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「失敗する候補化合物を効率的に創出する事ほど無駄な事はない」目先の効率性より有効性の価値に目を向けよ

Elebring T, Gill A, Plowright AT. What is the most important approach in current drug discovery: doing the right things or doing things right? Drug Discovery Today. 2012;(2010).
Available at: http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S1359644612001511


 患者に確実に価値ある新薬を届けたいならば、創薬において正しい事をする事が重要なのか(有効性)、物事を正しく行う事が重要なのか(効率性)("Doing the right things (effectiveness) or doing things right (efficiency)?")、アストラゼネカの研究者が本質的で重要な問題提起をしている。ここでは今日の創薬で直面している以下の課題を取り扱う。すなわち、研究開発におけるスピード・コスト・質の関係、研究開発成果の質に影響するパフォーマンス指標をどのように選択すべきか?、リーダーシップとマネージメントの重要性、プロセスの方向性がどのような影響を与えるのか?、正しい創薬ターゲットとリード化合物を選定する事の重要性、薬物ーターゲットの速度論的、熱力学的データを使う事がリードの選定と最適化で成功確率を高める事、といった課題である。創薬の成功確率が課題になる現在、製薬企業はより効果的で(正しい事を実行)、より効率的(正しく実行)になる必要があるが(言葉の定義は http://www.dailyblogtips.com/effective-vs-efficient-difference/ の記事を参照)、さらに踏み込むなら、有効性と効率性のどちらにフォーカスする事が重要なのか?


<質の高い医薬品研究開発はタイムラインとコストを改善するが、だからといってタイムラインとコストを削減すれば医薬品の質を改善するどころか悪化させかねない。必要条件が必ずしも十分条件とならない事に似て、逆は必ずしも真ならず>
製薬企業は革新的な医薬品と強固なパイプラインを構築しようと躍起になったが、その努力とは裏腹に、ここ10年以上の長らくの間で多くの製薬企業がパイプラインの枯渇を経験した。合併、買収、創薬の高速化、研究開発プロセスのコスト削減によって収益性を維持する為のパイプライン創出は、今や業界のおなじみのテーマとなっている。これを実現するための戦略として、より速く、より少ない担当者による高スループット型の手法で、少しでも多くのプロジェクトを並行させて走らせてきた。この戦略によって潜在的に有望な新薬候補を迅速かつ低コストで見つけることが期待されたのであるが、単調な(つまり、表面的な)サイエンスによって見出された候補化合物で、効果に関して不十分なデータを使う事で提出資料を作成する傾向ができてしまい、臨床試験で失敗する確率は増加した。この成れの果てとしてスピードアップとコストカットで生産性を評価した結果、パイプラインのラインナップとなる化合物の質は低下し、収益を低下させてしまった。一方で、ヒトへの外挿性を担保するためのトランスレーショナルな生物学やバイオマーカーといったより先端技術に投資して質の向上に務めた努力は、短期的にはコストと時間を超過したように見えたが、長期的には時間とコストを削減する成果をあげ、ついには成功確率と生産性を向上する事に成功するのである(Fig. 2)。

<あまりに多くの誤ったパフォーマンス指標が製薬企業の成果の質に悪影響をもたらす>
「あなたが手に入れる事が出来るのは、測れるものだけである」というようなパフォーマンス・マネージメントが広く認識されている。その流れから、あるパフォーマンス指標が不適切な行動を引き起こさせる。たとえば、創薬プロジェクトの数をカウントし、各マイルストーンを突破するように仕向け、結果として多くのプロジェクトが並行して生き残ってしまい、それらは行けるところまで生きながらえさせられる。しかし、もしマイルストーンをクリアした際の成功報酬が化合物が上市に達した時のみに与えられるものだとなれば、人々はそのような行動には出なくなるだろう。個人の目的は常にチームの目的にアラインされている必要があり、チームの目的は創薬プロジェクトの目的にアラインされている必要がある。そして、プロジェクトの目的は会社の目的にアラインすべきである。質の高い革新的なサイエンスを通して、長期的に持続可能で堅固なパイプラインを構築する事に焦点を当てた環境を育成する事は重要である。しかし、その為にあまりに細かい短期的なパフォーマンスに焦点をあてた指標によって科学者の意欲を損なわないように留意しなければならない。

<創薬にとってはマネージメントよりもリーダーシップの方が重要>
リーダーシップもマネージメントも非常に重要である。マネージメントのコンサルタント、ピーター・ドラッカーは「マネージメントは物事を正しく行う事、リーダーシップは正しい事を行う事」と言っている。マネージメントは、効率的で力強い性質を持つ。一方でリーダーシップは、明確かつ説得力のあるビジョンを持ち、コーチングを通して同僚と頻繁に意見交換できる。そして、マネージメントはリーダーシップに取って代わるべきではない。なぜならば、製薬企業ではマネージャーが自分のタスクや会議に頻繁に拘束されてしまうリスクを持っているからである。中小のバイオテックでは、マネージャーが同僚の近くを歩いて回っているので、現場にとってマネージャーの存在は役立つであろう。一方で製薬企業の研究者は、指標でマネージメントされるよりもコーチングやリーダーシップから受ける恩恵の方が圧倒的に大きいのである。

<創薬での過度なプロセス・シンキングは、熱意や創造性、直感、革新、セレンディピティを阻害する>
プロセスには、意思決定ポイントとアクション(業務もしくはタスク)のいずれかが手順として含まれる。創薬ユニットが実装しているプロセスは、有効性と効率性を向上させる。たとえば(i)各プロジェクトはリード最適化の化合物に関してDMPKを検証するのに交渉を必要とする、(ii)DMPKの対処能力に応じて定期的に化合物を評価できる状態にある、という2つの状況を比較すれば明らかに後者が優れいている事からも理解できる。しかしこのようなプロセスはその構築段階で、熱意、創造性、直感、セレンディピティ、そして革新を阻害しないように考慮する事が極めて重要である。プロセスの方向性が理にかなっている創薬活動は存在するが、創造性主導の活動はプロセスの方向性とは合致しないかもしれない。

<正しい薬理ターゲットと化合物リードの選定が創薬の重要な意思決定となる>
ヒトで薬効が期待できるターゲットを選別するポイントとして、
1)病態モデル動物があり、ヒトの疾患につながる明確なバイオマーカーとPDマーカーがある事。
2)出発点となるリード化合物が存在する事。

<今日のリード最適化は臨床入りを失敗させている>
現在の一般的なリード最適化は効率的ではあるが、より効果的な戦略をとるなら、ターゲットー薬物間速度論的にも最適化して、適切なPKPDを確保する事であろう。

<ターゲットー薬物間の速度論的、熱力学的データを利用してリード選定と最適化での成功確率は大幅に改善しうる>
成功している多くの医薬品は、非平衡の速度論を示し、滞在時間の長いスロー・オフセットで、血中暴露時間の短いプロファイルを示しているものがある。また、ファースト・イン・クラスとベスト・イン・クラスでは、エントロピーとエンタルピーの寄与が異なる。

<創薬における有効性は、効率性よりもずっと重要>
伝えられているところによると、ピーター・ドラッカーは「間違った事を効率的に行う事ほど無駄な事はない」と言ったそうだ。これは創薬に変換する事ができる。つまり、「失敗する候補化合物を効率的に創出する事ほど無駄な事はない」のである。したがって、創薬における有効性(正しい事の実行=サイエンスと候補化合物の質の向上)は、効率性(正しく実行=明確に定義された創薬プロセスの設計と実装)よりもずっと重要なのである。これまでのところ、製薬企業の改善に向けた努力はスピードとコストの観点での効率性と有効性にフォーカスしている。株主への投資収益とリターンの為にも、研究開発でいち早く薬を上市させる為のコストとスピードは重要であり続けるであろう。しかし、将来的には、創薬の有効性改善は、サイエンスの質(妥当性、正確性)と候補化合物の質(薬効と安全性)を重視すべきである。長期的には、製薬企業は、最終的に医療の専門家、患者、支払機関に持続可能な価値を提供できるように、より効果的な科学や薬剤候補の質に焦点を当てて成功するように行動する必要があるのである。
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テーマ : 科学・医療・心理
ジャンル : 学問・文化・芸術

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趣味で読んだ創薬化学論文を綴った日記。

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