事はまずないので、思惑通りに事態が遂行しないとパートナーシップを解除してしまうという状態が存在する。しかし、提携の失敗は双方にとってコスト面、イメージ面を損なう。このような状況を打開する為に、変動型ロイヤリティと柔軟性のあるマイルストーンを設定し、前合意段階での余地を残し、双方の利害をオフセットする事で、たとえベストシナリオのブロックバスターが得られなくても、患者に有効な新薬を上市するWin-Winのモデルを提案する。自分だけが儲かる事を考えるよりも、パートナーシッフの価値を最大化するように行動する事で、ひいては患者にとっても恩恵が得られるのである。


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医薬品業界の製品開発における戦略的提携とマーケティングは重要な役割を果たす。しかし、現状の多くの提携は、化合物が市場に出る前に中止されてしまう。ここでは、現行の不適切な交渉によって戦略的提携が失敗する事例について紹介する。提携契約はしばしば自由度がなく、市場の状況に応じて変更が効かない。ここでは、不確実性の高い市場において、製薬業界が提携交渉を有利に進める為の提携交渉モデルを提案する。このモデルでは、変動型の使用料とマイルストーンの支払を利用する。ライセンス契約は、製薬業界のビジネスモデルでは鍵となるので、ライセンスのプロのみならず、製薬業界に携わる誰しもの関心を寄せる内容である。

リキャップ・デロイッテの調査によると、1977ー2010年の提携の製品の71%が新薬承認される前に中止している。しかし、薬効不足や安全性の問題で頓挫したのはせいぜい33%程度であった。また、ひとたび中止されたにも関わらず、提携製品の55%がライセンサー側(導出側)によって検討が続けられている。このような背景を鑑みると、提携の多くは、戦略上もしくは経済的理由で中止している。しかし、中止の決定は高くつく。それは機会の喪失であり、製薬業界の質の面でもイメージダウンにつながるからだ。また、提携化合物の中止決定はとりわけライセンサー側の株価の下落を招く。たとえば、セルテックのTNFモノクローナル抗体シムジアは、2003年にファイザーは再交渉に失敗して権利をセルテックに返還した。その結果、セルテックの株価は27%急落した。ところがその後、シムジアはクローン病治療薬として上市された。他の事例では、BMSと提携したエクセリキスの抗癌薬カボザチニブは2010年に提携が中止され、エクセリキスの株価は16%下落した。しかし、エクセリキスは、未だに複数の癌を適応疾患として、開発を継続している。


<現行の提携>
ほとんどの契約は、ベンチマークと割引現在価値(DCF)解析によって判断されている。しかし、ベンチマークが契約の価値を決定づけるのであるが、市場動向の変化によってそのベンチマーク自体が時代遅れのものになってしまったり、入手可能なベンチマークのデータが契約に有利になるようにバイアスがかけられたりしてしまう。DCF解析は、式1のような売上予測式から算出される。しかしDCFモデルの欠点は、統計的計算であり、流動的な市場変化には対応していない。たとえば、バイオベンチャーA社と製薬企業B社がTable 1に示すような開発提携し、その売上の分配を1:4の比率に設定したとしよう。実際のところ、1:4の比率が奏功するのは、予想売上のピークの値を達成した時だけである(Fig. 1)。また、ピークの売上予測を8億ドルと設定したにも関わらず、実際の売上が2億2800万ドルに落ち込んだ為に、提携を打ち切ったとすると、NPV(正味現在価値)はマイナスになってしまう。高額なマイルストーンはライセンサー側には魅力的だが、契約は固定されて自由度がないので、うまくいかなかった時にパートナーシップを打ち切られる危険性をはらんでいる事を忘れてはならない。このような契約状態の為に、経済環境や薬剤臨床プロファイルが変わると、本来患者に利益をもたらす可能性を完全に終結させてしまう事を示唆している。契約の財務条件は、パートナーシップを結ぶ両者の経済的な成功の為に重要な要素である。よって次に、市場の不確実性を考慮にいれた契約の財務条件の枠組みを提案する。


<不確実性を考慮した枠組みの設定>
一般に評価モデルは交渉段階で共有される事はない。その結果双方の当事者は、パートナーシップにおいて、自分たちの貢献を過大評価し、相手の貢献を過小評価してしまう傾向を持つ。これが、マイルストーン達成に対する厳しい査定を設定し、中止のリスクを高める事になる。したがって、パートナーがこの提携によってどのような価値創出を期待しているかを理解しておく事は重要である。また提携は、1回の商談で決定するものではなく、将来予測の共有の上にパートナーシップを構築していくべきものである。さらに言うなら、提携から得られる経済的収益はゼロサムゲームではなく、パートナーシップに双方が如何に努力を注ぎ込むかに依存している。よって、ここで、両者がパートナーとして交渉プロセスを進める上で、ジョイント・モデルを構築する事を提案する。

モノクローナル抗体mAb-1を事例にとりあげ、標準的なM&R契約について考えてみる。市場動向の変化は大きいので、契約には複数の要素から柔軟性を組み込む事を提案する。たとえば、変動型の使用料、マイルストーンの柔軟性を組み合わせて利用する、といった具合だ。また、別の可能性として、疾患やマイルストーンに応じて使用料にキャップをつける方法もあり得る。変動型の使用料は、ピーク時の売上高の不確定性を補完するアプローチになりうる。現行の提携は、主に最も売上高が高い時にのみ対応している。しかし、ここでは使用料には上限と下限の両方のシナリオを設定して調整する事を提案する。また、マイルストーンに関しても通常は柔軟に対応する事はない。マイルストーンに関してもフレキシブルに設定し、製品の売上規模をパートナーで再評価するようにすれば良い。この一つの方法は、両当事者が合意した市場予測モデルを使用する事である。また、ある状況下では、開発コストの変化も考慮する必要があるだろう。たとえば、Table 2とFig. 2のようにNPVと売上高に応じて使用料を変化させれば、4億ドル以上の売上では安定的に使用料は設定され、たとえ4億ドル以下であっても、その使用料を変動させる事で、双方に納得感と収益が得られるようにケアする事が可能となる。


以上のように、この報告では、市場の不確実性と不透明性の中で、製薬企業が提携契約を有効に活かす為のシンプルな枠組みの設定を提案した。変動型の使用料とフレキシブルなマイルストーンによって、市場での最良と最悪のケースに対応する事が可能になる。この手法により、前合意段階の部分を残す事で提携を健康的な状態に保つ事ができる。たとえブロックバスターにはならなくとも、有効な新薬として患者に届ける事ができる。もしかしたら、バイオテック企業は、これでは市場リスクの大半を自分たちが負うのではないかと懸念するかもしれない。バイオテック企業は、リスクを最低限に抑えかつ、マイルストーンは最大限手に入れたいからだ。しかし、固定化したマイルストーンは、パートナーシップの終了のリスクを高める。このような化合物が市場に出る可能性を完全に絶ってしまうこのような状況は回避すべきである。さらに、提携の中止は、製薬企業が誤った判断をしたのだと市場にネガティブな印象を与えてしまう。薬剤を市場に到達させる確率を高める事は、このような市場リスクを相殺する効果も期待できる。提携契約の際には、自分だけが儲かる事を考えるよりも、パートナーシッフの価値を最大化するように行動する事の方が重要なのである。
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テーマ : 科学・医療・心理
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