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セリンプロテアーゼ阻害薬、構造を激的に変換

Graham TH, Shen HC, Liu W, et al. The discovery of non-benzimidazole and brain-penetrant prolylcarboxypeptidase inhibitors. BIOORGANIC & MEDICINAL CHEMISTRY LETTERS. 2011.
Available at: http://dx.doi.org/10.1016/j.bmcl.2011.10.060



セリンプロテアーゼであるPrCP阻害薬として、これまでにMerck社は合理的な薬物設計によって、強力な活性を持つドラッグライクな化合物の創出に成功してきた。

http://medicinalchemistry.blog120.fc2.com/blog-entry-497.html

http://medicinalchemistry.blog120.fc2.com/blog-entry-498.html


 このように抗肥満薬として合理的ドラッグデザインで見出した第一世代PrCP阻害薬1は、eDIOマウスでPrCPのメカニズムベースでの抗肥満作用を示した。この化合物はPgp基質となり、脳内移行性は低く、抗肥満作用は抹消での作用と考えられる。構造をドラスティックにホッピングさせた第2の化合物2でも高肥満作用は確認されたが、ノックアウトマウスの実験から薬効はメカニズムベースでないと判断された。PrCP阻害薬のメカニズムは単純ではないと推定され、抹消と中枢での作用を明らかにすべく、リガンド探索を続行する事とした。ここでは、脳内移行性に優れた化合物を探索し、中枢でのPrCP阻害作用の解明を目標に設定している。
 
 2系統の化合物1、2に共通しているのは、PrCPの内因性ペプチド基質Pro-Xxx-OHをミミックしたピロリジンベンズイミダゾール骨格である。ベンズイミダゾールは、加水分解耐性を付与したプロリンアミドの等価体として機能している。ここでのドラッグデザインは、この内因性ミミックの構造から大きく離れ、新規なドラッグスペースへと展開する事である。特に、アミドミミックのベンズイミダゾールの水素結合ドナー・アクセプターは脳内移行性を低下させる要因になっていると考えられた。よって、このピロリジンアミドを大きく変換したアミドタイプ、化合物2から展開した新規ケモタイプ3をデザインした(Table 1)。ベンジルメチルアミン3aで1.5μMの活性が保存され、ベンゼン環へのフッ素導入が5倍の活性向上、さらに塩素導入で10倍向上の151 nMの活性を示した。アミドのアクセプター性を落とす為に、ブロッキング効果を期待してメチル基をイソプロピル基を入れた3dで21 nMまで活性が向上、続いてアミドのNHドナー性を低下させる為にメチル基上にフッ素導入、特にトリフルオロメチル化した3fで活性は17 nMに向上した。イソプロピル基・トリフルオロメチル基をベンゼン環に置換する事は許容、3gで活性は15 nM、ベンゼン環をピリジンにした3kで2.7 nMまで活性が向上、代謝部位となるメチレン部分のメチル化3n、ピリジンの配位能をブロックしたメチル体30はいづれも活性は減弱する(Table 1)。次に、第1のケモタイプである化合物1から、同様にピロリジンイミダゾールをアミドタイプ4,5を合成(Table 2)。これらはケモタイプ3と相関するSARを示し、活性はサブナノオーダーに達した。続く展開として、化合物3のピリジルオキサジアゾールを単純なフェニルにした6でも活性は保持、代表化合物(S)-6eは9乗の活性、細胞系でも12.6 nMの強力な活性を示した。一連の代表化合物のMDR膜透過性とPgp基質を検証したところ、ピリジンを有する化合物はPgp基質になるもののそれ以外は全てPgp基質を回避した(Table 4)。ワイルドタイプとMDRノックアウトマウスのi.v投与で、十分な脳内移行性を確保できている事を確認(Table 5)。ただし、クリアランスが高く、分布容積は大きく、経口吸収性には乏しい(Table 6)。よって、薬効確認は皮下投与で検証し、10 mpk, 30 mpkで強力な体重低下作用を確認した。ただし、ノックアウトでも体重低下してしまう事から、またもメカニズムベースのみにいる作用ではないと推定された。また、PrCP阻害レベルと薬効との相関から、PrCPを極めて高いレベルで阻害しなくては薬効が出ないと推定された。したがって、十分な薬効を獲得するには、良好な経口吸収性が必要と結論づけ、今後の課題としている。

 リガンド探索の困難なセリンプロテアーゼ阻害薬において、合理的ドラッグデザインで見出された阻害薬は、脳内移行性獲得の為に、その内因性ペプチドミミックのピロリジンーベンズイミダゾールのモチーフをも脱却した。ホッピングのプロセスで、ひとたびマイクロオーダーまで活性を低下させるが、初期のケモタイプのSARを取り込んで、一挙にサブマイクロオーダーの域に活性を高めた。続く、活性と中枢移行性を高めるアプローチ、つまりアミドの近傍に嵩高い置換基の導入、ドナー性低下のフッ素の導入、芳香環への展開、代謝部位ブロックや配位部位の近傍への嵩高い置換基の導入、低分子化のアプローチは極めて合理的で、最終的には芳香環2枚とアミド結合1つからなるシンプルな構造にまで磨き上げられた。経口吸収性こそ不十分であるが、一連の化合物の多くは、課題の脳内移行性を克服している。PrCPの抹消と中枢作用の検証の必要性の問題設定、MDRノックアウトを使った脳内移行性検証、PrCPノックアウトによるオフターゲット作用の切り分け、PrCP阻害作用レベルを検証する事での薬効の切れ味の確認。研究計画からドラッグデザイン、検証から次の課題克服へと首尾一貫した研究戦略である。前報までの2報から合わせて、その極めて合理的なドラッグデザイン、その変換プロセスでドラスティックに構造を変換させながら課題を解決する様は、 いつものメルクの勝ちパターンを顕示している。
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