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臨床情報と研究情報の融合、ケモインフォマティクスの活躍に期待

Scheiber J. Back translating Clinical Knowledge for use in Cheminformatics—what is the potential? Bioorganic & Medicinal Chemistry. 2012.
Available at: http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0968089612003513

これまでの創薬は、化合物を臨床治験に進める為の意思決定として主に研究段階の情報を利用する、 "ベンチ(研究)からベッドサイド(臨床)へ"のアプローチにフォーカスしている。しかし、見落とされがちな事は、 "ベッドサイド(臨床)からベンチ(研究)へ"のアプローチによって臨床情報を研究に有効利用できるという事である。一つには市販薬の豊富な化学構造情報と臨床データをケムインフォマティクス解析によって活用できる。たとえば、市販医薬品の部分構造情報は、有害及び有益な双方の作用についてのナレッジでもあり、優れた薬物設計を目指した新規化合物合成のフラグメントとして使用する事ができる。ここでの有害とは市販医薬品から望ましくない作用に関連づけられるもので、部分構造がオフターゲット活性の要因になっている、といった情報である。
さらに、臨床データは研究段階のターゲット探索、ターゲット・バリデーションのあらゆる段階で利用可能である。ここにケムインフォマティクスが大きく貢献できると考えられる。

臨床情報を有効活用するには、現在の創薬に対する考え方を大きく変える必要がある。 そもそもリード探索や最適化の解析時にインプットしておくべき患者の情報として、誰しもが毒性に起因する部分構造検索を取り入れたいと思うだろう。しかし、臨床後期および市販後データを利用したケムインフォマティクスの活用は、たとえば特定の望ましくない副作用やオフターゲットとの作用を避ける為のフィルタといったもっと斬新なアイデアを実践できるようになる。さらに踏み込むなら、リポジショニングにとどまらず、患者をサブ・ポピュレーションに分類する事でのオーダーメイド医療への活用が期待される。表現型の情報を提供する電子カルテ内のゲノムの情報は今やホットトレンドである。遺伝と疾患の関連には前提条件があるものの、たとえば最近の二つの顕著な事例が象徴的である。まずPlexxikonのVemurafenibであるが、これはB-RafとMEKのパスウェイを阻害するが、 B-Rafに共通のV600E変異を持っている場合のみVemurafenibは奏功する。この変異を有するメラノーマ患者だけが治療できる。Vemurafenibはこの特定の変異を有していないメラノーマ細胞を抑制することはできない。さらに印象的な別の事例は、VertexのIvacaftorである。これはわずか4%の患者で見つかったCFTR遺伝子のG551D変異を標的とすることで特定の嚢胞性線維症患者において奏功する。塩化物イオンは、CFTRタンパク質によって構築されたチャネルを介して細胞膜を透過する。これは、汗、消化酵素や粘液の生産に不可欠な段階である。患者がG551D変異を有する場合はCFTRタンパク質が効果的にこのチャネルを開かず、イオンは透過できない。このイオンの透過できないという問題をvacaftorは改善する事ができる。この2つのケースでは、薬物の作用機序に対する患者の遺伝的変異に明確な相関がある。これらは極めて特別な事例であり、この結果が直ぐに別の薬剤開発に利用できるというものではない。しかし近い将来、患者の遺伝子のみならずプロテオミクスすらも詳細に記載されたデータベースが入手可能になるであろう。臨床データのノイズは今以上に減り、患者特異的なオンターゲット、オフターゲットが容易に判別されるだろう。遺伝子の配列データ、ターゲットに関する知識は絶えず増加していくだろう。結果として次世代シーケンシング技術の周辺情報は膨大になり、非常に詳細なレベルで臨床情報の読み出しが実施され、このデータの多くが研究者にとって利用可能になる。同様の流れで、患者についての治療薬がどのように作用するのか?どのような問題があるのか?投与量はどの程度必要なのか?どんな症状なのか?他の薬剤との組合せはどうなのか?といった表現型の情報も収集されるであろう。そして将来的にはこれらが電子カルテ内に構造化された方法で収集される事になる。すでに利用可能な化学データベースとこの貴重な臨床データを組み合わせて、特定の化合物のフラグメントを他の記述子とリンクさせ多次元で大規模解析を実施し化合物の最適化でプロファイルを操作できるようになる事を意味している。最近、いくつかの報告では、臨床情報を初期の創薬段階に利用する事が例示されている。特に臨床での副作用情報は、化学と生物の根底部分を理解する上で重要である。個別化医療、薬理遺伝学、次世代シークエンシングは相互に関連して捉えられるが、これは真の個別化医療が、患者の遺伝子配列をシーケンスし、化合物の個別の代謝の薬理遺伝学を理解して初めて可能になるからである。また、ケモゲノミクスの知識によって、薬剤の追加効能を探索できるかもしれない。この新たな効能追加には適切な患者層の選別も重要な要素である。

ケムインフォマティクスは、種々の情報を組み込むことにより、その展望を広げ、有能な技術のために大きな利用の場を提供し、現在の使用事例を拡大する事ができる。たとえば夢あふれる使用例として、化学的類似性が利用可能なバイオマーカーを特定し、コンパニオン診断テストの開発を推進するようなアプローチを想定できる。これは特定の化学部分構造への遺伝子発現プロファイルの変化をリンクすることによって達成できる。同じ変化が類似した構造を持つ分子で発生した場合は、ケムインフォマティクスによって駆動される非常に強力なヒントとなる。
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テーマ : 科学・医療・心理
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