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製薬企業の現状と生産性改善に向けた挑戦

Khanna I. Drug discovery in pharmaceutical industry: Productivity challenges and trends. Drug discovery today. 2012.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22627006

 生産性の低下、研究開発費の高騰、消えゆく知的財産権、先細るパイプライン、これらが製薬企業を前例のない危機へと向かわせている。ここでは製薬企業の生産性を落としている要因を追求し、打開策として「共生型イノベーション」を提案する。このモデルは、失敗のリスクを共有し、理想と現実ののギャップを小さくし、生産性を向上させる。このモデルの特徴は、パートナーシップによってコスト・エフェクティブに質を高める事にある。


 イノベーションは、製薬業界の力強さの源であった​​。数十年間、製薬業界は医療ニーズに応えるべく、命を救うような新しい治療法となる医薬品をいくつも提供し、治療選択肢を増やす事に貢献してきた。多くの疾患、とりわけ急性疾患の多くは治療可能となり、効果的に健康管理が可能になった。心血管、代謝、関節炎、痛み、うつ病、不安、がん、胃腸疾患、婦人科疾患、感染症といった疾患の新薬の発見によってQOL(クオリティ・オブ・ライフ)は改善し、平均寿命は向上した。 1990年代には、いくつものブロックバスター医薬品が創出され、製薬部門の立場をトップレベルにまで高め、製薬業界の黄金時代となった。1996年及び1997年には、FDAが新規化合物NME56個、バイオ医薬品NBE45個を承認した事が、黄金時代の象徴的結果である。

  2010年の医薬品全世界の売上高は8560億ドルであり、米国と欧州は、この売上高の約60%を締める。大手製薬会社はその収益の多くを研究開発活動に投じてきた。売上高に対する研究費の割合は他のどの産業に比べても常に最高レベルを維持している。米国製薬業界は2010年にR&Dに674億ドルを費やしており、売上に対して17%に相当する。研究開発費を回収できる医薬品が20%しかない事を考えると、これは高く付く投資である。


<<製薬企業の挑戦>>
 大規模な投資にもかかわらず、製薬業界は、生産性の著しい低下に直面している。研究開発予算規模が大きくなれば、それに比例して成功確率が高くなる事を保証するものではない。この数十年間、製薬業界は4300社が競合していたが、1つ以上のNMEを創出したのはわずか261社である。製薬企業の88%が他と合併するなどして姿を消しさり、生き残ったのは残りわずか12%である。以下の議論では、業界が直面している課題の概要を示す。

<高費用、高い確率での失敗>
 科学技術の進歩、大規模な研究開発の投資にもかかわらず、2005-2010年の6年間での新薬申請数(NMEとNBEs)は年間20-25個と最も低水準であった。この中で興味深いことは、2009年と2010年の新たなトレンドとして、プライマリケアでの疾患を狙ったブロックバスター戦略から限定的な疾患での新薬創出へとシフトしている事である。2009年と2010年に承認された薬の24%(年間6-7個)は、専門医療に属するオーファン・ドラッグであった。2011年には希少疾患治療薬、オーファンドラッグの薬剤承認数は合計10個に達し、FDAが過去10年で承認した薬剤合計が35個である事を考慮すると、最も生産的な年である事が理解できる。しかし、多くの専門家は、希少疾患の年間薬剤承認総数は、ここ2ー5年の間に劇的に上昇することはないと推定している。医薬品の承認数の少なさは、開発コストの上昇によってさらに印象を悪くしている。米国やそれに紐付く各国での承認後のフェーズ4の費用を含めると,コンセプト提案から市場に新薬を出すまでの平均コストは10億ドル(8ー18億ドル)以上とさえ言われる。ただ、これらの費用は企業規模と薬剤の種類によって異なる。小規模な組織や、急性疾患では研究開発費はかなり低い傾向がある。また、フェーズ2後期からフェーズ3にかけて開発の中止する主要な要因の一つは費用負担の急上昇による圧迫であった。


<資金の浪費と疲弊するパイプライン>
 多くの製薬企業は、1990年代に10億ドル以上の年間売上高を持つブロックバスターを生み出した為、その後の研究開発戦略をさらに企業規模を巨大化させる為のブロックバスター型にせざるをえなくなった。リスク収益バランスを考慮してしまい、多くの大企業が300万ドル以下の低または中規模の市場をとれる新薬への投資を正当化できなかったのである。残念なことに、ブロックバスター戦略はほとんど機能していない。そして、製薬業界の製品パイプラインは枯渇した。製薬企業の成長に貢献する糧もあった過去のブロックバスターは既に成熟しており、特許の保護を失いつつある。2009-2014年に特許期限は失効し、2090億ドルもの稼ぎ頭を失い、医薬品の歴史にとって最悪の時代に突入しようとしている。多くの企業は、理想と現実のギャップを埋め収益予想を補完する為に苦労している。過去数年には、市場に出て世界的に何百万人もの患者に投薬されるまで成長した医薬品も存在するが、そんなある程度確立されたものでさえ数年後に生命を脅かす副作用が出現する場合もあった。規制当局はこれらの製品は市場から撤回させ、厳格な承認ガイドラインを採用せざるをえなくなった。安全性を追跡し、市販後医薬品の有効性を定義するための新たなプロトコールが実装された。心血管系および糖尿病患者を指向した薬剤では多くの場合、FDAは新薬承認前に有効性と長期的な安全性を証明するために心血管イベントのアウトカム研究を含む大規模臨床試験を実施させている。また新規メカニズムに基づく多くの薬剤は、承認後も追加調査を実施し、安全性パラメータを監視される。

 弱体化するパイプラインと特許満了による収益予想損失の為に、多くの企業が "繁栄"から"生き残り"へと企業姿勢をシフトしている。経費を削減し、ブロックバスター製品の有効期限を引き伸ばす実行可能なオプションを見つけるために必死の努力を継続している。過去5年間で、トップ10の製薬会社は20万人以上のリストラを実行してきた。無駄とおもわれる機能を排除し、吸収合併をノルマにしてきた。しかし、これらの措置は短期的には費用抑制として機能するが、根本的な生産性の回復を促すものではない。

<グローバル化、変化する研究スタイル>
 創薬のコスト増大の為、製薬業界では研究開発予算の効率化の道を模索してきた。中国とインドは大規模な人材プールを持っており、米国に比べて人件費は30ー80%の大幅節約が可能であり、前臨床から臨床に至るまで幅広いサービスを提供している。多くのメガファーマは契約研究機関(CRO)とグローバルに提携したり、中国、インド、シンガポールに研究拠点を構築しようとしている。これらの中国やインドといった新興国は、医薬品研究開発のさまざまな側面で必要な競争力を急速に成熟させてきた。特許条項で合意する事で、新興国市場はR&D、製造、臨床試験とマーケティングの新たな提携先として急成長している。

<社会・経済・政治情勢>
 先進国では"団塊世代"の高齢化が進んでおり、世界人口は増加しているので、医療費は世界的に莫大になっており、これに対処するために医薬品セクター内でも議論が必要となっている。2009年の米国勢調査局の調査では、ここ数年で米国の人口の約12.9%が65歳以上の高齢者になると推定している。よって高齢化によって、医療費と薬剤製品価格抑制の要望がエスカレートすると予想される。社会経済側からの強い要望と成功確率の低さは、結果的に製薬業界にR&D戦略を見直させ、効率性と生産性の向上を強制させる事になる。


<<低生産性解析>>
 製薬企業は、低い生産性と研究開発コストの増大の理由を追求し、方針を修正せざるをえなくなっている。以下に、低い生産性の原因をさまざまな要因で分析する。

<臨床の失敗、変化するパラダイム>
 臨床の失敗理由は、この20年間で大きく変化している。1991年の失敗理由は、主に不適切な薬物動態であった。それ以来、製薬業界はヒトでの薬物動態プロファイルを予測するための透過性、代謝、分布および排泄のスクリーニングを実施してきた。この努力のお陰で、2000年にはDMPKが理由でドロップす確率は大幅に減少した。メディカル·リサーチ・センター(CMR)の発表したレポートで、最近のフェーズ2およびフェーズ3での失敗理由を分析している。それによると、フェーズ2が最も脆弱な段階であった。フェーズ2の成功確率は、2006年と2007年で28%であったのに対して、2008年と2009年では18%にまで落ち込んだ。トムソン・ロイターが2008年から2010年の間にフェーズ2で失敗した理由を分析しており、第一の理由は薬効不足で(51%)、戦略的な理由(29%)も見過ごせない中止の理由として見出された。おそらく競合品に対する差別化点がない事、もしくは不十分なリスク/ベネフィットに由来する高い摩耗率が戦略的な中止に追い込まれた要因と推定される。また治験薬の約19%は、安全性の懸念や不十分なマージンで中止している。失敗した候補化合物の多くは、PPARγやファクターXaといったかつての期待のテーマであった。これらの失敗した開発化合物の約68%が代謝、循環器、癌、神経変性疾患領域に分類される。
 CMRによる2007-2010年のフェーズ3の分析も同様で、新規MOAや新規適応症を狙う薬剤の失敗が全体の50%を占めている。やはり薬効欠如(66%)が​​臨床失敗の決定的な理由であった。安全性面での懸念とリスク/ベネフィットの欠如が第二の理由として21%を占めた。薬効不足の内訳は、プラセボを上回る有意な改善作用が見られない(32%)、コントロールの薬剤に対する差別化欠如(5%)、アドオン効果の欠如(29%)が挙げられた。これらの失敗の多くは、アンメットメディカルニーズを狙う癌や神経変性疾患であった。癌の場合、成功しているのは効果のある腫瘍の種類を限定していた。また、癌をどのように延命措置するかの戦略も臨床試験を成功させる重要な要素となっていた。臨床試験と承認段階に要する期間の平均は1990年で77カ月であったのに対して、2000年代は95ヶ月に増加していた。非臨床の時間も合わせると、研究開発期間が12年以上になってしまうものもあり、これではほとんど特許期間が失効してしまう事になる。Fig. 3には、2010年に各臨床試験段階で生き残った開発化合物の割合を示している。 2009年と2010年の創薬の生産性は6%程度と判定され、医薬品の歴史上、最低レベルである。
 ここで薬効不足理由を理解するための考察を行った。ヒトゲノムの発見以来、疾患で重要な役割を果たす有望な標的の探索が行われてきた。当初の期待感にもかかわらず、見出された有望なターゲットは少なかった。研究段階で疾患を決め、マイルストーンを設定して臨床をクリアしてきた。しかし、ターゲット・ベースのアプローチでは、多くの患者で望ましい成果を得る事はほとんどなかった。これらの失敗は、安全性や薬効が不十分であった為で、予期せぬ生理的な代償機構が機能しているからかもしれない。過去10年間に承認された新規化合物を分析(1999年から2008年)した結果では、興味深いことに、新規MOAで承認された78薬剤のNMEとNBEのうち、多くがフェノタイピング・ベースであり(28個、37%)、ターゲットベースに基づく薬剤の承認数(17個、23%)を上回る。一方でフォロアーの創薬では、フェノタイピング・アッセイは少なく(30個、18%)、ターゲット・ベースが多い(83個、51%)。ターゲットベースは、がんで多く成功しているのに対し、フェノタイピングは中​​枢神経系、感染症でうまく機能している。歴史的に、ゲノム創薬以来のターゲットの出現より以前から、フェノタイピング・スクリーニングのアプローチが、新薬創出の有用な手法であった。もちろん、双方のアプローチにそれぞれの長所と短所を持っており、どちらが一方的に良いとはいえない。また、すべてのNBEsは、ターゲットベースで発見されている。ターゲットベースのアプローチでは、フォロアーのプロジェクトが高い確率で成功できるので、新規MOAの化合物が出ると、それに対して追いつく為のスピードと効率が勝負となる。ファースト・イン・クラスが市場を独占できる期間は縮小しており、1970年代では約10年間独占できたが、今や約1.2年で平均化されてしまう。
 
<技術面以外に基づく低生産性>
 創薬の成功率は、小企業および大企業の両方で低い。メガファーマの革新的医薬品の減少は自由度のないシステム化、企業文化、合併、不確実性、長期ビジョンへのコミットメントの欠如といったいくつかの要因がある。化合物プロファイルが不十分でも、プロジェクトリーダーは、目先のプロジェクトの目標とスケジュールの達成が目的となり、化合物を臨床に入れようと意識が働いてしまっている。
 小さなバイオテクノロジー企業では、非官僚的な組織で高い柔軟性を備えた革新を主導する研究体制をとっていると考えられている。これらベンチャー的企業は研究の強い使命感とコミットメントを持つが、目先の費用対効果比に左右される傾向がある。きめ細かなリード最適化は、資金不足から回避されがちである。失敗する事は企業が倒産する事になるので、プロジェクトを止める事なく、苦しくともなんとか臨床に入れ、ライセンス・アウトで成長を維持するしかない。バイオテックは寿命が3ー5年と短い事もあって、質の低い化合物でも臨床試験で勝負にかけてしまい、失敗する。
 
<<生産性と成功確率の向上>>
 製薬会社は、効率と生産性を向上させるために再編をしようとしている。低い研究開発生産性は、持続可能ではないので、いくつかのモデルを採用し費用対効果を向上させるために議論されている。

<疾患の選定>
 ターゲットや疾患の選定は、創薬プロセスの最初の重要なステップであり、プロジェクトの命運を大きく左右する。したがって、ベストの検証方法を構築し、そしてその方法論の限界を明確にすることが重要である。研究の推進において、学術センターや小規模バイオテクノロジー企業はイノベーションのきっかけであり続ける。その研究手法として、ターゲットベースで選択的な化合物を見出すアプローチは、いくつかの医薬品の創製に成功している。単一ターゲットで高活性・高選択的化合物を創出する場合、ハイ・スループット・スクリーニングを機能させ、リード最適化段階で価値ある構造活性相関を得る事が望ましい。しかし、このアプローチには欠点がある。単一ターゲットのシグナルは、別の補償効果で相殺してしまって薬効不足の要因になったり、関連するネットワーク・パスウェイを介して複雑な応答を引き起こして副作用の要因になる事もある。ほとんどの慢性疾患は多因子性であり、単一のターゲットの変調が最適な応答が得られるとは考えにくい。一方で、患者から得た組織および血漿試料を分析する事で、ターゲットの仮説を検証することが可能となる。こういった手法を利用したフェノタイピングのアプローチは有効かもしれない。現在、疾患の理解と治療的アプローチが検証段階にあり、複雑にパスウェイが絡む慢性疾患では重要である。しかし、フェノタイピング・スクリーニングでは、十分な構造活性相関を得るには低スループットな為に、リード最適化の難しさが課題である。これら両方のアプローチは、長所短所を比較して、より適切な方を選択する必要がある。また、プロジェクトの重要なステップとして、革新的なコラボレーションモデルが課題解決策として提案されている。これらは、官民パートナーシップ、オープン・イノベーション・モデル、および産学のパートナーシップがあり、たとえばIMI、Arch2POC、トランスレーショナルサイエ ンスを推進するためのナショナルセンター(NCATS)、癌治療評価プログラム(CTEP)、ダンディー・キナーゼ・コンソーシアムが知られている(Table 1)。同様にメガファーマは研究初期から新たな標的の検証の為に、国境を越えての "オープン・イノベーション"モデルを模索している(Table 2)。BayerのGrants4Targets 、MRCのCall for Targets、リリーのPhenotypic Drug Discovery Scheme、GSKのPharma in Partnership Program、 Center of Excellence for External Drug Discovery 、バイオジェンのIncubator Conceptが報告されている。

<動物モデル>
 ヒトに外挿できる適切な病態モデル動物は、化合物の評価と解析のために重要である。抗菌剤治療のようないくつかの急性疾患は、動物モデルはヒトへの外挿性が良い。慢性疾患、長期的な疾患では、モデル動物のみならず関連するバイオマーカーやイメージング技術によってメカニズムを検証し、疾患の変調の明確な証拠を示す信頼できる適切なモデルを構築し、成功確率を向上させる事が重要と考えられる。

<免疫系由来の毒性>
 非臨床のスクリーニング(HERG、遺伝毒性、ターゲットの選択、複数種の安全性薬理in vivo試験など)は、臨床に入る化合物の判別に役立っている。特に慢性的な疾患で免疫系由来の毒性(癌化、心血管イベント)が臨床後期試験段階で観察されると臨床開発を進める事ができなくなり、その対価は最も高くつく。非臨床段階で適切なバイオマーカー又は安全性に関する信頼おけるサロゲート・エンド・ポイントの選択、オフターゲットを排除することで、有望な候補を選出できる。

<量より質>
 製薬業界の多くは、標準的な臨床パイプラインの個数が多いほど、成功可能性が高くなると信じている。科学者やプロジェクトチームは、タイムライン通りにパイプラインを充実させるため積極的に業務を遂行する。リード化合物の質が損なわれても、サイクルタイムに対する厳しいプレッシャーによって、不十分な最適化化合物を臨床にねじ込んで失敗する。歴史上、質の高い候補化合物は、少々、他社との競合に遅れをとっても、キャッチアップしついには不十分な候補化合物を抜きさってきたのである。質を担保する為に要したリード最適化の余分な時間は、後の臨床開発での着実な前進に貢献する。一度選択された臨床候補化合物を途中で置き換える事はできない。中小の製薬企業では、仮説を検証するのに複数の化合物を試すチャンスはない。こうした失敗はターゲット・ベースもしくはパスウェイ・ベースの創薬に影を落とす。ほとんどの製薬企業は探索段階で多くのテーマを走らせるが、クライテリアを満たさないものを排除して絞り込む事が重要である。リード創出の質と研究プロセス効率は、創薬の各ステージで入手可能な技術を適切に選び出す事で改善する事ができる。たとえば、ターゲットIDとバリデーションの段階では過剰発現やノックアウト、ヒット創出ではX線結晶構造解析、SBDD、フラグメントベース、バーチャルスクリーニング、HTS、リード最適化では母核のホッピング、狙うポケットがアロステリックかアクティブサイトか、ADME、選択性と安全性スクリーニングといった手法が挙げられる。リード探索と臨床試験で、プロジェクトはいつもターゲット・プロダクト・プロファイル(TPP)に見合うのか、臨床での標準的な治療法に比べて差別化できるのか、といった事を判断するための「クリティカルなキラー」実験を検討すべきである。イノベーションにとってリード創出とこれらのプロセスを問題解決していく事が重要となる。優れたADMETプロファイルと安全性を併せ持つ化合物の質は、ヒトでの臨床プロファイルに外挿する為に重要となる。また候補化合物を開発段階に進め、臨床で得られた発見を研究にフィードバックする事は重要であり、第二世代の開発品の選別に役立つ。

<臨床検証>
 臨床試験は、費用対効果が高くなるように、できるだけ早期に有効性と安全性の重要なパラメータを評価することを目標に設計する必要がある。臨床デザインは、患者層選別、シミュレーションモデル、バイオマーカー、PET、サロゲート・エンド・ポイントを考慮する必要がある。多くの企業は、「Quick Win, Fast Fail」(迅速に勝利し、速やかに撤退する)という、可能な限り早期に臨床に持ち込んでGo / No Goの意思決定を行う戦略をとろうとしている。リリーは、費用対効果の高い、迅速に臨床試験を見極める"コーラス"を試みている。政府機関、製薬会社、および患者の権利擁護団体は、アルツハイマー病やパーキンソン病の新たな治療のために、より効率的な治験を設計する為の標準化された臨床試験データベースを開発した。これは、ヒト薬物動態プロファイルの初期評価を得るためにマイクロドーズ(フェーズ0)で化合物の優先順位を設定し、化合物を選択するのに役立つ。 100分の1の投与量で放射性標識された治験薬のマイクロドーズによって、薬効用量を予測し、陽電子放射断層撮影(PET)との組み合わせで、ヒト薬物動態プロファイルと化合物のターゲット組織分布を早期に評価できるようになる。マイクロドージングは、スケーリング時に薬物動態プロファイルの投与量線形性を前提としているが、初期で情報を得る費用対効果の高い有用な方法となる。


<<共生型イノベーション>>
 製薬企業は1998ー2007年のNMEの70%をフォロー・オン研究で創出してきたが、新規メカニズムの探索は、あまり得意とはしていない。実際、新規メカニズム(そのうち70%はオーファン・ドラッグ)の50%以上のNMEは小規模のバイオテックや大学から見出されている。慢性疾患で低生産性にあえぐ大規模製薬企業は、バイオテックのパイプラインに刺激を受け、アライアンスによって自らの生産性の低さを補完しようとしている。一方で、小規模のバイオテックは資金面での苦しさを解決する為のスポンサーを求めており、大企業と小企業、もしくは産学連携でお互いに補完しあう共生型のイノベーション・モデルが打ち出されるようになった。共生型イノベーションとして大きく4つ、(1)前競争段階での共同研究、(2)オープン・イノベーション、(3)産学連携型創薬、(4)ベンチャーファンド、に分類できる。

<前競争段階での共同研究>
 メカニズムの複雑な疾患の理解を深めるために、学術研究機関と大小の製薬企業をメンバーとする提携モデルが提案されている。ここでは新しいターゲットや治​​療法の選別、検証、ツール開発、アッセイ、ヒット創出法、薬効と安全性予測のための新規バイオマーカーが検証される。これらパートナーシップは、政府機関、財団、公益信託、製薬業界や学術機関などの公共および民間の情報源から財政支援を得る。パートナーは、個々の研究プロジェクトで利用するデータや技術はオープンアクセスできる状態にある。たとえば、革新的医薬品イニシアティブ(IMI)は、ヨーロッパの医薬品セクター競争力を強化するために設立され最大の官民パートナーシップである。製薬産業欧州連盟(EFPIA)と欧州委員会(EC)で構成されたコンソーシアムは、複雑な疾患に有効性と安全性を予測する技術や手法の開発を目指している。同様に、ダンディー・キナーゼ・コンソーシアム(DKC)は最大のキナーゼライブラリーを構築し、プロテインキナーゼとホスファターゼの理解を深める。 Arch2POCMとEnlightはパートナーにお互いの不必要、必要の要望に応じて資産のやり取りを促し、スピンオフ企業の為に集合知を利用する。アルツハイマー病神経イメージング研究イニシアティブ(ADNI)は、疾患の進行を予測するために、臨床試験でのバイオマーカーとイメージング技術を開発している。同様に、米国立衛生研究所財団(FNIH)バイオマーカー・コンソーシアムは、広範な治療領域で新薬開発、予防薬、医療診断をサポートするためのバイオマーカー探索を目的としている。 NCATSとCTEPは、NCI-業界のパートナーシップを通じて、ネグレクト疾患や癌の新規治療法を探索する。しかしながら、このような官民、産学連携は、他のコンソーシアムと重複したり、知的財産、パフォーマンスと報酬システムの取り扱い、パートナーの大型化とプロジェクト管理の複雑さを課題にはらんでいる。

<オープン・イノベーション>
 製薬業界は、IT業界で普及した"クラウドソーシング"を使ったオープン·イノベーションのモデルが試みられている。モデルは、新しいアイデアを特定したり、技術的な問題の解決策を模索するために、外部の科学者とのネットワークを活用し、専門知識にアクセスできる。リリーは、Innocentiveを含むいくつかのオープン·イノベーションのプロジェクト、PD2(フェノタイピング創薬イニシアチブ)、TD2(ターゲット創薬イニシアチブ)を実践している。YourEncoreは、退職したベテラン科学者の大規模なネットワークを構築している。別のモデルとして、GSKは、学術機関に15000個の抗マラリア新規化合物を提供している。リリーでは完全集積型ネットワーク(FIPNet)といったオープンイノベーションモデルを行なっている。これらオープン・イノベーションの取り組みの多くは有用であるが、創薬の初期または探索段階に限定されている。これは知的財産の所有権と報酬システムの問題が絡むからかもしれない。

<大企業とバイオテック、アカデミアの連携>
 生物学的製剤の関心の高まりとともに、産学の連携によるテーマの推進が積極的になっている。たとえば、ファイザー社は、アンメットニーズのための新規な生物学的治療を導入するため、大学や病院と連携したオープン·イノベーションとしての 治療イノベーションセンター(CTI)を設立した。連携を確実なものにする為、学術機関のすぐ近くに研究センターをおいた。GSKとアストラも、炎症性疾患の新しい治療薬の基礎研究の為に、マンチェスター大学と連携している。フランスでは、エリート研究機関とサノフィ·アベンティス社との共同研究(サノフィ·アベンティス - AVIEASAN)で、老化、免疫炎症疾患、感染症、再生医療などの分野で新たな治療オプションを提供しようとしている。

<ベンチャー・ファンド>
 製薬各社や公的機関は、ステージとアセットのニーズに応え、いくつかのファンドを用意している。たとえば、Biogenerationベンチャーズ、インペリアルイノベーション、アトラスベンチャー、Forbion、Aretus、リリーミラーファンド、サードロック、アストラ·MedImmune社などがある。リリーミラーファンドでは、リリーが最大で20%の資本を投​​資し、専門知識と技術ノウハウを提供している。

<リポジショニング>
 ほとんどの大企業は、適応拡大、ドラッグ・リポジショニングでを拡大しようとしている。従来のビジネスモデルに反して、ジェンザイム社(サノフィ·アベンティス)などの希少遺伝性疾患が成長している。これら希少疾患で見出した新薬や臨床的中止化合物の新しい用途を狙ったドラッグ・リポジショニングのアプローチは、過去6年間で急成長している。アンメットの適応症に対し、これら化合物をスクリーニングして、既存の薬剤の新たな用途が特定できたり、リード最適化の価値ある出発点が得られる。リポジショニングのアプローチは、開発サイクルの短縮・削減、開発コストの抑制が可能で、安全性、薬物動態プロファイルで確実性を持つ。最近では、NIH主催のイニシアチブNCATSで希少疾患やネグレクト疾患を狙って製薬会社か​​ら特許を取得したり、中止薬の提供を受け、大規模にスクリーニングしている。
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テーマ : 科学・医療・心理
ジャンル : 学問・文化・芸術

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Khanna I. Drug discovery in pharmaceutical industry: Productivity challenges and trends. Drug discovery today. 2012. Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22627006 生産性の低下、研究開発費の高騰、消えゆく知的財産権、先細るパイプライン、これ...

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